たまひよディレクター米谷が出会ったモノ・コト・ヒト。vol.7

ママもパパも「今、いい表情してますよ!」蛯原英里さんが伝える「ふれあい」の本質

2019/10/28
ママもパパも「今、いい表情してますよ!」蛯原英里さ... ママもパパも「今、いい表情してますよ!」蛯原英里さ...

大人(親)になっても、好きなものを好きでいるって、いいと思いませんか?プレママや育児中のママにとってバイブル的雑誌の『たまごクラブ』、『ひよこクラブ』。その両誌のディレクターを務める米谷明子が、今のママ&パパが興味あるモノやコト、ヒトに会いに行く連載。雑誌では紹介しきれなかった気になるママやパパに、あれこれ質問をします!

米谷明子プロフィール画像 米谷明子 Yoneya Akiko
『たまごクラブ』『ひよこクラブ』雑誌ディレクター、『妊活たまごクラブ』編集長


マタニティ雑誌、ベビー雑誌の編集を長年やってきた、エディター・ディレクターの米谷明子です。この連載では私自身がセレクトした、子育て中にちょっとおしゃれでカッコよくて、魅力的なヒトをご紹介していきます。

みなさん、我が子とのスキンシップを楽しんでいますか?今は「抱っこ、抱っこ」とせがんでくる時期、真っ最中?それとも以前は一日中抱っこしていたのに、少し大きくなって、最近肌のふれあいが減ったと感じている方もいるかもしれませんね。チャイルド・ボディ・セラピストとして活躍する蛯原英里さんに、「ふれあい」の大切さをうかがいました。これから出産する妊婦さんにも、今からふれあいのことを知ってもらいたいインタビューです。

【蛯原英里さんとは?】1979年生まれ。看護学校を卒業後、看護師として新生児特定集中治療室(NICU)に勤務。アパレルのプレスを経て、2012年にチャイルド・ボディ・セラピストとして活動を開始。2015年には日本チャイルドボディケア協会を設立。現在はベビー&キッズ服ブランド『Ecragée』のディレクションも務める。一女一男のママ。双子の姉はモデルの蛯原友里さん。
『日本チャイルドボディケア協会』公式サイトはこちら
『Ecragée』公式サイトはこちら

<YONE’s QUESTION>

蛯原友里さん&英里さんと言えば、有名な美人双子姉妹。姉の友里さんはモデルとして活躍中ですが、妹の英里さんは、お姉さんとは別の進路を歩んでいます。英里さんが選んだ、チャイルド・ボディ・セラピストという職業を通して伝えたいこととは?改めて英里さんの原点を探ってみたいと思いました。

■友里と別の進路を選んだのは必然だったかも

米谷
英里さんとは今から6年前に、『妊活たまごクラブ』で最初にインタビューをさせていただきました。

蛯原
そうでしたね!チャイルド・ボディ・セラピストとして独立し、結婚10年目に赤ちゃんが欲しいと思っていた時期でした。あれから長女が生まれて、2018年に長男が生まれました。

米谷
お姉さんの友里さんと別の道を選ぶようになったのは、いつ頃からですか?

蛯原
子どもの頃に虫垂炎にかかり、私一人が入院したことがあったんです。心細かったのですが、看護師さんにとてもやさしくしてもらいました。その経験があったので、私は看護師の道を考え、友里はファッションの道を探し、別の高校、専門学校に行きました。

米谷
NICUの看護師さんを経て、2012年にチャイルド・ボディ・セラピストとして、ベビーマッサージサロンなどを開業されました。

蛯原
はい、看護師を目指したこと、NICUに勤務していたこと、小さな赤ちゃんの看護をしている中で、肌にふれる「ふれあい」が大切だと気づいたことが全部つながり、チャイルド・ボディ・セラピストという現在になったと思っています。

友里さんと英里さんふたりの写真左が一卵性双生児の姉の友里さん、右が英里さん。2才下には弟さんもいて、故郷の宮崎できょうだいで水泳に打ち込んでいました。

■ベビーマッサージは赤ちゃんとママ、両方のもの

米谷
チャイルド・ボディ・セラピストは、ベビーマッサージを通じて赤ちゃんを笑顔にするお仕事ですよね。

蛯原
それも大きな目的ですが、ベビーマッサージは、赤ちゃんだけでなく、ママやパパを笑顔にするためでもあると思っています。ベビーマッサージの方法はいろいろありますが、どんな方法でもいい。最小限、肌と肌がふれあえたらいいと思っています。

米谷
確かに、ベビーマッサージというといろいろな方法があって、ママが勉強をしないといけないイメージ。

蛯原
そんなに難しいことはないんです。教室で、プレママの方とお話をしていると、周囲にお子さんがいる友人がいないとか、抱っこの仕方がわからないとか、子どもと二人っきりになった時、どうすごしていいかわからないとか、そういう声をたくさん聞きます。妊娠期間を経て待ち望んだ赤ちゃんとすごすのは、本来ハッピーな時間なんですよ、と不安を解消してあげたい。

米谷
確かに、出産して人生で初めて赤ちゃんにふれるというママも多いですよね。

蛯原
ベビーマッサージのクラスに参加するママたちも、最初は不安気です。でもベビーマッサージを始めると、本当に赤ちゃんがいい表情をするんです。それでママに「赤ちゃん、いい笑顔ですよ」って伝えたり。そうやってママと赤ちゃんとのコミュニケーションのお手伝いをしているというか…。

ベビーマッサージのお話をしている英里さんベビーマッサージ=赤ちゃんのためのもの、という先入観がありましたが、英里さんのお話を聞いてママのためのものでもあることに気づかされました。

米谷
赤ちゃんが「いい表情」って言葉、とても新鮮です。初めての子育てだと、そんなふうに赤ちゃんを見れるかな?ママも余裕がないから赤ちゃんのいい表情に気づきにくいかも。

蛯原
リラックスしていて、笑顔があふれる。赤ちゃんがいい表情をしている時って、ママも明るい表情なんです。だけどママは自分じゃ見えない。そんな時に「ママも今、いい表情していますよ」って言うと、みんな「ハッ!」と気づいてもらえます。

米谷
「ママもいい表情してますよ」って言われたら、ママもうれしくなりそう。

■ハグは言葉以上に思いが伝わります

米谷
人の手って、ふれるとあったかくて気持ちいいですよね。でも日本人ってふれられるのが苦手な人が多いように感じます。

蛯原
自分の子どもでも、ふれるのが恥ずかしいというママはいますね。子どもの頃、親にふれられた記憶があまり残っていないのかな?

米谷
子どもが大きくなって、さらに思春期になったりすると、さわるのは遠慮してしまうかも。

蛯原
でもふれあいって、大人になってからでも遅くないんですよ。私も今の仕事を始めてから、大人にもよくふれるようになりました。地元の宮崎に帰省して東京に戻る時、空港で両親にハグしてますもん。

親子揃って最高の笑顔撮影中、「息子くんとスキンシップを」とお願いすると、親子揃って最高の笑顔に。

米谷
えぇ!両親にハグですか!?ご両親は照れていませんでした?

蛯原
最初は「えっ!?」って感じで照れていました。だからハイタッチから始めましたね。それに慣れてからハグに移行したから、今は当たり前のようにハグ。だってうちは東京−宮崎と離れていて、こんなこと考えたくないけれど死に目に会えないかもしれない。「今しかない」と思うと、意外とすんなりできますよ。

米谷
私にはそもそも親にさわるっていう発想がありませんでした。「いずれ介護をする時にさわるだろう」では遅いですね。

蛯原
親から生まれているんですから、照れる必要なんてありません。そして子どもの頃は、親にたくさん抱っこしてもらっていたんです。ハグって、肌の温かさや、その圧の加減で気持ちが通じます。言葉以上のものが伝わってきますし、ふれあいができる人は人との距離のとり方が上手。

「親子のスキンシップに年齢は関係ない」という英里さんのお話「親子のスキンシップに年齢は関係ない」という英里さんのお話を聞き、思い当たることがあって泣いてしまった米谷。その涙を見て、英里さんも涙ぐむ場面も。

米谷
親になると、育児優先で夫婦間でもスキンシップの機会が減るじゃないですか。

蛯原
うちは意識的に夫婦で肩を揉んだりとかしています。ふれあいは癒しでもありますし、そういう関係性のある人がいるって、一生の宝もの。私も子どもの頃に親からハグされたり、頭をポンポンされて嬉しかったこと、ずっと覚えていますもん。好きな人からふれられて、嫌な人っていないですよね。ふれられると自分は存在していいと思えるし、ふれた人も自分のことも好きになれる。自己肯定感が育っていくと思いますね。夫婦じゃなくても、友達でもいいと思います。大人こそ「ふれあい」が足りていないですね。

米谷
自分の好きな人にふれてもらうには、どうしたらいいんでしょう?

蛯原
上の子は疲れた時とか、寂しい時は「ママ、ギューして」って言ってきます。子どものほうが大人より、上手に伝えますよね。だから思ったとおりに言えばいいんじゃないかな。言えないなら、隣に行ってくっつくとか、自分からさわってみるとか。難しく考えなくていいですよ。

米谷
だそうです(笑)(誰にともなく同意を求める)

■家族の絆が深まるNICUで働いたことが今に繋がる

米谷
英里さんは看護学校を卒業後、NICUに勤務していますよね。なぜNICUだったのでしょう?

蛯原
卒業するタイミングで、勤務を希望する科を伝えるんです。第一希望は小児科でしたが、配属されたのがNICU。

動きたい盛りの息子くん動きたい盛りの息子くん。カメラに収まるよう、優しく英里さんが抱っこしていました。

米谷
NICUは命と隣り合わせの大変なお仕事のイメージがあります。

蛯原
両手のひらに乗るような小さな赤ちゃんだと、自分で呼吸できないので人工呼吸器につなげて24時間体制で見守らないといけません。心臓に異変があると心電図のアラームが鳴るんですが、その音が鳴ることを常に意識していて。一時期は帰宅してもアラームが頭の中でずっと鳴っていましたね。そういった意味では、緊張感のある職場だと思います。

米谷
一方で、NICUの看護師さんは、命を守る以外のお世話もしていますよね。お母さんのような役割もしていたのでは?

蛯原
はい、哺乳びんでの授乳、おむつ交換、清拭と、ママのようにお世話をするので母性は目覚めます。特に自分が担当する赤ちゃんは可愛くって。もう親みたいな気分になっていました(笑)。

米谷
NICUで働いていた時のやりがいはなんでしたか?

蛯原
ママやパパが抱っこした時に、赤ちゃんがいい表情をするんです。私は「それそれ、そのお顔!」って伝えていました。初めてできるようになったことを伝えたり、ご家族と一緒にその場面を見ることもあり、ママも私も涙することもありました。NICUは家族の絆が深まる場所だと思っていて、その現場に立ち会えたことは貴重な体験と喜びでした。

米谷
ママたちは初めての育児で、どれが赤ちゃんのいい表情や反応かどうか、わからないかも。でも生まれた時から一緒にいた、もう一人のママのような英里さんに教えてもらったら納得できたでしょうね。

8分差で生まれた姉の友里さんと英里さん誕生時の写真8分差で生まれた姉の友里さんと英里さん誕生時の写真。英里さんは1800gと低体重で生まれたため、生まれてすぐ保育器に入っていた経験が。「私がおなかの中で奥の方にいたせいか、母の妊娠中、当時は心音が1人分しか聞こえなかったそうです。出産して初めて双子ということがわかったんですって」と、驚きのエピソードも。

蛯原
私、NICUの頃からきっと、ママと赤ちゃんとの絆を深めるお手伝いをしたかったんです。今チャイルド・ボディ・セラピストとして働いている根底にはNICUの経験があります。そして私自身、1800gで生まれて保育器に入っていたことも、実は全部つながっているのかな、って最近になって感じます。

■イヤイヤ期は子どもが自我を出せるキラキラ期

米谷
今は『日本チャイルドボディケア協会』の代表としての活動もされています。

蛯原
ベビーマッサージ以外にも産前産後のヨガやリトミック、イヤイヤ期の対応の仕方などの教室を開催しています。私自身もママの立場で、健やかな親子の関係について学びながら、みなさんのお手伝いもしている感じですね。

米谷
ベビーマッサージ以外に、イヤイヤ期の教室も!?かなり気になる教室ですね。

蛯原
イヤイヤ期って子どもの成長段階。ママもそれは理解しているけれど、直面するとどうしてもイライラしますよね。だけどイヤイヤじゃなくて、キラキラした時期って捉えてほしいんです。「キラキラ期」と考えると、なんだか成長した我が子が、頼もしく思えてきませんか?もう少し成長すると、子どもも空気を読んで自我をあまり出さないようになってくるので、自分を出せるってすごくいい時期。そういうふうに、ママのイヤイヤ期の受け止め方を変えるプログラムを提案しています。

対面してのスキンシップ中、常に息子くんと目を合わせていた英里さんの姿が印象的でした。対面してのスキンシップ中、常に息子くんと目を合わせていた英里さんの姿が印象的でした。

米谷
イヤイヤ期ってネガティブな印象があるけれど、キラキラ期だと前向きな響きがありますね。

蛯原
この時期だから子どもが自我を出せるし、出していい。子どもは本心でぶつかってくれる、素晴らしい時期です。

■赤ちゃんの知識はあると思っていたけれど、出産しないとわからないこともある

米谷
上のお子さんは5才ですが、イヤイヤ期はどう捉えていましたか?

蛯原
「ママ、かまって〜!」を出せているのはいいことだと思っていました。我慢していつか爆発するよりはいいですし。下の子も生まれて、上の子の希望を全部受け入れることは難しいけれど、今もできるだけふれあっています。

米谷
出産前と育児中の今で、子育てに関して考えは変わりました?

蛯原
考え自体はそんなには変わっていませんが、生んで初めてわかったことはあります。NICU時代も育児をしていたつもりだったし、知識や情報もあるほうだと思っていました。でも特に母乳など、出産してみないとわからないことだらけ。新生児のことは知っていても、その後どう成長していくか。それも生んでみないとわからなかったこと。NICU時代はオンとオフの切り替えができたけど、ママになると24時間、大変ですね。今『日本チャイルドボディケア協会』のプレママプログラムには、看護師や産科医師の方が結構参加されています。私と一緒で知識はあるけれど、実際に赤ちゃんにふれて、実感したいようです。やっぱり経験しないと、見えてこないことはいっぱいありますね。

インタビュー中に英里さんの口から出てくるのは、ポジティブな言葉ばかり。インタビューをしているこちらが元気をもらいました。インタビュー中に英里さんの口から出てくるのは、ポジティブな言葉ばかり。インタビューをしているこちらが元気をもらいました。

米谷
英里さん自身も、仕事に育児に大変な時期ですが、癒やされる時間はありますか?

蛯原
眠る前の子どもとのスキンシップタイムとか、子ども同士がじゃれながら笑い合っているのを見ると最高に活力になりますね。

米谷
英里さんは一人になりたいって思う時はありませんか?

蛯原
あります、あります。絶対一緒にいなきゃだめって思うと、もたないし。子どもはママの気持ちを感じる天才。マイナスな気持ちでずっと一緒にいるよりは、一旦リセットして接した方がいい。私も時々一人の時間をもらって、マッサージに行っていますもん。

米谷
子どもはママの気持ちを感じる天才。ドキっとしますね。だったら、なおさら「いい表情」でいるために、一人の時間も大切です。

<YONE’s NOTE>

蛯原英里さんって、ふれあいを通して「いい表情」を発見する天才ですね。久しく親にふれていない私は、蛯原さんとの対話を通して、自分の親の手を思い出しました。一人は他界してしまったのですが、もっとさわっておけばよかったと不意に涙。そうしたら「今からでもいいじゃないですか?」とキラキラした目で言ってくれるのです。今度もう一人の親に会ったら、ハグは恥ずかしいのでまずはハイタッチで手にふれてみようと思います。ふれあいから生じる自己肯定感ってあるのだな。子どもの頃にたくさんふれられたことを思い出してみませんか?そして、私たちももっと子どもに、親に、ふれさせてもらいましょう!

撮影/柳原久子(water fish) 取材協力/津島千佳 ヘアメイク/佐々木育美(蛯原さん) スタイリスト/柿原陽子(蛯原さん)

米谷明子 yoneya akiko

PROFILE

米谷明子 yoneya akikoこのライターの記事一覧

たまひよ雑誌ディレクター
出版社に新卒入社後、妊娠・育児雑誌の編集部に配属。結婚を機に退職し、一児の出産を経て雑誌編集に復帰。同じく妊娠・出産系の出版社勤務を経て、株式会社ベネッセコーポレーションへ。たまひよ事業部で『たまごクラブ』『ひよこクラブ』ディレクター、『妊活たまごクラブ』編集長を務めている。妊娠・育児雑誌を担当して20年以上経つが「ベテラン」と言われるのが嫌。子育て期のママ・パパの近いところにいつも居たいがモットー。
https://st.benesse.ne.jp/

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