今まで日記すらまともに書いたことがなかった私が、私なりに書き綴った一冊の小さなメモ帳の話をしようと思います。

妊娠発覚後、葉酸摂取量を計算するためにそのへんにあったメモ帳に食事量を書き始めました。つわりが始まると気持ち悪さを発散するために時々そこにかいたりしていて、それがそのまま継続して育児ノートになりました。

一番上の写真は、初めて息子と一緒に街に出かけた思い出の一枚。この日の事、ちゃんと書いてありました。

出産からの数ヵ月は昼も夜もないような毎日で、あの頃の１日の始まりは、朝起きた時じゃなくて、深夜０時に日付が変わったところからでした。常に寝不足だったし、前の日の出来事なんて覚えてられるわけがない。だから１日の終わりに、その日大変だったこと、不安なこと、嬉しかったこと、とにかく何でもいいから書きました。

私にとって育児ノートというのは、息子の成長記録であると同時に、初めての子育てで訳もわからず過ぎていく毎日の中、自分はこれをしたんだ、してるんだという自分自身の記録でもありました。おっぱいが足りているのか不安だったこと、次の健診で先生に聞きたいこと、私が今どんな気持ちなのかとか自分自身へ向けた「頑張れ」のメッセージとか…字にすることで気持ちの整理が付いて、頑張れていたような気がします。

自分へ向けた「大丈夫」という言葉。今読んでも胸がきゅーっとなる。

そんな中で一番楽しかったのは、その日の授乳回数とおしっこ・うんちの回数を数えて、大きくバーン！と書く瞬間。「今日も乗り切った！」という感じがして、あれは本当に爽快でした。

頻出ワード第１位は「寝ない」。fはfeed(授乳)wはwet(おしっこ)sはsolid(うんち)の意味。

久しぶりに私の育児ノート（のようなもの）をパラパラと読み返してみて、感動したこともくだらないこともツラいことも、なんでもかんでも素直に書いておいて良かったなって思います。もし書いてなかったら1000％記憶には残ってないような些細なことも、今になって振り返ると大切な記録になっていることもあるんです。

息子が寝返りをマスターして、初めてうつ伏せのままお昼寝をした日、私の記憶では心配だけど触ったら起きてしまいそうでハラハラ見守っていた、という感じでした。でもメモ帳には「すごいな〜。かっこいいな〜。」と書いてありました。そういえば、大人みたいに寝てる小さな息子の姿を見て、かっこいいって思ったんだよなあ。

生後３ヵ月頃に撮った写真。左下にメモ帳とペンが写っています。

もうひとつ、メモ帳には今も、長細い12枚の紙がはさんであります。そこには、授乳した時間、オムツを替えた時間、息子が寝た時間が全部書いてあります。とてつもなく面倒臭い作業のように見えますが、私にとってはすごく大切な作業でした。息子が産まれた日からずっとベッドの横にいつもメモ帳と一緒に置いてあって、枚数が増えていっても捨てずにまとめて束ねてありました。今まで何度も、この紙はさすがに捨ててもいいかな…と思ったりしましたが、なんとなく捨てられずにいます。

そういうわけで、これが私の育児ノートです。

お洒落からは程遠く、使いやすさの欠片もないような、ただのメモ帳と紙切れです。だけどこんなのだって、あの頃はちゃんと心の支えになっていたし、今となっては大切な大切な思い出になっています。

PROFILE

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アメリカ・オレゴン州で出産と子育てをスタート。現在はメイン州在住。サンフランシスコで写真を学んだ後、スタジオアシスタント、ブライダルカメラマンとして働く。
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(制作 * エチカ)