先輩パパとママの毎日コラム
札幌で長く続くえほんとおもちゃの専門店「ろばのこ」代表の藤田進さんは、子どもと大人のための月刊新聞の編集長も務めるバイタリティあふれるお父さん。今回は、まもなく3人目の父となる藤田さんの子育てがスタートしたときのこと、7年経った今のことをお届けします。
「妊娠したみたい」と妻が教えてくれたときに、「さて、僕はどう反応したらよいのだろう?」と戸惑ってしまった。そりゃ嬉しいに決まってる。でも、なんというか、どことなく寂しい気持ちにもなる。一瞬で頭の中にいろんなことが駆け巡る。そんな一言だ。
結婚してから4年、僕たちは2人で暮らしてきて、ずっと遠距離だったし、お互いのことを理解し合うことに必死で、まあ、今思い返すとギクシャクしてたことが多かった。いつも一緒にいて生活をすると、お互いに愛し合っていても、すれ違うこともたくさんある。
そんな2人の直線的な関係は、「妊娠したみたい」という妻の一言から、ガラッと変わった。2人の間に宿った小さな命が、間に不意に入り込んできて三角関係になって、もうしばらくの間は、元の2人の関係には後戻りができない。子育てという長い道のりが始まる。僕はまだその途上にあるし、とっても楽しんでいるけど、その道のりは、「妊娠したみたい」という衝撃の一言から始まった。
今となっては、子どもを授かったことは、2人の関係にとってまさに必要だったことがわかる。今、我が家には、小学1年生の男子、2才の女子がいる。そして今、妻は3人目を妊娠中。妻は、2ヵ月近くつわりに苦しんでほぼ寝込んで動けない。
妊娠が始まったときから、出産に至るまでの女性のなかに起こっている変化は、男性にとっては、神秘的すぎてまったく想像ができないし、どんな経験とてらし合わせても理解することができないのだと、僕は理解することを完全に諦めた。妻に「どういう感じ?」「どうしたらいい?」と聞いても、よくわからないし、できることも少ない。
仕事はちょうど繁忙期なのだが、妻は食事を作ることもできず、冬休みとコロナ禍で子どもたちは一日中家にいる。僕が帰らなければ、子どもたちは腹ぺこで不機嫌だし、妻は面倒を見ることもできない状態なので、けっこう冷や冷やする出来事が起こっている。つい先日は、娘が自分で散髪をしたようで、前髪がワイルドに刈り込まれていた(爆)。
ともかく、仕事をなんとか早めに切り上げて、いつもは分担している家事をできうる限り引き受ける。仕事から帰ってきても、朝と台所の様子が同じなんてことは気にしない。ちょびっとグラスにウィスキーを注いで、あれやこれやを酔いでごまかしつつ、ご機嫌に夕食を作り始める。
つわりは、終わりそうで終わりが見えず、ひと月たち、ふた月たち……。これ以上続くといずれ、僕も限界に達する。たとえ、妊娠初期を乗り越えたとしても、その先だって、何が待ち受けているのかわからない。そこで、僕は、冷蔵庫を新調した。それまでの我が家の冷蔵庫は110リットル。とても小さかったのだ。細々作るのが好きだから、このサイズで問題なかったのだが、さすがに、この状況では、それもままならない。計画的に献立を立てて、ともかく食料がある、作り置きがある状態を作ることにした。現在、作り置きレシピを学び始めたところだ。
思い返すと、1人目のときはどうだったのだろうか。ほんの7年前なのだが、遠い記憶のように感じるし、当時の僕の様子を、妻に聞くのも怖い(笑)。家族が増えるって、想像はできるけど、現実に起こることは想像を遥かに越えている。でも、あのときは、夫婦2人だけだったから、そう食事のことで悩むことはなかった気がする。
ともかく、1人目の妊娠から出産までは、妻も僕も初体験だし、そりゃもう戸惑いしかなく、必死すぎてあまり記憶もないくらい。ただ、1番鮮烈に覚えているのは、出産に立ち会って、息子の髪の毛が見えた瞬間。「あ、頭がみえた。もう少し!もう少しだよ!」と僕は妻に叫んだ。(妻は確か「うそー」って、髪の毛を触って確かめてた。)
2度しか経験していないが、命が生まれる瞬間というのは神秘的。3度目も立ち会えるのだろうか。またあの小さな赤ちゃんとの暮らしが始まるのが今から楽しみ。次回は、子どもが生まれた日の話と、子育てについて書いてみます。