子育てエール!専門家による、ママパパ応援コラムvol.51

早産や低出生体重出産を防ぎたい!産科医の天神先生が妊婦さんにアドバイス

2019/12/19
早産や低出生体重出産を防ぎたい!産科医の天神先生が... 早産や低出生体重出産を防ぎたい!産科医の天神先生が...

「私の歯は出産後に治療すればいいかな」と思っていませんか?実は最近の研究で、妊婦さんの虫歯や歯周病が、早産や低体重児出産の原因になる可能性があることが分かってきました。そこで今回は妊婦さんが虫歯や歯周病になりやすい理由や、胎児への影響、また妊娠中のお口のケアについてポイントをお話しします。

●妊婦さんが虫歯や歯周病になりやすい理由

妊娠により女性ホルモンが急激に増えることで虫歯菌や歯周病菌が増えたり、唾液の分泌に変化が生じて歯肉炎がおきやすくなったりと口腔環境が変化します。また、つわり中は歯磨きができなくなったりして口内ケアがおろそかになってしまいがち。そのため、妊婦さんは虫歯や歯周病にかかりやすいのです。

自分の歯を鏡で見る女性

●妊娠中の虫歯や歯周病が、早産や低出生体重児のリスクを高める

妊婦さんが歯周病にかかると、早産や低出生体重児を引き起こすリスクが高まると言われています。歯周病菌は腫れた歯ぐきから血管の中に侵入していって炎症が広がり、全身に影響を与えるのですが、妊婦さんの場合は歯周病によりプロスタグランジンという物質が作られてしまい、それが子宮の収縮を促してしまうのです。そのため、妊娠中のお口のケアは、赤ちゃんのためにもとても大切。また、赤ちゃんの歯の形成は妊娠中に始まりますので、妊娠中、妊婦健診を必ず受けるのと同じように歯科検診も必ず受けるようにしましょう。

赤ちゃんと女性

●妊娠中の歯医者さんでのレントゲンや麻酔は問題なし!

レントゲンですが、歯科の被ばく量はごくわずかなので母体も胎児も問題ありません。また麻酔も同じく可能です。歯医者さんで行う麻酔は局所麻酔といって薬の投与量が少ないので全身に移行するはごく微量。妊娠中の体や赤ちゃんに影響することはありません。

●歯医者さんを受診するときのポイント3つ

早産や低体重児出産のリスクを抑えるために、妊娠中に歯科検診や歯の治療を受けることが大切です。そこで、妊婦さんが歯医者さんを受診する際のポイントをまとめました。

歯科受診中の女性

1. なるべく妊娠16週以降に受診する
痛みがあったり腫れや出血がひどいなど、症状が気になれば早めに行き応急処置を施してもらった方がよいですが、特になければ安定期となる妊娠16週以降に受診しましょう。

2. 歯医者さんに「妊娠中」であることを伝える
歯医者さんは妊婦さんの治療について、細心の注意をはらってくださいます。お口の状態により、安定期に入ってからの治療がよいのか、出産後がよいのか、いったん応急処置で済ませておくのがよいのかなど、妊娠を考慮した治療を考えてくれるので妊娠中であることを伝えましょう。

3. ラクな姿勢で治療を受ける
特に妊娠後期(28週)以降は姿勢によって、仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群を起こすことがあるので姿勢には注意が必要です。お腹の大きい妊婦さんが仰向けに寝転ぶと、大きくなった子宮が大静脈を圧迫して下半身から心臓にもどる血液量が少なくなり、低血圧を起こすことがあるのです。斜めに寝転ぶなど、歯医者さんに相談してラクな姿勢をとらせてもらいましょう。

最後に

妊婦さんには、歯周病が赤ちゃんに影響を及ぼすリスクを怖がるのではなく、早産になりうる要因が明らかになり予防がしやすくなったと考えていただき、ぜひ歯医者さんを受診していただきたいなと思っています。まだあまり妊婦さんの歯科検診の重要性は知られていないと思いますので、これから出てくる新しい研究結果や報告などにも着目しつつ、私も妊婦さんにお話したり、もっと多くの方に広めていきたいと思っています!

天神尚子

PROFILE

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産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

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