先輩パパとママの毎日コラム
書籍や雑誌のデザイナーとして活動する高橋倫代さんが綴る、パパと節分産まれの息子さんとの幸福いっぱいの日々。今回は離乳食についてです。
息子の離乳食は、育児書を買ってきて離乳食のページを熟読するトコロからスタート。はじめのひと口目、10倍粥をほんの少しだけ、ちいさな口元にゆっくりと運んでみたら木の匙を口に含んでいぶかしげな顔をされました。
妊娠する前、夫婦2人で暮らしているあいだは外食や買ってきたお総菜が当たり前(しかも栄養バランス無視で野菜少なめ、揚げ物いっぱいの献立!)、お皿を洗うのも面倒くさくてレンチンごはんをパックごと食卓に並べるような、家事レベルのひくーーい生活をしていました。気負わない暮らしはとても居心地が良いものでしたが、とはいえ赤ちゃんにそんな生活をさせるわけにはいきません。ちゃんとしないと、と思ったら、どうもその加減を失敗したようで…。お粥をつくるにしても本に書いてあったとおりの分量と工程をきっかりきっちり守り、お鍋も匙もよーく洗って食器は煮沸消毒をして。上手に手を抜く呑気なお母ちゃんになりたいと思っていたはずなのに、息子のごはんだと思った途端、『変なバイ菌がついているといけないっ』『新鮮な食材を!』と、どこまでも神経質になってしまいます。
息子のお世話に翻弄されながらの日々に家事のタスクをたくさん抱えるキャパシティはないので…。ベビーフードはフル活用。お粥も日曜日にたくさん炊いて1週間分を冷凍保存と、なるべく作業量を減らす工夫をしてみるのですが、それにくわえてホウレン草やニンジン、カボチャと、離乳食におすすめされている野菜を試してみながら2ヵ月が過ぎ、月齢が上がって食べられる食材が増えてくると、ブロッコリーやらピーマンやらマグロやら…。栄養のあるものを食べさせたくて、ついついまとめづくりする品数が増えていきます。さらには、やわらかく煮た茄子の小さなかけらでさえ、『ノドに詰まらせたらどうしよう!』と心配はつのり、こまかくこまかく潰す手間も加わります。
日曜日の昼下がり、夫が息子を寝かしつけている隣でイヤホンにロックンロールを流しつつちいさく躍りながらの離乳食づくりは楽しいひとときのはずだったのに、だんだんと作業量が増えていくにつれ、時間に追われてイライラピリピリイライラピリピリ…。せっかくの家族の時間に不穏な空気が漂います。
そして生後9ヵ月、離乳食の後期に差しかかる頃からだんだんと食べムラが出てきて、出したものを食べてくれないこともしょっちゅうになりました。いやなものを差し出されると、『いらない』と言わんばかりにスプーンをぱちっと叩いて飛ばす息子。手をくり出すスピード、その命中率はなかなかの高レベルで…。ちょっとでも気を抜くとトマトソースも納豆も、もれなく床に飛び散ります。スプーンがだめなのかとお箸で食べさせたり、パペットを使って腹話術(?)をしながら口に運んでみたりと、食べさせ方にも試行錯誤を重ねるけれどなかなか上手くいかず、無言で床をふきながら何ともげんなりとした気持ちに陥る日が続きます。
かと思えば、お正月、夫の実家に帰ってみんなで食卓を囲んだら、私のつくったいつものお粥もおばあちゃんの煮てくれたさつま芋も、ベビーフードも、大きくお口をあけてパクパクパクパク。息子の胃はこんなポテンシャルを秘めていたのかと驚くほど、突然にたくさん食べてくれました。やわらかな日差しの差し込む食卓でおじいちゃんとおばあちゃんに見守られながら、『あー』『うー!』と楽しそうにごはんを食べる息子。その光景のあたたかさに思わず胸が熱くなります。
家に帰るとやっぱりいつもどおり食べなくなって、ついガッカリときて苛立ってしまったり、その後反省して『余裕のないママでごめん』とくよくよしたり。
これなら食べやすいかしら!と、柔らかく茹でた小松菜を卵焼きに混ぜながら、『いま私すごい前向きに頑張ってるぞ』と、自分に酔ってウキウキしてみたり。
母親業はこころの休まるときがありません。