先輩パパとママの毎日コラムvol.13

from baby「人の数だけお産がある(前編)」

2016/6/1
from baby「人の数だけお産がある(前編)」 from baby「人の数だけお産がある(前編)」

ドイツ人の夫と愛娘・スーちゃんと3人で暮らす酒井咲帆さんによる、出産&子育てコラム。

妊娠検査薬で妊娠がわかってから急に思考がストップした。ここから先どうしたらいいの?と。信頼している友人に電話して、まずは女医さんがいる産婦人科へと促された。レストランのようなエントランスに迎えられ、2時間は待ったかなぁ。次から次へとお腹の大きな女性が検診に現れ、そして次から次へ退院していく姿をたった2時間で何人見たんだろう。きっと少子化とか嘘なんだろうと思えるような光景だった。

ようやく呼ばれて検査を受けたら妊娠が確定した。事前にその産婦人科で受けたアンケートに、どこで産むのか(当院か、里帰りか等)を書く欄があったので「わからない」と書いていたら、女医さんに産むことを確認された後「早く予約しないといっぱいになるから、それからだと産めなくなるよ」と予約を勧められた。その時私は「この病院ではどうやって産むんだろう?」と何も知らないことに怖くなり、「ちょっと考えてみます」と言って、母子手帳をもらうための妊娠届をもらえずに病院を出ることになった。

何より、お産の仕組みや方法って学んだことがあっただろうか。初めて子どもを産むとき、多様な産み方があることをすでに知っているかと言われれば、そんなこと知らない人の方が多いのではないか。せいぜい産婦人科を選ぶことくらいしか知らない。産婦人科も、妊娠して始めて行くことになる人が多いだろうし、産婦人科の選び方もどんなスタイルで産むかとか、料理が美味しいとか、そういうことしか情報として入ってこない。お産そのものについては、映画なんかで、妊婦が「ぎゃー」と騒ぎながら痛みをこらえて出産するシーンや、赤ちゃんは血まみれになっているようなイメージが根付いているようにも思う。

以前私はカメラマンとしてお産の撮影を依頼されたことがあり、助産院や自宅でのお産を撮影させてもらったことがあった。それ以外のお産はわからないけど、自分が撮影させてもらったお産は美しく私もそのようにして産みたいと願っていたので、産婦人科を出たあと、友人にも相談し、早速、助産師さんとの面談を受けることになった。

助産師さんにお会いして2時間、子どもを産むこととはどういうことなのか、生まれない可能性もあるということ、これからの生活で何が大事なのか、自然に産むためにどんな努力が必要か、何も知らない私に、とても丁寧に教えてくれたけど、最後まで私の連絡先は聞かれなかった。命を産むという重みを共有できるまでは安易にお産を受け入れられないというメッセージもいただいたように思う。また助産師さんは、どういう産み方がいいのかといった誘導もされず、ただ淡々と経験をお話され、静かに私の様子を伺っていた。私は戸惑いながらもその誠実な言葉を自分に落とし込むことで精一杯だった。どんな決断をしたとしても、まずは自分が責任を持つこと、お産はその上で成り立っているんだと感じた。

先生の連絡先だけお伺いして、3ヵ月後、検査が全て終わった後、ひとまず異常がなければ連絡してください、ということだった。それまでは大きな病院で検査を受けることになった。(つづく)

酒井咲帆

PROFILE

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写真家・ALBUS代表。2009年まで九州大学USI子どもプロジェクトの一員として「子どもの感性」を育める居場所づくりを行う。09年に写真屋『ALBUS(株式会社アルバス)』を福岡市中央区警固に設立し、写真現像・プリント・撮影・企画などを行いながら、写真屋とは何かを日々実践中。2015年にスー(娘)が誕生、ドイツ人の夫と3人暮らし。著書『いつかいた場所』(2013)/展覧会『神さまはどこ?』太宰府天満宮(2014)、『いつかいた場所』水戸芸術館(2011)、福岡県立美術館(2014)
http://www.albus.in/

(制作 * エチカ)

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