ぐに。ぽこっ。とことこっ！
安定期に入ってしばらくすると胎動を感じるようになりました。最初は微かな感覚だったけれど、次第にはっきりとわかるように。「ここにいるよ！」っていう胎動を感じるたびに、安心します。

６ヵ月の健診の超音波では、赤ちゃんが男の子だとひとめでわかりました。その日は夫の誕生日だったので、プレゼントみたいに報告したのを覚えています。夫もすでにメロメロな様子。あだ名をつけて、いつも２人でおなかに呼びかけていました。

７ヵ月、８ヵ月…赤ちゃんの成長と共に、おなかもどんどんまあるくなっていきます。このころ、わたしの中で＜創作意欲＞が芽生えてきました。

「今の気持ちを閉じ込めた本を作ろう！」

わたしはミニブック作りが好きで、産前にどうしても新作を作っておきたいと思い、コツコツと作業を始めました。テーマは「わたしの小さな宝もの」。自分が好きなものを拾い集め、紡いでゆく編集作業は巣作りのようでした。文章を書いたり、イラストを描いたり、デザインしたり…。

この「自分の好きなことを夢中でする」時間がとても良かったです。「おかあさんて、こういう人なんだよ。」という気持ちを込めて。ものづくりにわくわくする心は、母親になってもずっと持ち続けていきたいなと思いました。

出産準備も少しずつ進めていきます。ベビーベッドや、実用的なものはもちろんなのですがベッドキャノピーなんていう、夢みがちアイテム（？）やおしゃれな刺繍柄のスリングを買って楽しんでいました。ベビーグッズはかわいいものがたくさんあり、ときめきです。今まで苦手だったハーブティーを飲んでみようかなぁと思えたり、赤ちゃんのアロマの本を買ってみたりと、興味の幅もぐんと広がりました。

いつの間にか季節は、冬から春へ。９ヵ月の大きなおなかを抱えて、やさしい春風の中のウォーキング。仕事柄、机に座りっぱなしのことが多かったので、体力づくりのためにウォーキングだけは頑張っていました。ずしり…というおなかの重みで、腰がピンチ…！なんてこともあったけれど、このころが１番、元気いっぱいだった気がします。胎動も力強くなりました。

桜が咲くころには家族や友人と、お花見。たくさん笑い合って、心がほころぶしあわせな時間。赤ちゃんが生まれたらきっと、生活は一変するに違いない。

好きなことはできるのかな。仕事も続けられるのだろうか。そんな気持ちも全部「春」が優しく包み込んでくれた気がします。

５月。まぶしい光が満ちる、新緑色の季節になりました。長かった10ヵ月の妊婦生活もついに臨月！１年間連載していた漫画も、ちょうど最終回を納品し、タイミング抜群。コツコツ作ってきたミニブックも完成。赤ちゃんの名前も決まりました。あとは出産に挑むだけ…！

妊娠期間中は、ブルーになったりマイナートラブルに泣いたりした日も、もちろんありました。その度に弱気になっていたけれど「守るべきものがあるから、強く生きるしかない」という心がいつの間にか育っていたようです。いつも隣で支えてくれていた夫に感謝の手紙も書きました。

はちきれるほど膨らんでいて惑星みたいなおなか。39週ともなるとおなかが下がってきて、いよいよという感じで常にドキドキです。ここまで来たら、何も気にせずあと少しの自由を思いっきり楽しもう！と、行きたいところや食べたいものを、ビンゴカードをつぶすように楽しみました。ホテルバイキング（同じく臨月の友人と）、大好きなラーメン屋、ブータン料理、もんじゃ焼き、コリアンタウンで焼肉…！我ながらどうかしているほど、アクティブなグルメまつりでした。思い残すこと、なし…という感じで、とっても楽しかったなぁ。

予定日３日前には金環日食を見ました。きれいなリングが浮かぶ不思議な空を観測メガネをかけて見上げます。パワーが満ちているような感じに包まれながら「おーい、いつ生まれてもいいよ」なんておなかに話しかけたのを覚えています。我が子に会えるまであと少し。楽しみと不安で、ぐるぐるです。

そしてついに、そのときがやってきたのです。

PROFILE

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イラストレーター。カメラマンの夫、小学生の兄妹と4人暮らし。インスタグラムでは子育てにまつわるイラストエッセイを更新。サリー・M・ローズマリーという名前で魔女修行エッセイも綴っている。
https://www.instagram.com/nonohanadesign

(制作 * エチカ)