先輩パパとママの毎日コラム
初めての妊娠・出産・子育て真っ最中のイラストレーターBoojilさんのエッセイ
昨年の5月に息子が誕生した。
妊娠、出産は、世界がひっくり返ったような感覚で、これまで経験してきたことが豆粒のようにえらく小さなことだったと思えるくらい、それはそれは神秘的な体験だった。
わたしの場合、食べづわりが7ヵ月まで続いて、お腹が減る度に気分が悪くなったり、急激なホルモンバランスの変化なのだろうか?ポテトフライが無性に食べたくなったり、身体に起こる変化にいちいち驚いていた。夜になると無性に悲しくなったり、ひとりさみしくシクシク泣いてしまったり。
「なんでこんな想いをしなくてはならないの?」と、妊娠中は何度も泣いた。
それでも子どもが産まれた今、心の底から、女に生まれてきたことに感謝している。
実のところ、わたしは子どもが得意な方ではなかった。どちらかというと自分自身が子どもっぽく、幼児と同じ目線で物事をとらえているところがある。 正直、妊娠前まで「自分の子どもが生まれたらどんな感じだろう。うまく子育てできるだろうか。」と、小さな不安を抱いていた。
しかしながら、妊娠が分かった日から、生まれるまでの10ヵ月の間、母性が湧き出て、身体も感覚もどんどん変化していく。不思議な事に、今までの感覚とは180度違うのだ。
街を歩いて、小さな赤ちゃんを見かける度に、目で追っている自分がいる。 泣きじゃくっている子どもを見ても、”あぁ、かわいいなぁ”と思う自分がいる。
お腹の子が男の子だと分かると、すれ違う男子校生を見て「うちの子もあんな風になるのかな〜」なんて、想像までしだすのだから更に驚く。
お腹の中で小さな命は瞬く間に大きくなり、いよいよ臨月を迎えた頃、パンパンでまん丸にふくらんだお腹をさすりながら、わたしは来る日も、来る日もどんな子が産まれてくるのか、楽しみでならなかった。
そんな幸せな気持ちに反して、出産は陣痛が来てから産まれるまで20時間…えらく時間がかかった。あまりの痛みに堪え兼ねて、横で全力でサポートしてくれた夫にしがみついて叫び狂ったわたしは「ぎゃー!死んじゃう。もう無理」と、本気で諦めようと何度も思ったのに、最後にいきんでいきんでようやく生まれたほやほやの赤ちゃんをこの腕の中で抱いた瞬間、さっきまでの痛みはどこへやら。
やわらかで、やさしい。 そこにいるだけで全てが嬉しくて、涙が込み上げてくる。
「お母さんだよ。」自分をそう呼んでいた。
いつの間にか、わたしはすっかり”お母さん”という生き物になっていた。