先輩パパとママの毎日コラムvol.16

謎だらけのいきものがやってきた「ハローワールドは直接言いたい。」

2016/6/7
謎だらけのいきものがやってきた「ハローワールドは直... 謎だらけのいきものがやってきた「ハローワールドは直...

デザイナー・岡田裕介さんが、“ナゾだらけの小さな生きもの”との日々を綴った、新米パパ日記。

育児経験も少ない新米父親の僕がここで何を書けばいいのかな?と、ちょっと悩んだのだけど、はじめて出産に立ち会ったときの話にしようと思う。

出産予定日も近づいた 2014年12月。 いつもどおりに仕事をしていると、里帰りしている彼女から電話。 「内診中に破水しちゃった。このまま出産することになった」

おっと、ついにきたか!でもまだ心の準備ができてないよ……。すぐに会社を早退させてもらい、電車とタクシーを乗り継いで病院へ。

病院

自分の子どもが生まれてくる瞬間に立ち会う。

子どもができたとわかったときから「出産には必ず立ち会うぞ!」と決めていた。 もちろん、彼女に付き添って応援しなくては!というのもあるけど、 僕の中でまだふわっとしていた「父親になる」ということが一体どういうことなのか、現実として、実感として体験することができるのではないかと思ったからだ。 そりゃもう当日まで不安だらけだったけども……。

陣痛

病院に着くと、彼女は点滴をされながらベッドに横になっている。ドゥンドゥンドゥン……とテクノミュージックのように子どもの心音が病室に響いている。たまに心拍が少なくなったり、音が小さくなったりする。 子どもはどうやらお腹の中で眠っているらしい……。こののんびり屋さんめ! 痛みに喘ぐ彼女の背中をさすり、全力でおしりを押す。 男にはそれくらいしかできることがないから、全力で押す!おしりを、押す!

お義母さんと一緒に応援

翌日、ようやく本陣痛がはじまり分娩室へ。

分娩台の上で息むたびにずり下がってしまう体を引っ張り上げ、 ストローでお茶を飲ませ、お義母さんといっしょにうちわで扇ぐ。「おーしよーし、いいぞ。もう 1ラウンドいける!」 だんだんボクシングのセコンドみたいになってきた。 また陣痛がくるぞ。今だ、いけ!いくんだ!!

陣痛の波が収まっている間にカメラを取り出し写真を撮る。 この日は、父親から引き継いだ古い一眼レフを持ってきた。 父親が小さい頃の僕を撮ったこのカメラで、同じように自分の子どもを撮ってみたかったのだ。 壮絶な生命の現場でも、ファインダーを覗いていると不思議と冷静でいられた。

息み続けること数十回、医師の手助けもあってようやくお腹から出てきた小さな生きもの。 身体は真っ赤でふにゃふにゃで頼りないけど、しっかり空気を吸って大きな声で泣いている。 ヘソの緒を切らせてもらった。ハサミを通して感じるなんともいえない固い感触。

破水して28時間。陣痛がはじまって10時間。分娩室に入ってから3時間半。 ものすごく長いようで、でもあっという間に、宇宙のどこかからこっちの世界にやってきた。

ハローワールド

「やぁやぁ!おこしやす!」「ハローワールド!」 はじめて会った君に、そんなふうに声をかけた。

こうしてはじめて出産に立ち会って、僕は本当に父親になれたような気がした。 ひとつの生命がこの世界にやってくる瞬間を目の当たりにできたことは、僕にとって大きな思い出となり、家族への想いを一層強いものにしてくれたように思う。

君がもうすこし大きくなったら、どんな風にこっちの世界にやってきたのか、 僕の思い出を話してあげたいな。と思っている。

岡田裕介

PROFILE

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デザイナー。1才半の息子とワイフの 3人で郊外暮らし。趣味は写真とハンドメイドと自転車と登山。ナゾだらけの小さな生きものにふりまわされる毎日を送る。
Instagram:@demiflare168

(制作 * エチカ)

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