先輩パパとママの毎日コラム

vol.372 まだまだ新米おかあさん「さぁさぁ、つわりがやってきた!」

藤沢あかり 2020/11/10

つわりっていったいどんなもの?二度の妊娠でつわりに悩まされたというライター・藤沢あかりさんの体験談です。

先日、妊娠がわかったばかりの人から相談を受けました。「吐きづわりがしんどくて、仕事にならないんです。どうやって乗り越えたんですか?」

「つわり」、この三文字だけであのつらかった記憶がぐわわわわ〜っと押し寄せる……かと思いきや、すっかり忘却の彼方。でも、記憶を手繰り寄せると、夜な夜な「つわり いつまで」「つわり ●週目」「つわり 改善」と検索しまくっていたなぁと思い出します。

わたしのつわりは、2回とも典型的な吐きづわりと食べづわり。食べて吐いてを繰り返し、加えて微熱のようなからだの重だるさ。寝苦しさから不眠になり、「おやすみ3秒」の、のび太体質のわたしはどこに行っちゃったの〜状態で、四六時中、車酔いのような気分の悪さと頭痛に悩まされました。

加えて地味につらかったのが、異常に敏感になった嗅覚です。今まで気に入っていたシャンプーや洗剤、ハンドクリームの類が一切だめになり、柔軟剤を使っている人が近くを通ろうものなら、失礼ながら息を止める始末。通勤電車は数駅ごとに下車しながら、新鮮な空気(とトイレ)を求めて乗り越えました。

アロマに炭酸水、レモン水、吐き気止めのツボにお灸。試せるものはなんでも試しましたが、わたしにはどれも気休め程度。大好物のパンも食べる気がしません。当時夫が、幻と言われていたパン屋さんのシュトーレンを買ってきてくれたのに、いっさい食べられなかったことを今でも悔いています……(食い意地)。

そんなわたしにも甘露の味がありました。それはオレンジジュース。えぇ、ツワラーにとってのザ・定番です。つわり中の、「これ、これぞ求めていた味!」に出合ったときの全身がよろこぶあの感覚といったら!砂漠で水を求めて歩き回ることもない今の暮らしの中で、食べ物ひとつであんなにもからだ中の細胞が喜ぶ感覚って、そうそう味わえません。そう考えると、つわりのときの、自分のからだが自分じゃないような不思議な体験というのはおもしろいものです。

夫は、せっせと生絞りだとか無添加だとか、おいしいオレンジジュースを探し求めては買ってきてくれていました。ところが、わたしときたらベストオレンジジュースはファストフードチェーンのもの。さらにポテトとのコンビはもう最強で、仕事帰りにひとりで店に寄り、オレンジジュースとポテトのMを平らげて帰る…というのが日常でした。取材と取材の合間に、駆け込んだこともあったなぁ…。ちなみにポテトも、ザ・定番ですよね。

これから手術室へ。2人目のときは後期づわりか、臨月で再び軽い吐き気に悩まされました。

さて、冒頭の質問の答えですが、あんなにつらいと感じていたはずなのに、ちっとも有益なことは伝えられなかったんですよね。「氷を口に含むと少しラクになるよ、オレンジジュースとポテトなら食べられた、においがつらいときはマスクをしていた」などなど。文字にしてみたら、検索結果のトップに並ぶような、月並みなことばかり。

唯一力を込めて伝えたのは、「とにかく今はまわりを頼って休めるときは休む、手を抜けるときは抜いて。ラクすることは悪いことじゃないよ」ということでした。

実際のところ、つわりはその時期が通り過ぎるのを待つしかないのかもしれません。でも渦中にいると、そんなふうに思えないというのも体験したからこそわかります。だからこそ、振り返ってみると、もっとまわりを頼って、ラクできるところはラクすればよかったんじゃないか、と思うのです。

わたしは、つわりで仕事が滞ることを絶対に認めたくありませんでした。妊娠している事実をかき消すようにがむしゃらに仕事に向かい、今まで以上に頑張らなくては、と虚勢を張っていたのだと思います。「これまでと同じように変わらずに」に、ひたすらこだわっていたのかもしれません。

生まれてしまえばサッパリ忘れてしまうのが、つわりの不思議なところでもありますが、それは過ぎたからこそ言えることです。

妊娠すると、からだも心も、自分ではコントロールできない変化が次々にやってきます。「変わる」ことはいつだって未知で怖くてたまらない。わたしは、必死で「変わらないように」キープしようとしていました。でも、子どもを1人産み、2人産み、ライフスタイルも体型もすっかり変わってしまった今は、変化の流れに身を任せてみるのも悪くないなと感じるのです。

あのとき、つわりと必死に戦わなくても、ちょっとぐらい自分がラクな方に流れて、手抜きをしてもよかったのになぁ。

そうそう、わたしのつわりの終わりですが、ある朝突然やってきました。なんとも晴れやかな、「あ、気持ち悪くない…!?」という目覚め。すべてのものがキラキラと輝き、ラッパを奏でる天使まで見える(気がする)。このあと、「なにを食べてもおいしすぎる期」に突入し、体重管理に泣く羽目になるとはつゆ知らず、「空気までおいしいわ〜!」と幸せに浸っていたのでありました。

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PROFILE 藤沢あかり 編集者、ライター。衣食住や子育てなど暮らしまわりを中心に執筆。主流・傍流にこだわらない視点で丁寧に取材し、分かりやすい言葉を使って伝えることがモットー。2012年、2017年、どちらも夏生まれの2児の母。
https://www.instagram.com/akari_kd/
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