イラストレーターのオガワナホさんの子育てにまつわるいろんな記録。今回は離乳食をはじめたばかりの頃のお話です。
生後6ヵ月が過ぎ、少し涼しくなってきた頃に、ようやく離乳食をはじめました。離乳食作りは想像するだけでなんだか大変そう。10倍粥を作ったり、野菜をすり潰したりと大人用の料理より手間がかかりそうで、めんどうくさがりの私はなかなかはじめられなかったのです。勝手に苦手意識を持っていた10倍粥は先輩ママに教わって米粉と水を煮込んで作ってみました。びっくりするほど簡単で拍子抜け。
どの離乳食本にも最初はひとさじから、と書いてあったけれど、はじめてのお粥をひとくちあげたら……「は!?これはなんですか!?」とびっくりした顔をして「もっと味わいたい!」と口に入れたスプーンを離しませんでした。ミルクと母乳の味しか知らない小さい人間が、ただのうすーい10倍粥にこんなにも感激するとは!世の中にはもっとおいしいものがあるぞ、おかーさんが、もっとおいしいものをたくさん食べさせてあげるからね、と誓うのでした。
お粥に感動する姿があまりにも初々しく嬉しそうだったのをみて、ついつい3口くらいあげてしまいました。が、夜に便秘気味に。やはりまずはひとさじから少しずつ進めていくのがよさそうです(ママ友ラインで便秘解消にはバウンサーにのせるとよいとアドバイスをもらい、実践。効果抜群ですっきり解消されました!)。混乱したのは「ひとさじ」の大きさ。調理用の小さじ?子ども用スプーン?どのスプーンのひとさじ?!調べても詳しく書いていないことが多くて困りました。
実際に離乳食をはじめてみると、人生はじめて口にするものをどんな顔をして食べてくれるかとても興味深くて、あんなにめんどうくさがっていたのがウソのように離乳食作りが楽しくなりました。夫も喜んで離乳食をあげる係をやっていましたが、あまりに集中しすぎてしまい、自分も食べているかのように、一緒に口をもぐもぐ。何度やってもやはり一緒にもぐついてしまいます。
離乳食のアプリをダウンロードして月齢によって食べるべき食品、まだ食べてはいけない食品などを確認しました。食べた食材をチェックして、感想なども記入。ゲーム感覚で進められるし、調理のしかたや食材についても教えてもらえて便利でした。
離乳食をはじめてしばらくした頃に保育園に行きはじめました。噂には聞いていたけど、まあ本当によくもまあこんなに!と唸ってしまうほど、みごとに体調を崩し、RSウィルス、胃腸炎と世の中の流行を敏感すぎるほど追いかけていきます。どうも離乳食をべーっと吐き出すなと思っていたら、体調不良だったことも。しばらくミルクと母乳に逆戻りなんてことの繰り返し。離乳食はなかなか進まず、ちょっと不安になることもありました。
それでもなんとかマイペースに野菜、白身魚、お豆腐など順調に喜んで食べ進めていたので、お肉にも挑戦。ささみをゆで、片栗粉でトロミをつけたものを食べてもらおうと思ったのですが、吐き出してばっかり。その度にわたしはしょんぼりし、調理方法などを変えてみたりしても、やっぱりべーっと吐き出します。「ささみーささみー」とささみとの「格闘」と書きたくなるくらいわたしの頭の中はささみでいっぱいに。
そんな中、先輩ママ友に話したら、「ささみってあんまりおいしくないし、わたしもすきじゃないです。無理してあげなくてもいいんじゃないですか?」と言われ、はっとしました。たしかにわたしもそこまで好きじゃない!今思えば、なぜあんなにもささみに執着していたのか謎です。2才になった今もあまりお肉が得意ではないのは、ささみばかり食べさせてられていた苦い記憶なのではないかと思うことがあります。むすめよ、ごめん。
好きではないものを口にしたときのしぶい顔がなんともいえず、好き嫌いはすぐにわかります。素直に顔に出るタイプのようです。ある日のこと、いつもよりちょっと時間をかけて豆乳ほうれん草うどんを作ってみました。母渾身の作だったので「おいしいよー!」とノリノリであげてみたら、一口でみるみるしぶい顔になり、すぐにぶーっっと勢いよく吹き出すではないですか。いつもはほうれん草もうどんも好きなのに!あきらめずにもう一口あげてみても、同じ結果で涙。緑の液体が散乱する机、床を半ベソでふきながら、シンプルなだしのうどんを作り直すことになりました。こんなことの繰り返しだった記憶がありますが、基本的には食べることが大好きだったので、あまり悩まずにゆるーくやってこれた気がします。
ほっぺたをツンツンする「おいしい」のベビーサインを覚えてもらいたかったのですが、なぜか「頭をぽんぽん」たたくのが「おいしい」の合図になりました。好きなものを食べると高速で頭ぽんぽんを連発するので笑ってしまいます。かなりのオリジナルスタイルです。「おなかがへった」のサインも「頭をぽんぽん」で表現し、朝起きてわたしと目が合うと、頭をぽんぽんしてアピールしてきます。
両手の指先をすぼめてトントンと触れ合わせる「もっと!」のサインも覚え、気に入った食べ物には高速「もっと」と頭をぽんぽんのコンボ。とても忙しい!そのあとおなかがいっぱいになったら両手をあわせてぺこっと「ごちそうさま」ポーズ。食を通じて、コミュニケーションがとれている気がして幸せな時間でした。
PROFILE
オガワナホこのライターの記事一覧
日本、アメリカ、台湾、香港など国内外で活躍中のイラストレーター。書籍や雑誌、文具などのグッズのほか絵本も手掛ける。ご主人・娘さん・愛犬と4人でのんびり東京暮らし。
www.naho.com
(制作 * エチカ)