適度な運動は太りすぎを予防して気分転換にもなり、安産にもつながります。さらに腰痛や冷えの予防・軽減にもなるなどメリットがたくさん。でも、マタニティヨガやマタニティエアロビクスなどは、レッスンに通う必要があることが多く、妊婦さんの状況によっては始めづらく感じることも。そこで、自宅でも簡単にできるマタニティストレッチを、一児のママであり、「助産師サロン」を運営する助産師の高杉絵理さんに教えてもらいました。
マタニティヨガとは違う?マタニティストレッチとは?
マタニティストレッチとは、無理なく体を動かし、妊婦の体に負担なくできるものです。マタニティヨガなどと違い、経験者でなくても誰でも気軽に行うことができます。カロリー消費は大きくありませんが、筋肉の柔軟性を上げることで可動域を広げ、血行が良くなり、基礎代謝の向上が見込まれます。
妊娠中は、お腹が大きくなることで上体が反りやすくなったり、出産に向けて骨盤周囲の靭帯が緩んだり、運動不足により筋力が低下することなどが原因で腰痛も起こりやすくなります。マタニティストレッチで定期的に体を動かし、筋力を維持することで腰痛予防にもなります。また、血行が良くなることでむくみや肩こり、背中の痛みなどのマイナートラブルの予防にもなるでしょう。
妊娠中はこれまで通りの生活ができず、制約されることも多くストレスフルなこともあります。とくに妊娠後期はホルモンの影響もあり、心身ともに不調を感じやすく、出産を前に不安な気持ちになることもあると思います。そんな中で、リラックスできる音楽をかけたり、好きなアロマをたいたりしながら、マタニティストレッチで体を動かすことによって、心身ともにリフレッシュできるといいですね。
自宅で取り入れやすいマタニティストレッチ
お腹が大きくなっても安全に座ってできるストレッチを紹介します。ラクにあぐらをかいて座りましょう。あぐらをかくのが難しければ、膝を曲げた状態でも大丈夫です。
背中のストレッチ
背中周りをストレッチすることで上半身の血行が良くなり、妊娠後期に起きやすい背中の痛みや肩こりなどのマイナートラブルを予防することに役立ちます。また、腰痛予防にも効果的です。
1.両手を胸の前で組みます。息を吐きながら、胸の前で大きなボールを抱えるようにして、おへそを見ながら背中を丸めます。そのまま深呼吸。息を吸いながら手を胸の前に戻し、視線も前に戻します。
2.今度は、息を吐きながら右下に大きなボールを抱えるようにおへそを見ながら背中を丸めます。そのまま深呼吸。息を吸いながら元に戻ります。
3.同じように左下に、次に右上に、左上に、と行います。最後にもう一度前方に行いましょう。
太もものストレッチ
腰痛が強い方は、太ももの前部分が縮こまっている場合が多いようです。太ももの前部分を伸ばすことで腰痛予防になります。妊娠中、産後と手軽にできるストレッチなので覚えておくと便利ですよ。
1.あぐらの姿勢から、横座りの姿勢になります。横座りとは、足を左右どちらかにくずして出す座り方です。横座りになった方の足首を持ち、太ももを後ろに引きます。このとき、反り腰にならないように、体が横に倒れないように注意します。太ももの前部分が気持ちよく伸びていることを感じて深呼吸を繰り返します。
2. 次は、反対向きに横座りになります。同じように太ももの前部分を気持ちよく伸ばしましょう。必ず、呼吸は止めずに、リラックスして行いましょう。
脇腹のストレッチ
普段縮こまっている脇腹を伸ばすことで、腰痛予防や腹筋を鍛えることにもつながります。
1.あぐらの姿勢で両手を楽に肩の下に下ろします。息を吸いながら、左手を上げます。右手を少し遠くに伸ばし、そのまま、軽く右に倒します。左の脇腹が伸びていれば大丈夫なので、少し倒れるだけでも十分です。右手の肩の力は抜き、左のお尻が浮かないように左のおしりは地面に押し付けるようなイメージです。そのまま、数回深呼吸。息を吐きながら元に戻ります。
2.同じように反対側も行いましょう。
股関節のストレッチ
股関節をやわらかくし、骨盤矯正にも効果があります。股関節がやわらかいとお産がスムーズに進みやすいこともあります。また、産後早期から手軽に骨盤矯正ができるので、産後のママにもおすすめですよ。
1.両足を肩幅程度に広げて伸ばして座り、両手を体の後ろの床につけます。両膝を立てて左右にゆっくり倒しましょう。息を吐きながら倒し、吸いながら元に戻します。ゆっくり呼吸をしながら続けましょう。少し倒れるだけでも十分。体がよじれないように、おへそは前を向いたまま、おしりも浮かないように注意しましょう。
マタニティストレッチをするときの注意点
マタニティストレッチは、流産等のリスクが低くなる、妊娠5ヵ月以降の安定期に始めましょう。流・早産の恐れがある人や多胎妊娠の人、前置胎盤などリスクの高い人はNGです。妊娠経過によっては運動を控えたほうがいい場合もあるので、主治医に確認してから始めると安心です。
マタニティストレッチを行うのは、体調が良いときにしましょう。入浴後や午前中がおすすめです。マタニティストレッチの最中にお腹が張ったり(お腹が固くなる、きゅーっと収縮する感じがある、痛みを伴うなど)、不調を感じたりするときはすぐにやめましょう。
まとめ
マタニティストレッチは、おふろ上がりや、朝のリラックスタイムなどに無理なく続けることで心身のリフレッシュを図り、体重増加や腰痛予防、妊娠中のマイナートラブルの解消などに効果的です。 マタニティストレッチを続けることがストレスにならないように、体調の良いときに気軽に行えるといいですね。
PROFILE
高杉絵理このライターの記事一覧
看護師、助産師、保健師の資格を取得。総合周産期母子医療センターの産科やNICU、産科クリニックで経験を積む。現在は世田谷区の保健センターで妊婦さんやママたちの相談業務に携わる。助産師にオンラインで相談できる「助産師サロン」も運営。自身も1児の母として育児に奮闘中。 オンライン助産師サービス「助産師サロン」