先輩パパとママの毎日コラム

vol.63 今日も楽しく過ごします。大ちゃん元気です。「涙と感動のご対面」

北島洋子 2017/4/24

東京・調布市で夫とともに「手紙社」を営む北島洋子さんの、愛息子大ちゃんの 妊娠・出産・育児のこと。

逆子のため、帝王切開で産むことになりました。体にメスを入れるのは人生初めての体験。入院さえしたことがないのに。どれだけ切るのか、切った後どれだけ痛いのか、「帝王切開」「痛い」「いつまで」などとキーワード検索をしながら、体験談を読んでは、不安は募っていくばかり。どうせなら自然分娩の経験もしてみたかったし。

とはいえ、帝王切開の良いこともあって、手術日を決めてしまうので、いつ生まれるか、破水したらどうしよう、などという心配をしなくて良いこと。私の場合、手術日は出産予定日よりも2週間早かったため、それだけ早く我が子に会えること。できるだけそちらを考えて、不安を取り除くようにしました。

手術には、夫が立ち会ってくれることになりました。前々から看護師さんに「帝王切開に旦那さんが立ち会う場合、時々貧血を起こす人がいるけど、その心配がある人は立ち会わないように。看護師たちは構ってあげられないから」と冗談半分に言われており、夫にはくれぐれもかんばるようにと伝言を残して、いざ、手術室へ。

ベッドに横たわると天井には大きな照明があり、その銀色の縁が鏡のようにうっすらと室内の様子を映し出しています。「手術の様子が見えるのかな…」などとぼんやり考えながら、先生の言われるがままに横を向き、脊椎に麻酔の注射を何本も打たれ(これが痛かった)、そのうち半分意識が遠のいていきました。先生や助産師さんの声をぼんやりとした意識の中で聞きながら、そして、お腹の上で何かが起こっているのを感じながら時間が経過していきます。

やがて、「大きいよ!」「思いっきり押して!」などと慌ただしく動いている気配。そのうち、「旦那さんを呼んできて!」と助産師さんの声。いよいよ赤ちゃんが取り出される、その瞬間がやってくるようです。夫の顔を見たとたん、安心したのか私の目にはじわりと涙がこみ上げてきました。夫は私の手を握り、ほぼ同時に「オギャー」と大きな泣き声。「よかったー、よかったー」。涙が次々と溢れてきました。「よく頑張ったね」と、潤んだ声で言いながら私の頭を撫でる夫。あの瞬間を忘れることはないと思います。

「はい、大きな男の子ですよ!」と取り上げてすぐの息子を、助産師さんは私の胸のあたりまで持ち上げて、見せてくれました。しっとりと濡れたくしゃくしゃの顔。血がついたままの、あまりに儚く小さなからだ。それなのに、意識が遠のいたままの私の最初の感想は「金髪だ、、、」でした。

すーっと大きくて暖かな穴に吸い込まれるような心地よい安堵に包まれながら、手術は終了。横たわったまま担架に乗せられ、病室に戻りながら、助産師さんが言った「おめでとうございます」の一言に、心配していた全てが解き放たれた気がして、「ありがとうございます」と何度も言いながら、私は大泣きをしていました。

次に赤ちゃんに会ったのは、手術の翌日でした。初めて抱っこできた時は、嬉しくて、かわいくて、愛おしくて。何度も「生まれてきてくれてありがとうね」と言いました。こんな日がやって来るなんてーーー。その時、初めておっぱいを吸わせてみると、お互いまだ慣れないからか、きゅっ、きゅっと一生懸命吸い付いてきて、またそれが愛おしくて。

名前は「大詩(ダイシ)」と付けました。決めるにあたって最も大切にしていたのは、親しみやすい愛称で、呼びやすい名前にしたいということ。「だいちゃん」とか「けんちゃん」なんていいね。その上、友人からは「とにかく字画が大事」と説得され、「北島」という苗字と相性の良い名前を、ひたすら調べました。すると「北島大愛(ダイア)」が最高に素晴らしい運勢を持つ字画であることが判明したのです。でも、ちょっとイメージが違うぞと、「愛」と同じ画数の漢字に頭を廻らせていくと、夫が探しあてたのが「詩」という文字。私も夫も編集を生業としており、言葉を大切にして欲しいという思いからこの文字はピタリとハマりました。とはいえ、最終的には顔を見てから決めようということに。果たして「だいちゃん」という顔をしているだろうか。

夫は、生まれてすぐの息子の顔を見て確信したそうです。「だいちゃんだね。大詩でいいね」。元気いっぱいに、大きな声で泣く、大きな赤ちゃん。

君は今日からだいちゃんだよ。だいちゃん、どうぞよろしくね。

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PROFILE 北島洋子 東京出身の編集者。大手通信会社の広告宣伝部、ガーデン雑誌の副編集長を経て、2008年に夫とともに「手紙社」を立ち上げる。手仕事の作家を集めた「もみじ市」などのイベント企画や店舗運営に従事しながら、2016年9月に第一子を出産。獅子座でいぬ年でA型。
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