夫と娘と2匹の猫と暮らす、イラストレーター・布川愛子さんの子育てエピソード。今回は「出産」をテーマにお伺いします。
ーー今回は出産のときのお話を伺いたいと思います。出産はどのようにして始まりましたか?
布川
出産予定日になっても産まれてくる気配がなく、子どもの体重も重くなっていたので促進剤を用いての計画出産になりました。診察日の当日の夕方に入院、翌日出産の流れと聞き、急に不安と恐怖、いろいろな気持ちが渦巻いていた記憶があります。
とりあえず「入院前に好きなものを食べよう!」と、本当はウニが食べたかったのですが、生魚はやめたほうがいいかなとのことで、2番目に食べたいと思っていたお気に入りのピザ屋さんのピザを買って来て、自宅で食べました。
産後、熱々のピザを食べるのはしばらく無理だろうと想像していたので、一枚一枚噛み締めて食べました!
ーー陣痛が始まってからはいかがでしたか?
布川
和痛分娩ができる産院に通っていたので、陣痛のときは和痛の麻酔で少し痛みは軽減されていたようなのですが、それでもとても痛くて……痛みで力むときに、枕の中の小豆を握っていたのですが、握り潰してしまうのではないかというくらい力が入りました。痛みのなか、これ麻酔効いてるの!?と何度も思っていましたね。
ものすごい痛みのなか、分娩室へ移動したり(記憶が曖昧なのですが、午前中に陣痛が始まり、産まれる1〜2時間くらい前に分娩室に入ったのだと思います)、陣痛の合間には少し休めたり、初めての経験の連続で人生イチ必死な時間でした。
看護師さんがずっと励ましてくれて心強かったですが、陣痛のときにとんでもない力で手を握ってしまって申し訳なかったです……。
ーー旦那さんの様子もぜひ教えてください!
布川
夫は、産まれてくる少し前に立ち会いで分娩室に入ってきて、汗を拭いたり肩をさすったり励ましの声をかけてくれました。でも本当はあまりよく覚えていないので、夫からのコメントです(笑)!
「予定日は自宅待機、産まれる1時間ほど前に病院に着き、出産直前から立ち会い、妻の手を強く握りました。産まれた瞬間はただただ感動し、そして無事に産まれたことに安堵し力が抜けました。正直そのときの記憶は、娘の顔より、とても穏やかでやわらかな妻の表情のほうがよく残っています。壮絶な出産を乗り越えてくれた妻に感謝です」
ーー夫婦で出産という大仕事を乗り切ったのですね。初めてお子さんと対面したときのお気持ちもお聞かせください。
布川
「ありがとう〜お疲れさま〜」と声をかけました。よく頑張ったね、無事産まれてきてくれてありがとうと思いました。
出産時出血が多くて頭がぼんやりしていましたが、かわいいとか愛おしいなどの気持ちよりも、「産まれたばかりの赤ちゃんってこんな感じなのか〜!」「小さいな」「私のおばあちゃんにすごく似てるな」「おなかにこの子がいたのか〜」などと朦朧としながら感じたのを覚えています。
ーー実際に出産を終えて、準備しておいてよかったことはありますか?
布川
出産までの間、分娩のときの痛みをどうしたら和らげられるのか、いろいろと調べていました。“とにかく呼吸に集中する”という情報を見つけ、出産時はそれを実行していたのですが、少しだけ和らいだ気がするので、よかったかなと思っています。
ーー産後の病院での生活で、思い出深いエピソードなどがあれば教えてください。
布川
産院の食事がすごくおいしくて、幸せでした。個室だったのでリラックスして過ごすことができたのもよかったです。
夜は赤ちゃんを預かってくれたのでひとりで寝たのですが、眠れずに夜中にTVをつけて映画を見て号泣していたら、見回りの看護師さんに見つかり「何してるの!早く寝なさい〜」と言われた思い出があります(笑)。産後最初の2日くらいは貧血でシャワーなどは入れず、少しの移動でも車椅子にも乗っていましたが、それ以降は、産後ケアのマッサージなども受けることができ、とっても癒されました。
退院までの間、改めて娘と触れ合うなかで、すやすや眠る小さな赤ちゃんを見ながら、「私と夫の子どもなのか……私は母になったのか……」となんだか不思議な気持ちで。これから赤ちゃんとどんな日々が始まるのか、不安と期待と混ざったような……でも楽しみという気持ちがとても大きかったのを覚えています。
産まれたばかりの赤ちゃんが、こんなに小さくふにゃふにゃで儚いなんて初めて知ったので驚きましたが、日に日に「かわいい、かわいい!」という気持ちがどんどんと湧いてきました。
PROFILE
布川愛子このライターの記事一覧
イラストレーター。紙ものなどを扱うブランド “ai” デザイナー。広告、書籍装画、ステーショナリー、雑誌、絵本などを中心に活動。海外のクライアントワークも手がける。
http://www.nice-nice-nice.com
(制作 * エチカ)