写真好きの夫婦による、それぞれの目線からお届けする、子育て写真日記。
10:00
予定日から1週間。いつものように出社。
13:30
会社の同僚との昼ごはんの帰りに妻から電話が入る。着信画面を見た時に「きた!」と思った。電話に出るとやはり陣痛が始まったらしく、産院に行ったほうがよいかも、とのこと。急ぎ帰る準備をして電車に乗る。駅から家までの道の途中で、空の写真を携帯で撮った。
14:30
帰宅。事前に決めていたように荷物を準備して産院に向かう。家を出る時に玄関で「1枚だけ」と妻の写真を撮った。車に妻を乗せ、いざ産院へ。緊張で浮き足立つのをおさえるように、「自分の仕事は安全に妻を産院に届けることだ」と言い聞かせ、この10ヵ月何度も通った道を運転した。
15:00
産院に到着。手続きをすませ軽く診断を受ける。検査してしばらく待つように言われるが、しばらくとはどのくらいなのだろう。なんとなく居心地がわるい。
16:00
産院の2階で二人で待つ。妻の顔がとても緊張しているようにみえた。自分は平静を保つことだけを考え、緊張が顔に出ないようにすることに神経を注ぐ。なんでもないようなフリで時々シャッターを切る。
18:00
妻の陣痛が激しくなる。何もしてあげられないので背中をさすると、断られた。鬱陶しいらしい。その後は妻の手を握っていたが、妻の力が想像以上に強く指が折れそうで、耐えられずに手のひらできちんと握るように組みかえてもらう。
20:00
助産師さんが妻の体を診る。そろそろだということで分娩台に移動することに。妻は一歩一歩分娩台のある部屋に向かっていった。分娩台での妻の様子はまるで動物のように猛々しかった。とにかく、無事に生まれることだけを願う。
20:20
先生が入ってきてなにやらごそごそとやっていたら突然生まれる。あまりにも突然だったので、何が起こったのかわからなかったが、赤ん坊の泣く声が聞こえ「ああ、生まれたんだ」と実感。妻の下半身にかかっている布越しに恐る恐る覗いてみる。小さな生き物が動いていた。手も足も耳も目もある、全身真っ赤な自分の子供がいた。
22:00
一段落したところで、無性に乾杯をしたくなって一人外に出る。近くのコンビニまで行き、ビールを買う。どこに向かってビールを差し出していいかわからず、路地裏の狭い空に向かってビールを軽くつきだした。今日に乾杯。妻に乾杯。娘に乾杯。
PROFILE
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東京生まれ、東京育ち。デザイナー。毎月写真を1枚選ぶだけで、両親への親孝行と子どもの成長記録として使える「レター」というサービスを運営中。http://lttr.jp
(制作 * エチカ)