先輩パパとママの毎日コラムvol.35

ハルちゃんと僕「離乳食」

2016/8/4
ハルちゃんと僕「離乳食」 ハルちゃんと僕「離乳食」

アムステルダムに暮らしながら写真家・文筆家として活動する小野博さんの、愛娘・ハルちゃんとの日々

ある日、近所の子どもの面倒をみることになりました。

その子は娘よりちょっとだけ年上なのですが、もう断乳して離乳食だけでやっているそうで、子どもを連れて来た時にお母さんがお弁当を持ってきました。「お昼になったらお弁当箱を目の前に置いてあげてくださいね。勝手に子どもが選んで食べますから。で、食べなくなったらしまってください」と言われた。お弁当を開けるとリンゴときゅうり、グリンピースとニンジンが入っていました。今まで離乳食といえば、ピューレ状のものをスプーンであげると思っていたのですが、この離乳食にどこか風通りのよさを感じました。

お母さんに聞いてみると、それはイギリスで流行っている「BABY LED WEANING」という離乳食のやり方をやっているそうです。今まで自分の飲みたいだけおっぱいを飲んでいた赤ちゃんに、離乳食になっていきなりスプーンを突っ込んで食べさせるのではなくて、赤ちゃんの主体にまかせてみましょうというメソッドのようです。手でつかめる食べ物を並べて、赤ちゃんが自分の好きなものを選んで、食べたいだけ食べてもらうということ。

なるほど。

さっそく「BABY LED WEANING」式で離乳食のデビューをさせることにしました。しばらくは1日1回1品のみ離乳食を与えることにしました。まずは食べ物の味に親しみ、誤飲やアレルギーがないかどうかを見ていくのが目的です。娘を椅子に座らせてから、蒸して柔らかくなったニンジンを置きました。

しばらく娘はポカンとしていましたが、ある瞬間からニンジンをじっと眺め始めました。すると、おもむろにニンジンをつかんで、グチュグチュと握り潰し始めました。そして指についたニンジンを、なんの躊躇もなくパクッと口に入れました。

食べた!!

しばらく口の中でニンジンをモグモグし、そして別の指についたニンジンもパクッと口に入れました。

また食べた!!

そのあとはニンジンと遊ぶだけで、口に入れることはなかったのですが、娘の初離乳食の様子を見ながらお父さんとお母さんは感動しておりました。翌日から蒸したブロッコリーやそら豆、ローストしたズッキーニ、バナナ、りんご、みかん、ほうれん草、きゅうり、トマトを与えました。そのどれもしっかり食べるようになっていきました。そして徐々に大人の食べているものをそのままあげるようになり、2ヵ月くらいで離乳食期間は終了とあいなりました。

顔のあちこちにごはんをつけながら、離乳食タイム

それにしても最初に口にした食べ物がニンジンだったからなのか、今でもニンジンが大好物です。

この間こんな出来事がありました。とっても天気のいい日曜日でした。娘は少し風邪気味でしたが、一緒に海を見にゆくことにしました。海岸でたっぷり砂遊びをして、家に帰るころには娘はグッタリしていました。昼寝をさせていると、娘は泣きながら起きました。ベットに行って娘を抱っこするとものすごい熱です。大変!!と動揺している僕に向かって、娘は蚊の泣くような声で

「ニンジン と オチャ」と言ってきました。

急いで皮を剥いたニンジンと、麦茶を娘に渡すと、ものすごい勢いでゴリゴリゴリゴリゴリとニンジンに噛り付き、口がニンジンで一杯になると麦茶で一気に流し込みました。それを数回繰り返して、あっという間にニンジンを食べきってしまいました。そして娘は満足したのか「ネンネ」と呟き、数秒後には腕の中で寝息を立て始めました。するとみるみる娘の熱が引いていくのがわかりました。

すごい、熱冷ましニンジン!?

30分くらいして娘が目を覚ますとさっきとは全く別人のようなさっぱりした顔をしていました。あら「元気なったね」と言うと、「元気になっちゃった」と娘が笑いながら答えました。あんまりたくましくて胸がキュンとしました。娘がニンジンをほおばっている顔を見て、食べるってのは生きることそのものなんだなってあらためて思ったりしました。

あと娘が早飯なのはやっぱり僕の影響なのでしょう。「娘の振り見て我が振り直せ」。僕もゆっくりご飯を食べなきゃなとしみじみ思いました。

そんな離乳食の話でした。

おくちいっぱいのスパゲッティ
小野博

PROFILE

小野博このライターの記事一覧

写真家・文筆家。2002年よりアムステルダム在住。著作に世界を旅した記録を綴ったエッセイ集『Line on the Earth ライン・オン・ジ・アース』(エディマン)、日本とアムステルダムでの暮らしを綴った『世界は小さな祝祭であふれている』(モ・クシュラ)など。

(制作 * エチカ)

RELATED 関連情報はこちらから

RANKING アクセスが多い記事をランキング形式でご紹介。

妊娠・出産・育児は、
わからないことがいっぱい。
悩み過ぎず、自分のペースで
行える育児のカタチを紹介していきます。
コモドライフとは?