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3児のママ産婦人科医の実体験〜ドクターの母乳育児ストーリー

2017/7/21
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母乳育児について楽しく学べる「おっぱいカレッジ」の講師としても活躍中の産婦人科医の善方裕美先生は、3人の女の子を育てた先輩ママでもあります。母乳育児を通してさまざまな経験をしてきた善方先生に、ご自身の母乳育児の体験談と、体験を通して現在のプレママに贈るメッセージについてお聞きしました。

−−善方先生の最初の出産は?

もう約20年前になりますが、初めての出産のときは、すでに産婦人科医として大学病院に勤務していて、夫の実家であるよしかた産婦人科でも働いていました。ですが、切迫早産になってしまって、3ヵ月よしかた産婦人科に入院したんですよ。大学の方は休みをいただいたんですが、よしかた産婦人科は完全に休むことができず、ちょこちょこ診察に行ってはお腹の張りを感じて休んで…という繰り返しでした。

お腹が張ってきたときの不安な気持ちは今でもはっきり覚えているので、診察で患者さんに接するときにこの経験が活きていますね。

−−出産後は母乳で育てたのでしょうか?

出産や母乳育児については、その時代の状況や流れがあります。約20年前は、母乳育児はこだわっている人があえて実践するイメージで、人工乳(ミルク)のほうが栄養があるから優れていると言われていた時代でした。大学病院で産んだのですが、当時は母子別室が当たり前で、出産したらすぐに赤ちゃんは新生児室に連れて行かれ、母は1人で寝るんですね。1人でいると、赤ちゃんがどうしているか不安になってきて、必死に新生児室まで会いに行くんですけど、新生児室がまた遠いんですよ(笑)。 産婦人科医と言っても、妊娠からお産までの知識はありますが、母乳育児については何も知らず、出産した病院でも右のおっぱいを5分吸わせて、左も5分吸わせましょう、と習っただけ。体重計に乗せて、1日あたり50g増えていなかったらミルクを作ってあげましょう、ということで、助産師さんがミルクの作り方を教えてくれました。それだけです。

−−授乳の仕方などは教えてくれないのですか?

新生児室で経産婦さんが母乳をあげているのを見て、「どうやってあげるんですか?」と聞いて、見よう見まねでやってみただけです。退院後は実家に里帰りしましたが、母は私を慰めるつもりで「無理しなくても人工乳で大丈夫」と言うし、母乳をあげたくてあちこちに相談しても「ミルクは栄養がしっかり入っているから心配しないで大丈夫!」と言われるばかりでした。結局、1ヵ月のときには完全にミルクになってしまいました。1人目のときは、母乳育児をする環境がなかったですね。

体験談をお話しされる善方先生

−−2人目の出産のときは?

2人目はよしかた産婦人科で産んだのですが、当時のよしかた産婦人科の産後入院の方針は、出産3日目から母子同室でした。最初の経験から、私には母乳育児は無理だと思っていたのですが、助産師さんから「日本母乳の会」の本をプレゼントしていただいたんですね。そこに書いてあったことはまさに目からウロコで、ぼろぼろになるまで読みました。何度も何度も赤ちゃんにおっぱいを吸わせようと書かれていて、本を励みに頑張ったのですが、4ヵ月からミルクになってしまいました。 というのも、私のおっぱいは赤ちゃんが吸いにくい形をしていたんですよ。まだ当時は乳頭マッサージなど事前準備の考えはなかったんです。

−−それでも、わずか3〜4年で、母乳育児に対する考え方が変わり、4ヵ月まで母乳をあげることができたんですね。

2人目の出産の後に、「かながわ母乳の会」に通い始めました。当時はまだ産婦人科医は私を含めて二人だけ、助産師さんと小児科医がメインでした。小児科医は、母乳で育てられた赤ちゃんのほうが風邪を引きにくく丈夫なことを、肌感として感じていたんですね。

母乳の会に通ううちに、最初から母子同室にしたほうが良いのではないかと感じ始め、よしかた産婦人科で「即日母子同室」「カンガルーケア」「部屋にミルクを置かない」「何度も何度もおっぱいを与える」など、母乳育児に向けた実践をスタートしました。

−−その結果は?

見事にすべてのママが普通に母乳育児ができるようになったんですよ!そうなると、事前準備など、あれもこれもと母乳育児支援を始めるようになりました。そんな中で3人目を妊娠し、再びよしかた産婦人科で産んだのですが、事前準備もしっかりすることで、なんと完全母乳で育児ができたんです!

−−1人目が1ヵ月で完全にミルクだったことを考えると、すごいことですね!

1人目のときは出産後すぐに赤ちゃんと引き離されることが当然で、母乳で育てる権利が奪われていたんですね。

3人目のときは環境も整い、母乳で育てる権利を手に入れて、おっぱいが大好きな子に育ってくれました。

おっぱいカレッジで登壇された善方先生ピジョンおっぱいカレッジにて

−−善方先生が1人目を出産した時代に比べると、今は母乳育児に関しては恵まれた環境にあるんですね。

そうなのですが、現在は情報がありすぎて惑わされることが多くなってきたように感じます。妊婦さんはスマホを使ってどんな情報でも手に入れることができます。スマホの世界の中での母乳育児に対するイメージが作られてしまっているんですね。ネガティブな情報が検索結果の上位に上がりやすいですし、目に留まりやすいので、ものすごく母乳育児は大変なことだと考えている妊婦さんに出会うこともあります。

−−せっかく母乳育児をする権利を手に入れているのに…

確かに、出産直後の1ヵ月は大変です。ですが、なぜ大変なのか、大変だけどここをなぜ乗り越えなければならないのかを、知っておくことが大切です。母乳は栄養的にもコミュニケーション的にも人工乳にはないメリットをたくさん持っていて、それは人間の持っている能力ですから、みすみす捨てるのはもったいないことです。

−−人間の持っている能力ですから、母乳育児は自然なことなんですね。

情報の洪水の中で不安ばかり考えているのではなく、素直に自然なこととして、母乳育児を実践してほしいですね。母乳育児を手助けする母子同室やカンガルーケアは、今では普通のことになっていますので、身を任せれば、母乳育児がスタートできます。

私も自分の産院の方針を母乳育児支援に変えて、その中で産んで母乳で育てられて、本当に感謝しています。おっぱいを与えている時間は幸せを感じますし、母乳はいつでもどこでもあげられるので、ママにとってもラクでオススメですよ(笑)。

おっぱいカレッジ会場にて
コモドライフ取材班

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