菓子・料理家として雑誌や書籍で活躍のほか、お菓子教室なども主催する渡部和泉さんは1児のママ。料理のプロが作る赤ちゃんごはんについて渡部家の食卓をのぞかせていただきました!
ひどいつわりが終わったのは、「平均」よりだいぶ遅れて8ヵ月の頃(前話参照)。すでにお腹は大きくなり胃が圧迫されていたから、量は食べられないし動くのも億劫だったけれど、キッチンにこもりひたすら料理していた。
というのもつわり中は食材を見るのもイヤで、日々のごはんは超手抜き。なんだか痩せた気もする夫にちゃんとしたごはんを食べさせたかった。
それに周りの経産婦みんなが「産まれたら料理するのもひと苦労、パンやお菓子作りなんてもってのほか」と口を揃えて言うので、ピクルスやジャムを瓶詰めしたり、おかずやパスタソースなどを冷凍したりと、出産前にできるだけストックしておきたかったのだ。
里帰り出産をしなかったこともあり、産後は常に娘にかかりきりで家事は二の次三の次。作り置きにはずいぶん助けられた。
中でも1番「あってよかった!」と思ったのは、自分のおやつ用にと冷凍しておいたクッキー生地。娘に会いにいろんな人が自宅へ来てくれたのだけど、おもてなしのデザートをつくる余裕もケーキを買いに行く暇もない。「これしかなくてごめんね。」と飾り気のないクッキーを差し出す私に、「焼きたてなんて中々食べられないよ。」とやさしい友人たちは大げさに喜び、ほにゃほにゃの娘を大事そうに抱っこしてくれた。
産後の身体を労るため、薬膳効果のある材料でつくっておいたクッキー。だけどそれを一緒につまみながら気ままなおしゃべりをする時間こそが、慣れない育児にこわばっていた心と身体をなにより癒やしてくれたのだ。
RECIPE
黒糖ナッツクッキー
《産後の身体を元気にする、薬膳クッキー》
材料 (約25枚分)
有塩バター75g、薄力粉180g、黒砂糖80g、卵黄1個、好みのナッツ70g
作り方
- 1.バターは室温に戻す。薄力粉はふるう。ナッツは小さく刻む。
- 2.ボウルにバターと黒砂糖を入れ、泡立て器でよく混ぜる。卵黄を加え、さらによく混ぜる。
- 3.薄力粉を加え、ゴムベラでさっくりと混ぜる。ナッツを加え、さらに混ぜる。ポロポロになったら最後は手でまとめる。
- 4.棒状にしてラップに包み、冷凍庫で固める。
※冷凍保存する時は、この状態で。ラップで2重に巻いておくとよい。 - 5.1時間ほどしたら、包丁で1cm厚さに切り、オーブンペーパーをしいた天板に並べて170度で20分焼く。
※冷凍保存しておいた場合は、冷蔵庫で半解凍してから包丁で切り、そのまま同様にして焼く。
PROFILE
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菓子・料理家。国際中医薬膳師。漢方薬メーカーや無添加食品会社の勤務を経て、独立。著書に「漬けるおかず便利帖」「季節の手づくりジャムの本」など。少人数のお菓子教室「atelier mel」主宰。
(制作 * エチカ)