初めての離乳食は、「調理グッズはなにを用意したらいいのか」「どうやって作るのか」「どの食材をあげていいのか」など、疑問や知りたいことがたくさんありますよね。そこで今回は相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、離乳食作りに必要なグッズや作り方、食べさせ方、献立、食べられる食材などについて詳しく教えていただきました。
離乳食にあると便利なグッズ
家庭にあるものも使用できるので、すべてを新調する必要はありませんが、用意しておくと便利な離乳食グッズをご紹介します。大きくわけると「食事グッズ」と「調理グッズ」があります。
*食事グッズ
・離乳食用のスプーン
・離乳食用エプロン、スタイ
・食器
スプーンについては、5~6カ月ごろは平らで赤ちゃんがゴックンしやすいものを、9~11カ月ごろになったらひとくちの量が増してくるのでくぼみがあるものを使います。フォークは自分で持てるようになった頃でOK。食器はある程度の深さがあるとすくいやすくおすすめです。
椅子は、離乳食を始めた頃は抱っこで食べるので必要ありませんが、7~8カ月ごろになって腰がしっかりして支えなしに一人で座れるようになったら用意します。
*調理グッズ
・裏ごし器
・すり鉢すりこぎ
・茶こし
・すりおろし器
・マッシャ―
・小さめの鍋
とくに離乳食の初期の頃は、液体しか飲んだことのない赤ちゃんが飲み込みやすいよう、食材をできるだけなめらかにすることがポイントです。そのため、裏ごししたり、すりつぶしたり、すりおろしたりする作業が多くなります。市販の離乳食調理セットにはこれらがそろっていて、少量を作る際に使いやすく、またコンパクトに収納できるものもあります。
離乳食初日にあげる「10倍がゆ」の作り方
10倍がゆとは、米と水を「1:10」の割合で炊いたおかゆのこと。初めての離乳食は10倍がゆですが、発達に応じて少しずつ水分を減らしていきます。作り方は次のとおりです。
【ステップ1】米をといだらざるにあげて、30分おいて米の芯まで吸水させる。
【ステップ2】小さめの鍋に米と水を「1:10」の割合(例:米1/2カップと水1000ml)で入れて、ふたをして中火で煮る。沸騰したら弱火にして米粒がやわらかくなるまで40~50分(※)ほど煮る。吹きこぼれないようふたを少しずらしたり、水分が足りないと感じたら途中で足す。
※加熱時間は鍋の大きさによります。
【ステップ3】火を止めてふたをしたまま10分~20分蒸らしたら、すり鉢ですりつぶすか、裏ごし器で裏ごしてなめらかにして、できあがり。
なお、米から作る方法をお伝えしましたが、10倍がゆは、普通に炊いたごはんから作ることもできます。その場合は、ごはんと水の割合を「1:5」にして鍋に入れ、中火で15分~20分煮ます。やわらかくなったらふたを止めて10分~20分蒸らし、すりつぶしたり裏ごししたりしてできあがりです。
ほかにも、炊飯器のおかゆモードを使う方法や、専用調理器具で電子レンジで作る方法もあります。ずっと火のそばにいる必要がなく、効率がいいかもしれませんね。
作り方はどの方法でも構いません。ポイントは、最後によくすりつぶしてなめらかにして、つぶつぶがのどに引っ掛からないようにしてあげることです。
また、毎日離乳食を作るのは大変なので、多めに作って小分けにして冷凍保存しておくと、負担軽減につながります。
食べさせるときの姿勢とタイミング
食べさせるときの姿勢ですが、ママやパパのひざに抱っこしてあげます。少し斜め後ろに傾けてあげると飲み込みやすくなりますね。
基本的には離乳食は空腹時に食べられるよう授乳前にあげるといいですが、離乳食を始めたばかりのこの時期はこだわらなくても構いません。赤ちゃんの機嫌のいいときに楽しく食べさせられるといいですね。
万が一アレルギーの症状がみられた際に食材が特定できるよう、初めての食材は1日1種類1さじから始めてください。また、病院を受診しやすいように平日の午前中に与えると安心ですね。
離乳食初期に食べていい食材
生後5~6カ月の赤ちゃんの内臓は未発達なので、負担があまりかからないものを選ぶ必要があります。
1.穀類
丁寧にすりつぶした10倍がゆからはじめて、離乳食を開始して1カ月ぐらいたったら、耳をのぞいてトロトロに煮た食パンやうどんも食べられるようになります。うどんは塩分を含むので、ゆでた後によく水にさらしておくと安心です。食パンもうどんもすりつぶしてペースト状にします。
2.野菜・果物
10倍がゆを食べて慣れてきたら野菜もあげます。やわらかくゆでてすりつぶし、必要に応じてお湯やだし汁などでゆるめてペースト状にしましょう。
食べられる食材として、ほうれん草、にんじん、ブロッコリー、じゃがいも、かぼちゃ、さつまいも、キャベツ、かぶ、トマト、りんご、バナナなどがあります。
3.たんぱく質源
10倍がゆと野菜・果物を食べることに慣れてきたら、たんぱく質源の食材もあげます。
この時期に食べられるたんぱく質源は、しらす干しや鯛、ひらめ、カレイなどの白身魚や豆腐、枝豆、卵黄、牛乳など。必要に応じてお湯やだし汁などでゆるめてすりつぶし、ペースト状にします。卵は、初めて与えるときは卵黄(かたゆでしたもの)を耳かき1さじ程度からにしてください。お湯でのばしてもいいし、10倍がゆに混ぜてもいいですね。
*献立
離乳食に慣れて1日2回食に進む頃になったら、1食ごとに「主食(穀類)」、「副菜(野菜や果物)」、「主菜(たんぱく質源)」を組み合わせた献立にします。
<メニュー例>
1食目……「10倍がゆ」+「ブロッコリーペースト」+「豆腐」
2食目……「しらす入り10倍がゆ」+「にんじんペースト」
なお、母乳育児の場合、6カ月ごろになると鉄やビタミンDが不足しやすいという報告があるのでそれらの摂取も意識するといいですね。かんたんにできる方法として、鉄を含むきな粉やビタミンDを含むしらすを離乳食に混ぜるなどがあります。
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まとめ
5~6カ月ごろの赤ちゃんは、エネルギーや栄養素のほとんどを母乳やミルクからとっています。そのため、この時期の離乳食はスプーンや食材に慣れることがおもな目的。栄養バランスよりも、さまざまな食の体験を通して食事に慣れることが大切です。慣れない食べ物を嫌がることもあるかもしれませんが、赤ちゃんにも好き嫌いやその日によって食べたり食べなかったりするのは自然なこと。また、味覚も慣れと共に変わっていくこともあるので、おおらかな気持ちで焦らずゆっくり進めてくださいね。
PROFILE
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相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、米国コロンビア大学医学部留学。青葉学園短期大学助教授。日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。