先輩パパとママの毎日コラムvol.600

父親、やらせていただくことになりました「初めての3人旅と一生もののプレゼント」

2024/4/2
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編集者の池田圭さんによるパパコラム。今回は奥様のおなかの中にいる娘さんも一緒の初親子3人旅のエピソードです。そこで出会ったという一生ものとはいったい?

私たち夫婦は旅行が共通の趣味の1つで、2人でいろいろな場所へ出かけてきました。

我が家の旅のスタイルは、ちょっと変わっています。まずは拠点にする街と旅の日数だけを決めて、泊まる宿や訪れる場所は旅行に出てから決めることが多いのです。こうすると、次の予定に縛られることなく、「ここ、いいな」と感じた場所にいられますし、いまいちピンとこない時は大きく移動することもできます。おすすめされた場所に足を延ばす余裕もできます。もちろん、出発前にいろいろ情報は調べて大まかな予定は立てますし、人気のお店や宿は予約をしていくこともありますが。

出発前に旅行プランをがっちり組むのが当たり前だった妻は、最初はこの旅のスタイルにとても不安がっていました。しかし、今では旅先で昼間は別行動なんてことも当たり前。私が宿で仕事をしているあいだに、妻はランチとお買い物なんて具合に、楽しく自分の時間を満喫しています。

私は昔からパソコンさえあればどこでも仕事ができたので、旅の日数も流動的。コロナ禍になる前から、リモートワークをしていた感じですね。

子どもが生まれて我が家の生活が大きく変わった部分といえば、こうした行き当たりばったりの旅には出かけなくなったことです。

たぶん、我が家の旅とは普段の生活にない刺激を探し求めに行くことが大きな要素だったと思うのですが、子育ては毎日新しい景色と経験の連続。子どもがいる生活は毎日十分刺激に溢れていて、わざわざ外に刺激を求める必要がなくなったからかなと感じます。

約1kmに渡って民宿や漆器店、食事処が立ち並ぶ奈良井宿は、日本最長の宿場だそうです。約1kmに渡って民宿や漆器店、食事処が立ち並ぶ奈良井宿は、日本最長の宿場だそうです。

ちなみに、出産前に最後に出かけたのは、長野県の松本市でした。まだ夏でもないのに暑い日が続いた時期で、自宅からそれほど遠くなくて涼しい場所に行こうと選んだ旅先です。

その時も何日か松本市内に滞在したのですが、「松本民藝館」という博物館で長年使い込まれた漆器を見ているうちに、近くに漆器の産地があったことを思い出し、松本から車で1時間ほどのところにある奈良井宿という土地を訪ねてみることになりました。

奈良井宿とは、古くは板橋から滋賀へと続く中山道の宿場として賑わった、木曽路の集落です。今でも、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような昔ながらの街並みを残しているため、時代劇の撮影などに使われることで有名な場所ですが、ここは木曽漆器の一大産地でもあるのです。

初めは自分たちの欲しい器を探していたのですが、自分の欲が満たされてくると視界が広くなってくるもの。街を練り歩くうちに、生まれてくる子どもにお食い初め用の漆器を探してみようと、旅の目的が変わってきました。2人での旅でしたが、もうおなかの子に「私の分も忘れないで!」と言われたように思います。

お食い初め用に作られた漆器セットもありましたが、なんだかどれも子どもっぽいということで、大きくなっても長く使えそうなシンプルで、子どもの手にも馴染みそうなサイズの漆器を探すことにしました。いろいろなお店を冷やかしたのですが、結局、奈良井宿ではピンとくるものに出会えず、隣駅にあたる木曽平沢の集落まで範囲を広げての大捜索です。

豆皿とお椀を購入。小さな匙もあったのですが、子育て中に紛失…。また足を運ぶ理由ができました。豆皿とお椀を購入。小さな匙もあったのですが、子育て中に紛失…。また足を運ぶ理由ができました。

木曽平沢では、なんとなく覗いた一軒の漆器店で店員さんを質問攻めにしていると、奥の工房からなんだ、なんだと職人さんが登場。漆器のあれこれを説明してもらいながら、いろいろな話をしました。1人で電車に乗れないほどの方向音痴だけど、漆器作りの腕には自信があると笑う人柄と、漆で爪まで真っ黒な指を見て、この人の作った器が欲しいなと決めました。

「もしなにかあれば、いつでも塗り直すよ」とのこと。まさに一生もののプレゼントになりました。

1才になった娘は、今、この器で一生懸命ご飯を食べる練習をしています。器を見るたびに、初めて3人で出かけたあの旅のことを思い出します。

池田圭

PROFILE

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編集者、ライター。40才を越えてから第一子を授かり、仕事そっちのけで溺愛する毎日を送る。共著に『無人地帯の遊び方』(グラフィック社)。編集を手掛けた書籍に『焚き火の本』『焚き火料理の本』(すべて山と溪谷社)など多数。

(制作 * エチカ)

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