先輩パパとママの毎日コラムvol.44

ハルちゃんと僕「あたらしい家族(後半)」

2016/11/15
ハルちゃんと僕「あたらしい家族(後半)」 ハルちゃんと僕「あたらしい家族(後半)」

アムステルダムに暮らしながら写真家・文筆家として活動する小野博さんの、愛娘・ハルちゃんとの日々

出産後、しばらく産院で妻とこうちゃんと3人だけの時間をすごしていた。すると職員さんが入ってきて「そろそろ赤ちゃん連れて家に帰ってくださいね」と言った。まだ妻は燃え尽きているのだけれど、オランダではすぐに産院を追い出されてしまうのだ。やれやれと、タクシーで家に帰ったのが夜の9時、出産してからたった5時間後。「あとはよろしく」と、妻はつぶやいて、こうちゃんを抱えて寝室に入っていった。

本当におつかれさまでした。

さっそくハルちゃんを迎えにゆくと、友人の子どもと一緒にスヤスヤと眠っていた。そんなハルちゃんを抱っこして家まで運び、ベッドに寝かせ、僕もそのままハルちゃんの横に寝転んだ。妻に比べたらなんにもしてないけど、長い1日ではあったなと思いながら目を閉じると、隣の部屋からこうちゃんの泣き声が聞こえた。

フミャー フミャー。

そうだ家族が1人増えたんだった。

僕は深夜に目を覚ました。そのままリビングへ行き、ぼんやりしていると、妻がこうちゃんを抱いてフラフラとやってきた。「おっぱいあげたから、わたしちょっと寝るね」と、こうちゃんを僕に渡すと部屋を出て行った。

はじめてのこうちゃんと二人きりの時間。静かなリビングに、静かな寝息だけが聞こえる。なにもかもがすごくちいさくて、かわいらしいこうちゃんの顔。そう思っていると、突然リビングのドアがバーンと開いた。そこには寝起きのハルちゃんが立っていて、じーっと僕と腕に抱かれているこうちゃんを見ている。

こうちゃんとの初対面。

僕は「はじめまして、こうたろうです。どうぞよろしくね」とこうちゃんの顔をハルちゃんに近づけながら言うと、なぜかハルちゃんは顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。

アーン、アーン、アーン。

ハルちゃんの泣き声を聞いて、こうちゃんもフミャー、フミャー、フミャーと同時に泣き始めた。さっきまで静かだったリビングに泣き声がこだまする。

アーン、フミャー、アーン、アーン、フミャー、アーン、フミャー、アーン、アーン、アーン、フミャー、アーン、アーン、フミャー、アーン、アーン。

2人の子育ては、1人の子育てとは別次元なことがよくわかった。こうちゃんを妻のところに連れてゆき、僕はハルちゃんを寝かしつけた。

翌朝、起きぬけのハルちゃんが、ベッドで眠っているこうちゃんのところにバタバタとやって来て「あかちゃんまん?」と聞いてきた。「うん、あかちゃんまんのこうたろうくんだよ」というと、「こうたろう、こうたろう」と名前を繰り返しながらピョンピョン跳ねた。

ふふふ。

その翌日、ハルちゃんはこうちゃんのファーストキッスをうばい「チューしちゃった」と照れていた。

ハルちゃんとこうくん

またその翌日、こうちゃんが泣くと「どした、どした、こうたろうくん、だいじょうぶだいじょうぶ、またおっぱい?すぐ来るね」といって、妻のところにゆき「こうたろう、おっぱいよ」と報告するようになった。そしてまたその翌日、こうちゃんを見に来た友人に、こうちゃんを指差して「Mijn (あたしの)・こうたろう」と嬉しそうに紹介していた。

こうしてハルちゃんとこうちゃんはめでたく姉弟になれたようだ。これからもなかよくしてね。

一緒にお昼寝
小野博

PROFILE

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写真家・文筆家。2002年よりアムステルダム在住。著作に世界を旅した記録を綴ったエッセイ集『Line on the Earth ライン・オン・ジ・アース』(エディマン)、日本とアムステルダムでの暮らしを綴った『世界は小さな祝祭であふれている』(モ・クシュラ)など。

(制作 * エチカ)

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