【小児科医が解説】赤ちゃんの風邪で病院を受診する目安は?小児科と耳鼻科どっちがいい?
赤ちゃんが風邪をひくと「病院へ行ったほうがいいのかな?」「小児科、耳鼻科のどっち?」などと心配になったり迷ったりするママやパパは多いと思います。 そこで、赤ちゃんの風邪について、症状と原因、また病院を受診する目安を、石戸谷小児科の石戸谷院長に伺いました。小児科と耳鼻科で迷ったときの判断ポイントも参考にしてくださいね。
赤ちゃんが風邪をひいたときの主な症状と原因
赤ちゃんが風邪をひいたときの症状には、発熱、咳、鼻水・鼻づまりの主に3つがあります。風邪には特効薬がなく、自分の治癒力で治すのが基本。症状が出るのはウイルスや細菌とたたかって自分で治そうとしている証拠です。
<発熱>
発熱しているかの目安は「平熱より1度上昇しているかどうか」。また、38度以上の場合も発熱とされることが一般的です。なお、赤ちゃんはもともと平熱が大人に比べ高く、37度台の場合もあります。普段から平熱を確認しておくと良いですね。
また、赤ちゃんは体温の調節機能が未熟のため、環境の変化に左右されやすいという特徴があります。そのため、室温が高いときや厚着をさせすぎているときなどに一時的に体温が高くなることも。元気であれば、室温や衣類を調整し、時間をおいてから測り直してみましょう。
<咳>
咳は、気管支の粘膜に入ったウイルスや細菌などを追い出したり、痰を出しやすくしたりするために出るからだの反応です。喉の乾燥を防いで痰が出しやすくなるよう、お部屋の加湿をしたり、こまめに水分を与えたりすると良いですね。風邪であれば数日でおさまることが多いでしょう。
また、「コンコン」「ゼーゼ―」など咳にもいろいろな種類があります。どんな咳をしているか、赤ちゃんが苦しそうにしていないか確認しましょう。
<鼻水、鼻づまり>
鼻水には大きくわけて2種類あります。ひとつは、ウイルスや細菌が鼻に入って、ウイルスたちを外に出そうとするために出る鼻水。もうひとつは、ホコリや花粉などが鼻に入った刺激でアレルギー反応として出る鼻水です。
また、季節の変わり目などに気温の変化が原因で鼻水が出たり、風邪の引き始めでくしゃみが出たり、副鼻腔炎になりかけて鼻づまりになったりします。
病院を受診するかどうかの目安
生後3ヵ月未満の場合、治療が必要な細菌感染症の可能性も考えられるため、発熱があったら原則として病院を受診しましょう。生後3ヵ月以上の赤ちゃんは、症状がひどくなく元気でおっぱいやミルクが飲めているようであれば問題ないことが多いので2日ほど様子を見て判断します。
基本的には咳がひどい、息苦しそう、鼻が詰まっておっぱいやミルクが飲みにくい、食欲がない、眠りにくい、何をしても機嫌が悪い、などのときは病院を受診する必要があります。
症状別にさらに具体的にみていきましょう。
<発熱>
*3ヵ月未満の赤ちゃん
抗体が少なく重症化しやすいことなどから、まれに敗血症や細菌性髄膜炎などの重篤な感染症にかかることがあります。機嫌がよくおっぱいやミルクが飲めていても発熱したらすぐに受診してください。
*生後3ヵ月以上の赤ちゃん
発熱があってもおっぱいやミルクがよく飲めていて、機嫌がよければ家庭で様子を見てみましょう。熱が3日以上続いている、食欲がない、下痢やおう吐や咳の症状がある、何をしても機嫌が悪いときなどは病院を受診してください。
<咳>
*痰がからんでいない乾いた「コンコン」する咳
風邪の引き始めであることが多いです。赤ちゃんのからだを休める、部屋の湿度を高めるなどして様子をみて良いでしょう。
*痰がからんだ「ゼロゼロ」「ゴホンゴホン」する咳
風邪や治りかけの状態のほか、急性気管支炎なども考えられるので早めに病院を受診してください。
*「ゼ―ゼ―」「ケンケン」などの咳や激しい咳
風邪やインフルエンザの治りかけの頃であるほか、まれに喉の奥が炎症を起こして腫れてしまっていることもあります。気管支喘息、気管支炎、肺炎、急性喉頭炎などいろいろな可能性があるので早めに病院を受診しましょう。
<鼻水、鼻づまり>
*サラサラした鼻水や透明で粘り気のある鼻水
風邪の引き始めや鼻に入ってきたホコリなどを洗いだそうとしていると考えられます。赤ちゃんがホコリを吸いこまないようにこまめに掃除をしたり、花粉が付いていると思われる衣類やカーテンなどを洗濯したりして様子を見ましょう。
*鼻水だけでなくくしゃみや発熱もある場合
風邪が進行しているとみられます。また、鼻水に血が混じっている場合などは炎症が起きている可能性が。これらの症状のときは早めに病院を受診してください。
*緑色の鼻水
風邪が治りかけているときに起こりますが、粘り気のある鼻水は鼻づまりを起こしやすく哺乳がしづらかったり呼吸が苦しくなったりします。鼻水吸引器などで吸い取ってあげましょう。
また、副鼻腔炎になりかけている可能性もあるので耳鼻科で診てもらうと安心です。
小児科と耳鼻科、どっちに行けばいい?
鼻水だけでなく、発熱がある、咳がひどいなどの場合は総合的に診る小児科を、鼻水のみのときや、鼻水を吸引してほしいときはのどや鼻の専門家である耳鼻科を受診するのがよいでしょう。
小児科では、胸やおなかの音を聴く、直接からだを触る、血液検査などで全身の症状に対して診察をします。鼻の奥や耳の奥などまで詳しく診ること、鼻水を吸引することはできません。
耳鼻科は、のど、耳、鼻などの専門家であり、内視鏡などの専門器具で耳や喉の奥も確認できます。風邪をひいた後に中耳炎や副鼻腔炎を併発したり、繰り返したりする場合がありますが、そのような場合は耳鼻科が適しています。
それでもどちらを受診するか迷うことがあるかもしれません。そのときはまずは小児科で全身を確認してもらって相談しましょう。
まとめ
赤ちゃんは自分の治癒力で風邪を治していきます。そうやって少しずつ免疫をつけ、からだが強くなっていくのです。赤ちゃんが風邪をひいたらしっかり休める環境を整えてあげましょう。
気になる症状がみられるときや判断に迷うときなどは病院を受診して相談してくださいね。
PROFILE
石戸谷尚子このライターの記事一覧
小児科 | 石戸谷小児科 院長
医師、医学博士。1981年徳島大学医学部を卒業後、東京慈恵会医科大学小児科入局、都立母子保健院及び慈恵医大付属第3病院勤務を経て1995年現職に。日本小児科学会認定 小児科専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医、日本血液学会認定 血液専門医。