沐浴というと、ベビーバスにお湯をためて赤ちゃんをそっと入れて.....、そんな風に思い浮かべるママやパパ、おじいちゃん、おばあちゃんは多いですよね。ですが、その沐浴の方法が今、最近の研究にもとづいて変化してきているそうです。 そこで今回は、神奈川県立こども医療センター皮膚科部長である馬場直子先生に、最新の研究結果をもとにした正しい沐浴方法を教えていただきました。
沐浴の方法が変化している?
従来の沐浴は、ベビーバスにお湯を張って赤ちゃんをそのなかで支えながらガ―ゼで顔や体を洗い、最後にかけ湯をするという手順でした。しかし、この方法はガーゼの使用や泡のすすぎ残しなどから肌トラブルにつながってしまう可能性があることが分かってきました。
そこで最近広まってきたのが、新しい沐浴方法。赤ちゃんをお風呂の洗い場のバスマットなどに寝かせ、たっぷりの泡を手に乗せてやさしく洗い、シャワーなどでよくすすぐというもの。また、最後に保湿を十分におこなうことも推奨されています。産院などでの指導も新しい方法に変化してきて、病院では「あわ沐浴」「あわもち沐浴」「シャワー沐浴」などと呼んでいるところもあります。
新しい沐浴のメリットは?
沐浴の方法が変化してきたのにはもちろん理由があります。この沐浴方法には赤ちゃん側にも大人側にもメリットがあるのです。
【赤ちゃんにとってのメリット】湿疹、食物アレルギーなどが減る傾向にある
顔も体も泡で洗い、シャワーでしっかりすすぐので、すすぎ残しなどがなく赤ちゃんのお肌を清潔に保つことができます。また、沐浴後に保湿をして水分や油分を補うため、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎などの肌トラブルを予防する効果も。
皮膚についた食べ物がきっかけで食物アレルギーを発症することがあるので、肌の健康を保つことは赤ちゃんの食物アレルギー予防にもつながるといわれています。
【大人にとってのメリット】基本的に赤ちゃんを寝かせたまま洗えるので負担が少ない
従来の方法は、赤ちゃんを片手で支えながらもう片方の手で洗う必要がありました。新しい沐浴方法は、お風呂の床にバスマットなどを敷いて赤ちゃんをゴロンと寝かせたまま洗うことができるので、パパやママの負担を軽減できます。
また、両手を使って洗えるので首のしわや耳の後ろなどの細かいところも洗いやすくなります。背中を洗うときや顔をシャワーですすぐときなどに体を少し起こしてあげたりする必要もありますが、おけにお湯をためる手間がなくシャワーが使えるのですすぐときも便利です。
新しい沐浴の手順
ポイントは、「よく泡だててやさしく洗う」「シャワーでしっかり洗い流す」「たっぷり保湿する」です。
【準備】
石鹸を使う場合は、ネットなどを使ってよく泡だてます。市販のベビー用の泡ソープであればさっと使えて便利ですね。シャワーはあらかじめ38~39度ぐらいのぬるい温度に設定し、ママやパパの手で実際の温度を確認しておきましょう。
【洗い方】
お風呂の洗い場にバスマットを敷いて赤ちゃんを寝かせ、頭→顔→体の順で最後に陰部を洗いましょう。それぞれについて解説します。
1. 最初は頭から。ママやパパの手に泡をのせて指の腹を使って洗います。耳はたたんで裏側と耳たぶも洗いましょう。洗い終わったら、頭の上から弱めのシャワーをかけてしっかり泡をすすいでください。寒い時期は湯ざめしないよう一度髪の毛の水分をタオルで吸いとっておくと安心ですね。
2. 次は顔です。泡をのせた手でやさしく洗います。おでこ、頬だけでなく、鼻や口の周りも洗って下さい。洗い終わったらしっかりシャワーですすぎましょう。顔に水がかかっても反射的に目を閉じてくれるので大丈夫。上半身を支えながら頭の上から弱めに流すようにするといいですね。
3. 最後に体(首から下)を同じく手に泡をのせて洗っていきます。首やわき、足の付け根、肘、膝の裏などにはシワが多く汚れが溜まりやすいので、シワを伸ばして洗いましょう。全体が洗えたら最後に性器や肛門などの陰部を洗います。洗い終わったら弱めのシャワーでしっかりすすぎましょう。
【保湿の方法】
沐浴後は肌の水分が蒸発してどんどん乾燥していくため、体を拭いたらできるだけ早めに保湿剤を塗ることが大切です。保湿剤の量は、大人の手のひら2枚分の面積に対して1円玉ぐらい。体の上に保湿剤を何カ所かに置いてから、やさしくなでながら塗り広げましょう。塗った後、テカテカに光っていて、ティッシュが貼りつくぐらいにたっぷり塗るのがポイントです。口の周り、首のシワ、耳の付け根、手足の指など細かいところも忘れずに塗りましょう。
まとめ
はじめての沐浴は難しく感じるかもしれません。ですが、毎日おこなっているうちに、だんだんとママもパパも赤ちゃんも慣れていくので大丈夫。親子共にリラックスして赤ちゃんとのスキンシップを楽しみながら、赤ちゃんの肌の健康を守ってあげたいですね。
PROFILE
馬場直子このライターの記事一覧
神奈川県立こども医療センター皮膚科部長、横浜市立大学皮膚科臨床教授
1983年滋賀医科大学医学部卒業、1994年横浜市立大学皮膚科講師を経て、神奈川県立こども医療センター皮膚科部長、2015年より横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼務。日本皮膚科学会専門医。専門分野は小児アトピー性皮膚炎、母斑、血管腫、皮膚感染症など小児皮膚科学全般。