先輩パパとママの毎日コラムvol.348

愛するプニプニ「もうすぐ産まれる~出産編~」

2020/8/7
愛するプニプニ「もうすぐ産まれる~出産編~」 愛するプニプニ「もうすぐ産まれる~出産編~」

イラストレーターかみやかやこさんの子育てダイアリー。陣痛をこらえ、LDRで過ごして数時間。まだ産めない、まだ産めない。子宮口が全開になるまでの辛い時間を乗り越えると……自然分娩、初産、立ち会い出産の体験談。

どのくらいの時間をベッドの上で過ごしているのだろう。陣痛が何回きたのか、夫に何度励まされたのか。こんなに辛いが、まだ子宮口が10cmに達していないので、産んではいけない。もし、ここで堪えずに産んだら、私の体がバキバキのビリビリになり、相当悲惨なことになるので意地でも堪える。昔から、母に出産の痛みや厳しさは常々言われていて、どんなものかと思っていたが、こういう痛みとは……。割と早めに仕事も復帰したい願望もあったので、とにかく耐えた。崖っぷちギリギリを逆走しようとしても、なかなか前に進めない感じ。

産まれそうな赤ちゃんをおさえるママのイメージ

陣痛が起きていない時間に、頑固な便秘が治る時の便意にも似た感覚があった。助産師さんに聞くと「それは赤ちゃんだから、トイレに行くことは絶対ダメ」と言われた。それは恐ろしすぎる……この陣痛が起きて、子宮が収縮していることは、赤ちゃんにとっても相当辛い環境な訳で、閉所恐怖症の私がもし、狭い産道を通れと言われても後ずさりする。赤ちゃんすごいなぁ……私に似ず、ちゃんと前に進んでおくれ……そうこうしているうちに、呼吸が浅くなってきたので、酸素マスクがつけられる。

呼吸が浅くなってきたので、酸素マスクがつけられる

パァン!!!!!!!!はっきりと音が聞こえた。かなり大きい音だ。でも誰も動じない。と、同時に、股のあたりに生ぬるい水で濡れた感覚があった。破水したのだ。私の体の中で起きた音だったので、誰にも聞こえていない。誰も気づかない。息も絶え絶えに、夫に破水したことを伝える。「え!破水!?すみません!破水しました!!」夫が助産師さんに伝えると、現場が急に慌しくなる。実はこの時、隣部屋で先に産まれる予定のお産が進んでいたのだが、こちらのお産が急に進んだので、緊急事態になったらしい。「今から産む準備するので、もう少し頑張ってくださいね!」ベッドがロボットの変身のように分娩台へ変化した、らしい。私からは見えていない。「切りますね!麻酔しますよ!」会陰切開された。麻酔が効いているので痛くない。「ここまで頑張りましたね!これから産みますよ!はい!いきんで!」急展開。産める。たくさんシミュレーションした筋肉の使い方を必死に思い出し、全力でいきむ。死なないけど死ぬ気。人生一番の踏ん張り。明日はどうなってもいい。どう言っても伝わらないハイパーフルスロットル。「頑張って!」いつも茶化してくる夫が手を握り、真面目に応援してくれたのをはっきりと覚えている。私の呼吸が浅くなり、警告音が鳴る。「しっかり呼吸して!赤ちゃんが苦しいよ!」しっかり吸って、さらにいきむ。陣痛が痛すぎたので、産むのはもはや痛くない。

産まれた赤ちゃん

病院到着から4時間後の22時過ぎ。どぅるん。あ、出た。という生ぬるい感触(と同時に陣痛の痛みはなくなった)。3回ほどいきんだところで、娘が産まれた。助産師さんに手渡され、娘の名前を呼びながら、初めて抱く。私の胸の上でフニュフニュと、静かに、確かに生命があった。あの温かい時間は、一生忘れることはないだろう。

カンガルーケア後、娘は体重測定や検査に連れて行かれる。夫はそちらに同伴するので、私は一人、産後ケアが始まる。会陰切開の縫合、胎盤の処理、点滴。縫合は麻酔が効いているので、痛くない。先ほどまでの大騒ぎが嘘のように部屋は静かで、落ち着いている。嬉しかった。頑張ってよかった。娘も私も元気だ。そっとおなかを触ると、高級食パンの白い部分くらいに柔らかい。筋肉がない。よくあんな力が出たもんだ…また、産みたいなぁ…すぐにそう思えた。

産まれたての娘は真っ赤なお猿さんだが、本当に可愛い

娘も検査から戻り、ようやく落ち着き、家族3人で写真を撮り、実家に送ったりした。産後1時間以上時間が経っていた。病院到着から、バタバタしていて経過を連絡できていなかったので、家族から心配の連絡がたくさんきていた。産まれたての娘は真っ赤なお猿さんだが、本当に可愛い。綺麗で精巧な小さすぎる手。夫に似て、毛深いところも可愛い。産まれた瞬間から、仕草も存在も丸ごと愛くるしい。

ママ、パパ、娘それぞれが過ごす夜

初日は母子別部屋なので、娘は新生児室へ、私は車椅子で入院部屋へ。夫は眠そうに、そして幸せそうに家に帰って行った。きっと帰ってから、一人酒でも飲むのだろう。数時間後には初乳がある。私に赤ちゃんが産まれた。可愛い赤ちゃん。嬉しさと興奮と疲労で、気持ちよくスッと眠りに落ちた。

かみやかやこ

PROFILE

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多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。デザイナーを経て、イラストレーターとして独立。2018年に女の子、2021年に男の子を出産。愛情たっぷり注ぎながら、子育てを楽しんでいる。好きなものは、海、コーヒー、いい香り、植物、ドラマ、美容情報、美味しい食べ物、アイドル。
http://kamiyakayako.com/
https://www.instagram.com/kamiyakayako/

(制作 * エチカ)

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