先輩パパとママの毎日コラムvol.274

がんばらない、マイペースな子育て日誌「“つわり”は家族の始まり」

2019/10/15
がんばらない、マイペースな子育て日誌「“つわり”は家... がんばらない、マイペースな子育て日誌「“つわり”は家...

神戸でのんびり女の子と男の子を育てる山田 愛さん。家族がスタートしたときの日々を綴ります。

主人と二人の結婚生活も10年近くが経ち、この先もきっとこんな感じで年を重ねていくだろうから気の知れた友人と美味しいものを食べに行ったり、古い住まいをリフォームしたりしながらのんびりと暮らしていけたらいいな、なんて想像し始めていた頃。なにやら体調がすぐれず、もしやと訪れた病院で子どもを授かったことを伝えられました。産婦人科で小さな命を授かったことがわかり、気持ちを落ち着かせるために向かった場所は、カフェのカウンターでした。

小さなカフェとギャラリーを営んでいた私は、あれをどうしようこうしようと目の前のことで頭がいっぱい。ふと目の前にいる主人の顔を見ると、とても穏やかに微笑んで「まずは遠く離れた両親に電話をしよう」と一言。それぞれに報告をし電話を切った途端、なんだかホッとしてさっきまでの不安よりも喜びがじわじわと込み上げてきました。妊娠5週目の終わり頃のことです。

そこから始まったつわりの日々。みるみるうちに様々な匂いや食べ物が受けつけられなくなりました。近くに子育てをしている知り合いがあまりいなかったので、イメージしていたのはドラマの中の世界。うっと吐き気がしてお手洗いに駆け込んだり、グレープフルーツが無性に食べたくなったり。でも想像していたそれとはなんだか違っていました。

お鍋

中でも想像もしていなかったのは湯気。キッチンで湯を沸かしたり、お風呂やシャワーの湯けむりに包まれたりすると気持ちが悪い。あとは関西人なので、東京での暮らしを落ち着かせるために毎日のように部屋を漂わせていた出汁の香りもダメ。大好きなお味噌汁やうどんが食べられなくなりました。時々話に聞いていた、ご飯が炊きあがるあの香りもつらい。それからは何か口にできるものを探す毎日。ようやく見つけたのが、サイダー味のアイスキャンディと冷やしそうめん、そしてコンビニで売っている白くて細長いパンにチョコレートが挟まったもの。あとはひたすら冷凍庫を開けて氷を口に含む毎日。日頃食べ物には気を使っている方だったので、なぜこんな嗜好になってしまうのか不思議でしょうがないのだけど、食べられればもうそれだけでうれしくなりました。

こんなつらい時期を乗り越えられたのはやはり主人の支えがあってのこと。仕事の帰り道、「今日は何が食べられそう?」と毎日連絡をくれました。空腹で帰ってきているのに、私と同じ冷やしそうめんを、しかも真冬にずっとすすってくれたのです。初めての苦しみに妊娠していることも忘れるほどでしたが、ひとりじゃないんだと実感した出来事でした。

妊娠中の大きなおなか

無事長女を出産してから2年。ありがたいことに第二子を授かりました。言葉にならない喜びと同時にまたあのつわりがやってくるのだ、という不安。ひとり目の妊娠のように一日寝て過ごすわけにはいきません。2才になった娘の身の回りのことはもちろん、娘には栄養のある食事を三食用意してあげたい。そう思ってキッチンに立つのだけれど、やはり苦手な匂いのオンパレードでした。とても心配してくれるけれど、つわりについてはまだ理解できない娘。リビングのソファに横たわっていると、おままごとをたくさん抱えて「一緒に遊ぼう!」とやってきます。「はい!」と手に渡されたおもちゃのリンゴや人参を見ても吐き気が襲ってきたときは自分でもびっくり。育児書に書いてある、“つわりは病気じゃない”“必ず終わりが来る”という文字を何度も目で追って、少し気分の良いときは近くにある公園へ空気を吸いに行くことで随分気が紛れました。

子どもが生まれてからが育児だと思っていたけど、おなかの中に小さな命を授かったそのときから家族と共に育児が始まっていたんだなあ、と今思います。それから数年。すっかり“お父さん”が板についた夫に抱きつく娘、同時にソファの上から夫の肩によじ登る息子を目で追いながら、私はコーヒーをひと口。こうしてひとつのチームのように支え合う関係を築くことができたのも、あの時期を乗り越えたお陰なのですね。

山田 愛

PROFILE

山田 愛このライターの記事一覧

大阪と東京でカフェ『Localite』を営んだ後、神戸へお引越し。育児に専念しながら海の見える場所で家族4人と暮らしている。

(制作 * エチカ)

RELATED 関連情報はこちらから

RANKING アクセスが多い記事をランキング形式でご紹介。

妊娠・出産・育児は、
わからないことがいっぱい。
悩み過ぎず、自分のペースで
行える育児のカタチを紹介していきます。
コモドライフとは?