たまひよディレクター米谷が出会ったモノ・コト・ヒト。vol.5

いつも笑顔の鈴木あきえちゃんがママになって泣いた日のこと。

2019/7/29
いつも笑顔の鈴木あきえちゃんがママになって泣いた日... いつも笑顔の鈴木あきえちゃんがママになって泣いた日...

大人(親)になっても、好きなものを好きでいるって、いいと思いませんか?プレママや育児中のママにとってバイブル的雑誌の『たまごクラブ』、『ひよこクラブ』。その両誌のディレクターを務める米谷明子が、今のママ&パパが興味あるモノやコト、ヒトに会いに行く連載。雑誌では紹介しきれなかった気になるママやパパに、あれこれ質問をします!

米谷明子プロフィール画像 米谷明子 Yoneya Akiko
『たまごクラブ』『ひよこクラブ』雑誌ディレクター、『妊活たまごクラブ』編集長


マタニティ雑誌、ベビー雑誌の編集を長年やってきた、エディター・ディレクターの米谷明子です。この連載では私自身がセレクトした、子育て中にちょっとおしゃれでカッコよくて、魅力的なヒトをご紹介していきます。

今回のゲストは、お茶の間に元気を届けているタレントの鈴木あきえさんです。ビッグスマイルが印象的ですが、実は意外にも元々人見知りで、笑顔が苦手な性格だったのだとか?53時間にも及んだ壮絶な出産体験、さらには忙しいご主人にいかにして育児参加してもらったかなど、話題はどんどん広がり…。

【鈴木あきえさんとは?】1987年生まれ。2004年に芸能界デビュー。2007年に『王様のブランチ』のリポーターとなり、同番組のコーナー『買い物の達人』で人気を博す。2018年9月に第一子男子を出産。現在は『すくすく子育て』(NHK Eテレ)の司会、『なな→きゅう』(文化放送)の金曜パーソナリティなどを担当する。著書に『誰とでも3分でうちとける ほんの少しのコツ』(かんき出版)がある。

<YONE’s QUESTION>

妊娠中に『たまごクラブ』の表紙で登場していただいて以来、約1年ぶりにお会いしました。あきえちゃんの笑顔を見ると、思わずこちらも笑顔になって元気が出てくる。それが魅力の彼女ですが、ママになってからつらくなって涙を流すことはあったのかな?笑顔が消えて「泣いた」日はあったのかな?なかなか他では聞くことない角度から「笑顔」の秘密に迫ろうと思いました。

■「今朝、何食べた?」みんな、話しかけられ待ちなの?

米谷
妊婦さんの時に、たまごクラブの表紙に出ていただいて以来ですね。テレビでも、そして実際にお会いしてもいつも笑顔で元気。子どもの頃からそうだったのですか?

鈴木
私、もともとは人見知りでした。子どもの頃から家族の前ではおちゃらけたりするのですが、外では大人しい。高校3年の時に芸能の仕事を始めましたが、初めて会う大人にどう接したらいいかわからなくて。当時のマネージャーの後ろにずーっと隠れていました(笑)。

米谷
今とは180度違いますね。

鈴木
19才から出演していた『王様のブランチ』でも、初めてお会いするゲストと何を話していいかわからなくて、何回もディレクターに怒られていました。そんな時、ココリコさんが話しかけてくださったんです。「あきえちゃん、今朝何を食べた?」って。仕事に関係ない話から、私との距離を近づけようとしてくれていると感じてすごく嬉しかった。その時「ひょっとしたら、みんな話しかけられ待ちなのでは?」と思うように。それからは仕事と関係ないことでも、自分から先に話しかけるようにしました。

撮影でも素敵な笑顔をたくさん見せてくださいました。撮影でも素敵な笑顔をたくさん見せてくださいました。

米谷
先輩に教えてもらったことを実践したんですね。

鈴木
小林幸子さんには「自分の機嫌は自分で取れるようになりなさい」とアドバイスをいただいたこともありました。話しかけられ待ちではだめ。自ら話しかけて、仲よくなりたいとアピールすることが大切。そうやって話しかけ続けていくと、苦じゃなくなっていきます。ゲッターズ飯田さんに言われたのは「これから会う人、みんな味方だと思ってください。そう思うと生きるのが楽になるよ」。思い返せば、当時の自分はめちゃめちゃシャットアウトしていたな、って。 

米谷
シャットアウトとは誰とも話さない、って感じですか?

鈴木
いえ、話したとしても相手に本心を見せるのが苦手だったんです。でも女優の野村真美さんとご一緒した時「人は自分の鏡だからね。自分が笑顔だったら、みんな笑顔になれるのよ」って言われたんです。心を開かないと、相手も開いてくれない。自分が変わらないと周りも変わってくれない、と学びました。

米谷
心を開くツールが、「笑顔」だったんですね。

■ママになるために泣いた日(1)。思いがけず帝王切開に

米谷
今日は少しいじわるな質問をしますね。そんなあきえちゃんがママになって、笑顔がつらいと思ったことはあったのかな?

鈴木
うーん、ありましたね。

米谷
お産は大変だったそうですが、それも笑顔で乗り切れましたか?

鈴木
いえいえ、すべてが予想外で、さすがに無理でした(笑)。朝、自宅で破水して病院に行ったら、助産師さんに「今日中には会えますね」と言われたので「いよいよきたぞ」と。その時はワクワクしかなくて「痛み、どんとこーい!」って感じだったんですよ。夜に本陣痛が来たけれど子宮口が全然開かなくて、翌日を迎え、破水して24時間経っても生まれる気配はない。自然なお産を推奨する産院で赤ちゃんが元気だったこともあり、流れに任せていたのですが、全然進まない。その日の午後に陣痛促進剤を打ってもらったら強烈な痛みに。

壮絶な分娩体験をリアルにお話してくださり、「さすがリポーター!」とスタッフ感動。壮絶な分娩体験をリアルにお話してくださり、「さすがリポーター!」とスタッフ感動。

米谷
妊娠中は「出産の痛みを一度は味わいたい」とおっしゃっていましたが。

鈴木
鼻からすいかを出すって、よく例えられるじゃないですか。でもそれとは違いました。便秘のもっと激しいもので、腰と下腹に内側からの鈍い痛みが続きました。そんなに痛いのに2日目も生まれる気配はなくて。最初の促進剤を打ってから、ずっと吐いている状態の中、3日目の朝に2本目の促進剤を打ちました。その時、苦しすぎて先生に「おなかを切ってください」って泣きながらお願いしたんです。でも先生は「赤ちゃんも元気だし、おなかを切るのはもったいないわよ」って。

米谷
お話を聞いているだけで、長丁場だったリアルな感じが伝わってきます。

鈴木
帝王切開を経験した姉が「帝王切開は後がしんどいから、自然分娩できるようがんばって」と励ましてくれて、どうにか踏みとどまりました。最終的に子宮口が9.5cmまで開いて、赤ちゃんが出てくる感触があったんですよ。でも何か引っかかっている感じもして。診てもらうと回旋異常を起こしていて、緊急帝王切開になりました。

■いざ帝王切開!立ち会ってくれた夫は?

米谷
自然分娩でがんばろうと思ったのに、帝王切開になった時、どんな心境でしたか?

鈴木
回旋異常が帝王切開のきっかけでしたが、私の体力も相当落ちていて。体力には自信があったのでショックでしたけど、それよりも、このままいくと胎児か私のどちらかが大変なことになるかもしれない。それに医師の判断なら従うしかないですよね。

3日食べてないので減っているだろうと、産後体重計にのったら息子分しか減ってなくて「ええっ!?」。大変だった出産体験も、とびきりの笑顔でおもしろく話してくれました3日食べてないので減っているだろうと、産後体重計にのったら息子分しか減ってなくて「ええっ!?」。大変だった出産体験も、とびきりの笑顔でおもしろく話してくれました。

米谷
帝王切開って、手術自体はあっという間ですよね?

鈴木
はい。手術自体は15分ほどで、産後の縫合も含めて40分くらいです。手術のための麻酔も陣痛に比べれば蚊に刺されたくらいのもので(笑)。帝王切開でも夫だけ手術に立ち会える病院だったんですが、夫は血が苦手なタイプなので立ち会わないだろうと思っていたら、知らないうちに手術着に着替えて立っていたんです。お医者さんの圧に負けて、渋々着替えただけですけど(笑)。

米谷
でもご主人が立ち会ってくれたら、励みになるでしょう。

鈴木
それがあんまり?(笑)。夫は私の顔のそばにいて、私のおなかが見えるんですよ。いちいち実況中継してきて。「おなかを切られているよ。痛い?大丈夫?」とか。それで私は出産に集中できなかったんですが(笑)。誕生の瞬間を共有できたのはよかったです。産声を聞いた時は、二人とも涙しましたもん。

53時間もの壮絶な分娩を経て、無事に息子さんに出会えた時は、幸せの涙が。53時間もの壮絶な分娩を経て、無事に息子さんに出会えた時は、幸せの涙が。

■産み方にはこだわらない。緊急帝王切開後、気持ちを切り替えられた理由

米谷
帝王切開は産後が大変とよく聞きます。

鈴木
めちゃくちゃ苦しかったです。手術の麻酔が切れた直後から傷口の痛みがかなりあったのですが、痛み止めの薬をあまり処方しない方針の病院で。そのうち時間が経つにつれ、自然分娩できなかった自分を責める気持ちになってきました。痛い、悔しい、疲れている。産後すぐに母子同室になりましたが、赤ちゃんがおっぱいを欲しがってもおなかが痛いから起き上がるのに5分くらいかかる。泣いているのに授乳できないもどかしさ。その時が一番つらかったです。

米谷
帝王切開だとすぐには赤ちゃんを抱っこできないですよね。

鈴木
抱っこできないので、私の横に置いたクッションに息子をのせて授乳していました。でもうまくできなくて、どうにもならない時はナースコールをしましたが、自然分娩したお母さんはみんな呼んでいない。私は何回も呼んでいるから、それも気になって。助産師さんに「他のお母さんは、一人で授乳されていますか?」と聞いたことがありました。「自分でされていますよ」との返事に「私だけできてないな」って落ち込むこともありましたね。

身振り手振りを加え、わかりやすく話してくれたあきえさん。自分で自分をリポートしてくれました身振り手振りを加え、わかりやすく話してくれたあきえさん。自分で自分をリポートしてくれました。

米谷
入院生活で涙した日はありましたか?

鈴木
2日目の夜に一人静かに泣いてしまいました。どうしても痛いし、授乳もスムーズにできないし、自然分娩もできなかった悔しさで。いつか2人目も考えていますが、こんなに悔しくて、痛いなら2人目は自然分娩に挑戦したい。だから1人目の入院中なのに、もう帝王切開後の出産を検索していました(笑)。

米谷
自然分娩ができなかったことの後悔は、退院後にも感じました?

鈴木
それはないです。今振り返ると「あの時、自分は何にこだわっていたのだろう」という思いがあります。気持ちは変わりました。

米谷
そこはどうやって切り替えたのですか?

鈴木
帝王切開したことを引け目のように感じていたのですが、帝王切開した友人と話すと、上の子がいるから予定帝王切開の方が予定を組みやすいし、楽だって言う人も。そう言われて「産み方にこだわらなくてもいい」と考えられるように。姉は1人目が緊急帝王切開、2人目は自然分娩(Vバック)にトライしたけど、結果帝王切開だったんです。姉の経験もあり、「しょうがないのかもね」と前向きに捉えられるようになりました。

後悔しても引きずらない。それがあきえさんのように前進する秘訣かもしれません。後悔しても引きずらない。それがあきえさんのように前進する秘訣かもしれません。

米谷
今妊娠中で、これから帝王切開をするかもしれない人にはなんて言ってあげたいですか?

鈴木
赤ちゃんと無事に会えれば、それでいいじゃないですか?と思う反面、一方で自分も落ち込んだ経験があるからこそ、帝王切開した方に対して適切な言葉が正直見つからないんです。自分が体験を話すことで、帝王切開を気にするママの励みにはなるかもしれないな、とは思っているんですけど。

米谷
あきえちゃんの体験談を聞くことで、楽になるママもいると思いますよ。

鈴木
3日間の陣痛中、最初に帝王切開を訴えた時に切ってもらっていたら、もっと後悔していたのかも。限界まで自分にできることをがんばれたから割り切れたのかなとも思います。でもわかりません。帝王切開の理由は人それぞれ。自分を責めないでほしいですよね。

■ママになって泣いた日(2)。孤独を感じた時がつらかった

米谷
退院後の育児生活はどうでしたか?あきえちゃんはがんばり屋さんだし、ポジティブパワーで乗り切れたのでは?

鈴木
そうでもないんです。出産後すぐ里帰りして、自宅に戻った産後2ヵ月頃だったでしょうか。夫が不規則な仕事で、息子と二人きりの日々。そこで「育児って孤独かも」って感じたんです。大人と話せないこと、夫の帰りが遅いのは本当にきつい。だから、宅急便のお兄さんとかショップの店員さんとかにめちゃ話しかけていましたもん(笑)。その時「私、大人を欲している!大人不足だ」と自覚しました。

米谷
育児の大変さそのものより、一人で育児している状況がつらかったんですね。

鈴木
その当時はママになった学生時代からの友達によく話を聞いてもらっていました。最近は、司会をしている『すくすく子育て』という番組で「育児の孤独」というテーマの回があって。それで「孤独を感じるのは私だけじゃなかったんだ」と、改めて安心したこともありました。

■育児の大変さを夫に伝える時は、冷静に、淡々と

米谷
大人と話す機会が減ったことに加え、ダンナさまにわかってもらえなかったことも苦しかったのかな? 

鈴木
両方あると思います。幸せですけど、夫がもっとわかってくれたら、と思うことはありました。でも向こうも忙しい。それで衝突したこともありました。男の人は“育休=時間がいっぱいある”と思っちゃうみたいで「時間がいっぱいとれてよかったね」みたいなことをさらっと言ったことがあったんです。そこで、私も「もう限界です」と冷静に淡々と(笑)。私がパンクした状態を伝えたら、食い違いがあったことに気づいたようで、そのあとは手伝ってくれるようになりました。

iPhoneのデフォルトアプリである写真には、撮影した写真を自動で動画にしてくれる機能があります。気分が落ち込む時は、その動画を見ては、息子さんの成長に感謝しているとか。iPhoneのデフォルトアプリである写真には、撮影した写真を自動で動画にしてくれる機能があります。気分が落ち込む時は、その動画を見ては、息子さんの成長に感謝しているとか。

米谷
いつもは笑顔のあきえちゃんだけど、大変な時はちゃんと感情を出したんですね。

鈴木
「育児だけでいっぱいいっぱいなのに、家事まで無理だよ」って。1回吐き出したら、夫はそれを理解してくれて育児や家事をしてくれるようになりました。でも、仕事が忙しいとそうもいかない時もあって。そんな時は要所要所で言っています。みなさんも無理せず、早めに白旗を上げた方がいいですよ

米谷
よく夫は言ってもわからないとか、気づいてもらえないって話も聞きますよね。夫に伝えたい時はどんな感じで言いますか?

鈴木
夫は冷静で、ディベートが得意なタイプ。感情的に言うと向こうも感情的になって、解決した試しがないんです。だから相手を責めるのではなく、淡々と現状を伝えます。双方冷静に、どう改善していくか話し合います。繰り返し伝えていたからか、察するようになってくれました。落ち着いて言うと解決しやすいかもしれませんね。

笑顔が素敵なだけでなく、気配りの人でもあるあきえさん。取材現場はスタッフ一同ファンになりました!笑顔が素敵なだけでなく、気配りの人でもあるあきえさん。取材現場はスタッフ一同ファンになりました!

米谷
最後にこれから出産や育児をする人に、伝えたいことはありますか?

鈴木
育児の先輩からも、私の母親からも、「子育てしている時は、貴重な奇跡の時間だよ」って言われます。育児は大変だけれど、人生の中で貴重な体験もしている。そのことを噛み締めて、今日も一緒にがんばりましょう!!!

米谷
ステキ!何年後に「あの時は大変だったね」と、笑い飛ばしているあきえちゃんが想像できます!

<YONE’s NOTE>

あきえちゃんって、いつも笑っているイメージですよね?でも今回は、これまでママになって2度涙を流した体験を笑顔で語ってくれました。そして育児でつらい時は、きちんとご主人に伝えるクールな意外な一面も見せてくれました。インタビューの中で、あきえちゃんが学んだ言葉が何か所も出てきましたが、この言葉は、他の人もHappyにしてくれる言葉です。つらい時は、まずは「自分のために笑顔を!」。自分の機嫌は自分で取りましょうか?

撮影/柳原久子(water fish) 取材協力/津島千佳 スタイリスト/近藤伊代(鈴木あきえさん) ヘアメイク/谷村真美さん(鈴木あきえさん)

米谷明子 yoneya akiko

PROFILE

米谷明子 yoneya akikoこのライターの記事一覧

たまひよ雑誌ディレクター
出版社に新卒入社後、妊娠・育児雑誌の編集部に配属。結婚を機に退職し、一児の出産を経て雑誌編集に復帰。同じく妊娠・出産系の出版社勤務を経て、株式会社ベネッセコーポレーションへ。たまひよ事業部で『たまごクラブ』『ひよこクラブ』ディレクター、『妊活たまごクラブ』編集長を務めている。妊娠・育児雑誌を担当して20年以上経つが「ベテラン」と言われるのが嫌。子育て期のママ・パパの近いところにいつも居たいがモットー。
https://st.benesse.ne.jp/

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