写真家・山本彩乃さんが綴る、ゆったり子育てライフ。今回のテーマは「出産」です。
出産予定日は、2018年の1月半ばでした。なので、12月も無理のない程度に、楽しくマタニティライフを過ごしていました。妊娠9ヵ月を過ぎる頃には、妊婦さんの気がかりといえば、「いつ、その時が訪れるのか。どのように始まって出産になるのか」ではないでしょうか。
ひとりの、大切な命が、いつ産まれようとするのか、それはおなかの子のみぞ知るものです……。ドキドキと、ワクワクと。ハラハラと。
私の出産は、どうなるんだろう?
ビビリな私は、出産予定日の2ヵ月前には、出産で入院するための荷造りはすべて終え、夫にも分かるように玄関に置いていました。
それに加えて、いつ、どのタイミングで産気づくかは分からないので、この頃にはどこに行くにも、持ち歩いているグッズがありました。母子手帳、保険証、病院の診察カードはもちろんのこと、いざというときに携帯が使えないと怖いので携帯充電バッテリー、タクシーに乗るための数千円と小銭を財布とは別に。外で破水したときのために夜用ナプキン、そのままタクシーに乗る想定で防水シート。友人たちがくれた安産のお守り2つ。小腹が空いては出産を乗り切れないのでは、とお菓子を少し(笑)。
12月18日。数年ぶりの友達と、恵比寿でランチ。
そして、自宅に着いて「今日はたくさん歩いたなあ、楽しかったなあ〜」と座ってテレビを見ていて、立ち上がった瞬間。パンッッという音(がした気がした)と共に、バシャッと透明な水が(羊水)たくさん出たのです……!!!!!
心臓がバクバク鳴り、つ、つ、ついに来てしまったのです……!!!その時、が。
陣痛から始まれば、ある程度の心の準備をする時間があります。想定して用意はしていたけれど、その時が来たら、オロオロしてしまうんだな〜〜と、部屋をうろうろして無駄な動きをしている自分を、冷静に見つめるもうひとりの自分がいました(笑)。
とりあえず、もう腹をくくるしかありません。スタートの合図が鳴ってしまったのですから。
家には私一人。(猫2匹も慌てる私にびっくりした顔で見ていました)震える手で、まずは病院の産科に電話。妊娠週数と、20時に破水したことを伝え、この後の動きを聞きました。このまま出産になるので、病院にくるように、とのこと。あらかじめ登録しておいた陣痛タクシーに電話。10分で来てくれると言われ、夫に電話で「破水した!」と伝えて、日々持ち歩いていたグッズと、カメラをバッグに入れ、服を着替えて待ちました。タクシーのおじさんは、荷物をテキパキ乗せてくれて、すぐに病院へ連れていってくれました。
着くなり車椅子に乗せられ、看護師さんに「26日早いんです。おなかの子は大丈夫でしょうか……」と聞く私。すぐ主治医の先生に診てもらって、その日の夜は陣痛が来るのを待つことになりました。
「眠れるときに寝ておいてね。まだまだこれからだから」と助産師さん。
そうこうしているうちに夫が病院に到着。遅れてうちの母も到着。顔を見てホッとしました。
(余談ですが……この夜、母が山梨から駆けつける際に、乗る数本前の特急あずさに長野あたりで鹿が3頭ぶつかったため、電車が遅れていたとか……。滅多にないことが起きるもんだなあ!と、思ったものです……)
陣痛が弱めだったので、普通に話しもできて、「鹿があずさにぶつかるなんて、びっくりだね!!」なんて話しながら。
その時点では子宮口は2cmくらいしか開いていません。助産師さんに、「笑って話せているし、まだまだかかるね」と言われ、次の日の朝にまた夫と母には来てもらうことになりました。
12月19日。午前中に、陣痛促進剤を打つことに。その後の効き目は人それぞれとのことで、気長に待とうかなあ〜なんて思っていたら、お昼には本陣痛がきたのです。
こ、これは……!!!今までの弱い陣痛とは全く違いました。確かに、笑ってなんかいられません……。痛い……!!!
助産師さん:「痛いんだね〜〜。良かったね。痛みが来て。おなかの赤ちゃんに会うためには必要な痛みだからね〜」
……そうだ、この痛みが来るのを待っていたのではないか……!!!ふんばれ、私っっっっっ!!
助産師さん:「まだ子宮口の大きさ、もう少しだね〜。まだいきんじゃダメだよ〜〜」
いきみたくて仕方ない……!!!
夫や母には腰をさすってもらったり、テニスボールでおしりを押してもらったり、それをやってもらうだけでも、楽になるので、相当助けられました。
この後、助産師さんが子宮口を確認すると、赤ちゃんの頭がもう触れる位置に。「赤ちゃん降りてきたね、髪の毛ふさふさだよ!」「よし!分娩台に行こう!」
すぐ近くの分娩室に歩いて移動。台に乗ると、助産師さんが、「もう、いきんでオッケーだよ〜!!」と言ってくれたので、やった〜〜〜〜〜!!!!いきむぞ!!!
あ、その前に、夫に「カメラの準備はOK?露出大丈夫?」と聞く私(笑)。私が日常で使っているカメラを、夫に出産時に使ってもらう予定だったので、事前に慣れておいてもらい、レンズはズームレンズを装着していました。
本当は、自分で自分の出産を撮影したかったんです……。一台は三脚固定で定点撮影、リモコンで遠隔シャッター。もう一台は、手持ちで私の視線から見える産まれた直後の赤ちゃん。でも……全然無理です……!!痛いし、それどころじゃありません!!
「ピントと露出がOKなら、大丈夫だから!記録、お願いします!」と、夫に任せて私は産むことに専念しました。
万全の体制で、いきんでは休みを繰り返して、30分も経たないそのとき、ポンッッッ!!と赤ちゃんの頭が子宮口から外に出てきました。
「赤ちゃん産まれたよ〜〜!おめでとう!!」
この時、温かい羊水が一緒に出て、「まるで温泉が湧いたみたい……!!!あったかいですね〜〜〜。あ〜、温泉に浸かっているみたい……」と私が言うと、主治医の先生と助産師さんたちが、いい表現だね〜〜!!とゲラゲラ笑っていました。
カンガルーケアをしてもらい、“ああ、この子に会うために、私のこれまでがあったんだ” と心の底から思いました。涙が溢れて止まりませんでした。
分娩室を出ると義両親も駆けつけてくれていて、会えました。ああ、終わったんだ……。
出産、終了。
ここからの日々は、赤ちゃんと新米ママの一歩一歩が始まります。全くの未知の世界。わからないことだらけで、目まぐるしい毎日のスタートです。
それはまた、次回に。
PROFILE
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写真家。広告、雑誌などで活動。2017年12月に長男、2019年6月に長女を出産。あらゆるもののもつ、輝きを写したい、という想いで日々シャッターを切っている。
https://www.yamamoto-ayano.com
(制作 * エチカ)