ミュージシャン、絵描き、会社員として、フォトグラファーの妻と夫婦で綴る育児奮闘記。第一弾は、赤ちゃんがやってきた「ラブストーリーは突然に」。
2018年10月
馬乗りになって起こされたのは初めての事だった。後ろ手に隠したそれを戸惑いながらも嬉しそうに見せる妻の顔を今も覚えている。陽性反応に「えっ？」と戸惑い「えぇー！！」と驚いた僕の顔を見て笑ってたな。
７月に夫婦になったばかりなのにパパママの準備期間に早変わり。心拍の確認もできたので妻の実家にまたまたご挨拶に行く事に。毎度緊張して帰る間際の報告になってしまうのだけど…。ケーキの上に「じぃじ ばぁば おめでとう！！」とプレートを立ててサプライズ報告。とても喜んでくれていたけどお義父さんは少し戸惑いの表情だったな。僕もいつかその表情の意味がわかる日が来るのかな？
カットしてからの写真しかないくらい緊張してたみたい。妻はフリーランスで僕は会社員。妻はつわりがあまり酷くないみたいでペースを落として働いていた。韓国に仕事に行くと相談された時はさすがにやめなよと言ったんだけど…、いつも相談とは名ばかりなのである。好きな事を仕事にしていると仕事ができない事がストレスになるかもしれないし医師の許可もあったのでしぶしぶ「気を付けてね」と送り出した。
新店舗を任されてすぐに妊娠発覚。店舗の壁には社長と僕の作品。なるべく休みを合わせて健診に付き添うようにした。どうしても行けない時は共有アプリでエコー写真や動画を見たりして連絡を取り合った。まが玉みたいな子どものエコー写真を妻が可愛いと言っていた時は「そうかなー？」と思ったりもした。鼓動する心臓を見た時は頑張って生きてくれていると感動したのを覚えている。健診の最後に僕はいつも「順調ですか？」それだけを聞き「順調ですよー」と返事をもらうたびすごく安心した。健診の帰り道は妻の食べたいものを食べに出かけた。二人で外食なんて普通の事だったのにね。
初めてのエコー写真は見方もよくわからなかったな。性別もまだわからないおなかの子にポコちゃんと名前をつけた。好きな作家さんの娘さんの名前なんだけどSNSに動画が載っていたりしていてとにかく可愛い。こんな天真爛漫な子に育ってほしいなと思いおなかをさすりながら呼びかけてた。音楽をしていたのもあって自分の曲を聴かせたりもした。胎動が激しい頃には名前や音に反応しているようにも思えて楽しかったな。うねうねとおなかの中で動いていたポコちゃん、今は違う名前になっておなかの中でしていたであろう動きをしながらベッドの上でスヤスヤと眠っている。なんだか不思議だけどちゃんと繋がっているんだね。
戌の日に安産祈願。二人でポコちゃんに念を込めているところ。妊婦である期間、妻は僕が感じる時間よりも濃密な時間を過ごしていたと思う。日々変化する体と向き合いながら新しい日常と今までの日常のバランスをとりながらの生活は大変な事だと思う。男性だから女性だからというのは好きではないけど子どもをおなかの中に抱えている体の状態やそれに伴うホルモンバランスの乱れや変化など、僕には理解の難しいところがやっぱりある。理解する事が難しいからこそ配慮して寄り添ってあげなければいけないなと思う。今となっては配慮が足りない事だらけだったなと反省しています。ごめんね。
日々の暮らしが少しずつ変化していく。妊娠がわかってからの事を思い返してざっくりと文章にしました。書く僕の傍で今の君が騒いでる。あの頃は触れる事もできなかった君に馬乗りになって起こされるようになったんだな。あの日から君との時間が始まったんだね。
そろそろ寝る時間ですよ。おやすみなさい。また明日。
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