子育てエール!専門家による、ママパパ応援コラム

vol.60 妊娠中にやっていいことダメなことを産婦人科医が解説!~運動編~

天神尚子 2020/5/10

妊娠中、つわりが落ち着いてくると今度は食欲が増えてきたという方は多いようです。妊娠中は食事をバランスよくとることが大切ですが、体重が増えやすく、また体力づくりのためにも適度な運動も必要です。ただし、妊娠前とちがい注意する点もあります。妊娠中の運動について、やっていいこととダメなことをお伝えします。

妊娠中の運動、OKなタイミングは安定期以降!

妊婦さんは、一般的に妊娠16週目(妊娠5ヵ月目)頃から運動を開始するのが望ましいとされています。妊娠中は激しい運動は厳禁ですが、適度な運動は、妊婦さんの健康増進や肥満予防につながります。また、出産や育児への体力を養う面でも大切です。気分転換にもなるなど、精神面でのメリットもあるでしょう。ただし、妊娠の経過によって運動をしてよいかどうかは異なるので、必ずかかりつけの医師に相談をしてから始めてくださいね。

妊婦さんがやっていい運動

妊婦さんに適した運動を5つご紹介します。

1)マタニティスイミング

水の中では重力が軽減されるため、膝や腰などに負担をかけずに体を動かすことができます。また、泳ぐことは腹筋の強化や股関節をやわらかくすることにつながります。また、出産に必要な体力をつけるにももってこいです。

2)マタニティビクス

エアロビクスを妊婦さん向けにアレンジした運動です。音楽に合わせて体を動かすので、気持ちよく、気分転換にもなるでしょう。また、出産のときに必要となる筋肉を鍛えたり、関節をやわらかくしたりする動きが取り入れられています。筋力がつくだけでなく、持久力や心肺機能の向上、脂肪燃焼にも役立つでしょう。

3)マタニティウォーキング

妊婦さん向けの運動の中でもっとも手軽にスタートできるのがマタニティウォーキングです。ウォーキングは、ゆったり自分のペースで散策するお散歩とは違い、健康を目的として少し速歩きで歩く有酸素運動です。歩くときのフォームは背筋をのばし、腕をしっかり振り、歩幅を少し大きくします。フォームに気を付けてウォーキングをおこなうと、腹筋や背筋が鍛えられます。また、腰痛、むくみ予防などの効果もあります。

4)マタニティヨガ

マタニティヨガはヨガの中でも妊婦さんが無理なくできる動きになっている有酸素運動です。腹式呼吸でストレッチなどをおこない、血流をよくしたり筋肉をほぐしたりするものです。また、自律神経のバランスを調整したり、骨盤を整えたり、基礎代謝をアップさせて太りにくくするなどの効果があるといわれています。

5)妊婦体操

妊婦体操は、「正しい姿勢」「リラックス」「呼吸」をおもな要素とした、出産に備えた体づくりを目的とした対応です。軽い筋力トレーニング、ストレッチ、呼吸法などにより、運動不足の解消やからだを柔軟にする効果があります。

妊娠前もほとんど運動をしていなくて、これらの運動をするのが難しいという方もいるでしょう。そのような方はストレッチから始めてみるとよいかもしれません。普段、なにげなくおこなっているような首や肩を回す動作、両腕をあげて背伸びをする動作でも充分なストレッチ効果があります。その際は、筋肉の伸び縮みを意識しておこない、呼吸を止めずに自然な呼吸を続けながらおこなってください。また、痛みのない範囲で、ゆっくりのばしていくのもポイントです。できれば運動が習慣化できるとよいのではじめからあまり無理をしないようにしましょう。1日1分でもいいから思い立ったときにやる、というように気軽な気持ちで始めてみてくださいね。

*運動するときに注意してほしいこと
・運動をはじめるときはかかりつけの医師に相談して許可をもらう
・無理をせず、おなかの張りを感じたり気分が悪くなったりしたらすぐに中止する
・妊娠前から運動していた人でも、運動量は無理のない範囲に調整する
・様子を見ながら少しずつ量や回数を増やしていくようにする

妊婦さんがやってはいけないこと

妊婦さんが運動するときは、下記のとおりやってはいけないこともあります。

1)妊娠初期に運動を始めること

胎盤が完成しておらず不安定な時期のため、妊娠初期に運動を始めることはNGです。

2)自分の判断のみで運動を始めること

運動スタートは、必ず医師に相談してから始めましょう。マタニティスイミングは診断書が必要な場合もあるので通う施設に確認しておくとよいでしょう。

3)ホットヨガや筋力トレーニングなど

ホットヨガは高温多湿の環境でおこなわれるため、脱水症状のリスクや、床が汗などで滑りやすい、腹部を圧迫する動きは負担が大きいため避けてください。また、瞬間的に強い力を使う筋力トレーニングなどの無酸素運動は、妊婦さんに負担が大きいだけでなく、赤ちゃんに酸素が行き届かなくなるため厳禁です。

このほかにも、全力を使う競技性の高いスポーツ、腹部に圧迫や振動が加わるもの、急に動いたりジャンプしたりするような瞬発性の求められるもの、スケートなどの転びやすく外傷を受けやすいもの、サッカーやバスケットボールのような相手と接触するスポーツはどれも行わないようにしましょう。

さいごに

妊娠中は、気分転換と健康な体づくりや体力を備えるために適度な運動を取り入れることが大切です。運動の内容や量は医師に相談して、適切におこなう必要があります。運動することで体力がつくだけでなく、体重の増加もコントロールしやすくなるでしょう。運動が苦手な方は無理をせずに気持ちがいいと感じる程度のストレッチを取り入れたり、1日1分だけ運動したりするなど、工夫してみてくださいね。

おすすめ記事

パパがママの為に作る!おススメレシピ診断
妊婦さんにおすすめのマタニティヨガポーズ
お腹の赤ちゃんへ、やさしさのひと手間「水通し」、みんなやってる?
PROFILE 天神尚子 産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
カテゴリー:
キーワード:
トピック: