子育てエール!専門家による、ママパパ応援コラムvol.116

妊娠中のつらいかゆみや乾燥…、肌トラブルの原因と対策方法は?【皮膚科医が解説】

2022/2/1
妊娠中のつらいかゆみや乾燥…、肌トラブルの原因と対... 妊娠中のつらいかゆみや乾燥…、肌トラブルの原因と対...

妊娠中は、さまざまなマイナートラブルが起こりがちです。妊娠中のかゆみもそのトラブルの1つ。「かゆみをどうにかしたいけれど、塗り薬はお腹の赤ちゃんに影響しない?」「産後も続くの?」と悩みますよね。そこで今回は、神奈川県立こども医療センター皮膚科部長である馬場直子先生に、妊娠中のかゆみはなぜ起こるのか、かゆみがあるときはどう対策すればいいか教えてもらいました。

妊娠中はホルモンの影響などで肌トラブルが起こりがち

腕をかく妊婦さん

妊娠中は、ホルモンの影響で体質が変化することや、新陳代謝が活発になることで汗をかきやすくなるため、肌トラブルが起こりがちです。妊娠中の肌トラブルの特徴としては、肌がカサつきやすくなるためにかゆくなる、あせもができてかきこわしてしまうなどが多く見られます。また、これまで使っていた化粧水などが合わなくなる、頭がかゆくなる人もいます。

妊婦さん特有の症状としては、お腹にできた妊娠線がかゆくなる、体全体がかゆくなる「妊娠性皮膚掻痒症(そうようしょう)」、お腹や胸、太ももなどに赤いブツブツなどができ、強いかゆみを伴う「妊娠性痒疹」が見られる人もいます。

「妊娠性皮膚掻痒症」、「妊娠性痒疹」は、妊娠4ヵ月以降~妊娠後期に起こりやすく、初産婦よりも経産婦に多いことがわかっていますが、初産婦でも起こることはあります。皮膚に何か所見があるわけではなく、かゆいという自覚症状だけなので、妊娠してから初めてかゆいという自覚症状が現れたときに、妊娠性と考えられます。気がかりがあったら、まずは産婦人科、皮膚科で相談しましょう。

かゆみを抑えるために、普段の生活で対策を

肌トラブルを悪化させずできるだけかかなくて済むように、かゆみを抑えるための対策をしましょう。以下のポイントを参考にしてくださいね。

肌を清潔に保つ

シャワーや入浴で肌を清潔に保ちましょう。体を洗うときは、スポンジなどを使うと肌への刺激になるため、たっぷりの泡をのせた手で洗うようにします。頭皮も脂が詰まりやすくなるため、頭がかゆくなることがあります。ついゴシゴシと洗いたくなりますが、皮膚が普段より敏感になっていますから、やさしく洗いましょう。そして、熱いお湯、長湯は皮脂が流れ落ちてますますかゆくなりますから、シャワーやおふろの湯温は38~40℃、湯船につかるのは5分以内を目安にしてください。

肌への刺激が少ない素材を選ぶ

ナイロン、ポリエステルなどの合成化学繊維がかぶれの原因になることもあるので、直接肌に触れる下着と洋服は、肌への刺激が少ない、肌触りのいい綿100%のものを身につけましょう。汗や熱を逃がさないタイプの肌着や洋服もかゆみを増します。

化粧品などが肌に合わなくなったら刺激の少ないものにする

妊娠中は今まで大丈夫だったものが合わなくなる場合もあります。化粧品やシャンプー・コンディショナー、石けん、衣料用洗剤を使って肌トラブルが起きたときには、肌にやさしく刺激の少ないものに替えましょう。

肌が乾燥するとかゆみが増すため、保湿を心がける

妊娠中は、ホルモンの影響で肌が乾燥しやすくなります。肌が乾燥するとかゆみが増すので、おふろ上がりは全身をしっかり保湿し、日中もかさつきが気になる部分はこまめな保湿を心がけましょう。

かゆみから気をそらすために気分転換する

気分転換をして、かゆみから気をそらすことも有効です。しかし、それだけでは対処しきれない場合には皮膚科を受診しましょう。

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(コモドライフ)

かきむしるのはNG!つらいときは受診して

肌をケアする妊婦さん

かゆい部分や湿疹をかきむしると、症状が悪化します。かかないようにすることも大切ですが、かゆみがつらいときや症状がよくならない、悪化したときなどは、早めに産婦人科や皮膚科を受診しましょう。

肌トラブルが起きたとき、妊娠中に処方されるのは、塗り薬が主体です。塗り薬ならステロイド軟膏も含めてまったく問題ありません。かゆみ止めの内服薬、抗ヒスタミン剤はお腹の赤ちゃんにも移行しますので、積極的にはおすすめしません。しかし、外用薬だけではどうにも我慢できず、かゆみのために夜眠れないほどつらい場合は、かえって赤ちゃんのためにも良くないので、必要最小限の飲み薬を飲んでも構いません。自己判断ではなく産婦人科の先生とよく相談して処方してもらいましょう。

まとめ

妊娠中はお腹に赤ちゃんがいることで、さまざまな変化が妊婦さんの身体に現れますが、皮膚も例外ではありません。今までとは少し違う肌の悩みが出てくるかもしれませんが、これも赤ちゃんが生きている1つのメッセージで、育児の始まりだと思って受け入れてください。ひとりで悩まず、必ず産婦人科や皮膚科の先生に悩みを打ち明けてよく相談してください。きっと解決策が見つかるはずですよ。

馬場直子

PROFILE

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神奈川県立こども医療センター皮膚科部長、横浜市立大学皮膚科臨床教授

1983年滋賀医科大学医学部卒業、1994年横浜市立大学皮膚科講師を経て、神奈川県立こども医療センター皮膚科部長、2015年より横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼務。日本皮膚科学会専門医。専門分野は小児アトピー性皮膚炎、母斑、血管腫、皮膚感染症など小児皮膚科学全般。

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