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vol.87 妊娠中のおなかの張りは受診するのしないの?張ったらどうすればいい?【産婦人科医が解説】

天神尚子 2021/1/26

妊娠中によく起こる症状のひとつが「おなかの張り」です。昨今、働く妊婦さんが増えて多くの方が張りに悩まされているようです。 おなかの張りには、問題ないとされる生理的な張りと、早産などにつながる注意が必要な張りがあるといわれています。そこで今回は、妊娠中におなかが張る原因、予防方法、起きたときの対処法や病院を受診する目安について、産婦人科院長の天神先生にお聞きしました。

妊娠中、おなかが張る原因

おなかが張るのは、主には子宮筋が収縮している状態をいいます。妊娠すると、子宮では胎盤が作られて赤ちゃんを育てる環境ができていきます。そして、だんだん大きくなっていき、子宮とくっついているじん帯が引っ張られ反射的に縮もうとするのです。また、妊婦さんが緊張やストレスなどの刺激を受けることでも子宮の筋肉は収縮し、キュッと硬くなることがあります。

便秘もまた、とくに妊娠中期になって子宮が大きくなってくると、腸が子宮を圧迫しておなかの張りや苦しさを引き起こすことがあります。

張りの感じ方は人それぞれで、下腹部に違和感が生じたり、おなかがぎゅーっと引っ張られている感じがしたり、おなかが硬いと感じたりします。程度の差はあれ、おなかの張りはほとんどの妊婦さんが感じるもの。生理的なもので問題のない場合が多いものの、なかには早産や流産などの危険信号として起こることもあるので注意深くみる必要があります。

おなかの張りを予防する方法

生理的に起こることもありますが、毎日の生活に気を付けて少しでもおなかが張らないよう工夫しましょう。

1. 体を冷やさない

体が冷えると血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。また、子宮の血管も収縮するのでおなかの張りにつながってしまうのです。

体を冷やさないよう、飲み物は常温や温かいものを飲む、入浴で体を温める、生野菜を温野菜にする、長めの靴下を履く、腹巻を着けるなど体が温まるような生活にできるとよいですね。体を温めることは、血液の流れをよくし、肩こりや腰痛予防などの効果も期待できます。

2. 疲労やストレスをためない、動きすぎない

疲労やストレスをためてしまったり、長時間動き続けると子宮収縮が起こってしまうことがあります。家事や仕事などもできるだけ休憩を取り入れて無理をしないようにしましょう。

なお、仕事中は立ち仕事だけでなくデスクワークなどでも気を張ってストレスがかかっていることがあります。職場に相談してこまめに休憩させてもらう、張りを感じたら横になってすぐに休むことがができるようにしておくと安心ですね。

3. 便秘に気をつける

便秘でおなかにガスが溜まっていると、大きくなった子宮が腸に圧迫されておなかの張りを感じることがあります。便意を感じたらすぐトイレにいく、水分をしっかり摂取する、食物繊維などを含めた栄養バランスのよい食事をとる、朝起きたら白湯を飲む、睡眠をしっかりとって生活リズムを整えるなど、便秘にならないよう心がけることが大切です。

おなかが張ったときはとにかく安静に!

おなかの張りを感じたら、座ったり横になったりしていったん休みましょう。料理や掃除などでも負担がかかるものです。通勤の移動中であれば、座るか電車やバスなどを降りてベンチなどで休むとよいですね。仕事中の場合は、職場に相談して休憩させてもらうようにします。30分以内に張りがおさまってくるようなら心配のない張りと考えられるでしょう。

職場に相談しづらい、相談してもなかなか理解が得られないなどのときは、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を通じて産院から職場に伝えてもらう方法もあります。おなかの赤ちゃんを守るためにも、おなかが張ったときは職場に安静にする必要があることを理解してもらようにしましょう。

病院を受診する目安

張りは多くの妊婦さんにみられる生理的な症状ですが、なかには早産の危険性のある切迫早産や、胎盤がはがれて母子ともに危険な状態になる常位胎盤早期剥離の可能性もあります。

次のような症状がみられる場合はかかりつけの産院にすぐに連絡して診てもらいましょう。

・張りだけでなく腹痛もある
・30分休んでも張りがおさまらない
・頻繁に張りを感じる
・出血がある

なんとなくいつもの張りと違う気がするけど判断がつかないなど、気になることがあれば産院に連絡して指示をあおぐと安心ですね。

まとめ

日ごろからおなかの張りに気を付けて、無理をせずリラックスして過ごすことを心がけましょう。そして、おなかの張りを感じたら休憩をして様子をみてください。長引いたり気になるときはすぐに産院に相談してください。おなかの張りをよく理解して赤ちゃんとママの体を守りましょう。

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PROFILE 天神尚子 産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
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