ライターの藤沢あかりさんが毎年撮っている家族写真。家族にとってどんな意味を持つのでしょうか。
わが家で欠かせない行事に、年に一度の家族写真があります。
初めてきちんと撮影したのは、娘が2才のころだったでしょうか。気になる写真スタジオを見つけたことを機に、お誕生日の記念に撮影してもらうことにしました。その流れで、せっかくなら、と家族写真も撮ってもらったのが始まりだったと思います。
そしてここ数年は、銀塩フィルムで撮影する写真館にお願いすることになりました。全国津々浦々を行脚する、移動式の写真館。毎年、夏ごろに東京へやってくる機会があり、そこでいつもお願いしています。

家族みんながいつもの服装(たいてい、そのときの一番のお気に入りを着ます)、いつもの笑顔で、かしこまった様子はなし。カジュアルで、ありのままの一枚です。
銀塩フィルムは、現像しなければ仕上がりがわかりません。最近のフォトスタジオのように、撮影後にデータを見ながらお気に入りの一枚を選ぶことはありません。フォトグラファーさんご自身が選んだ一枚を、アルバムに収めてくれます。そうして、写真のことなどすっかり忘れかけていたころに、昨年より1ページ増えたアルバムが、ふいに届けられるのです。そう、まるで贈り物のように。

最初のころは、年に一度の撮影、という非日常な「点」でした。それが何年か続いてくると、少しずつ「線」になり、わたしたち家族の軌跡を描くようになりました。
いつの頃からかニカッと笑うことをやめ、上品なよそいきスマイルを習得した小学生の娘。最初はカメラの前に立つことすら大変だったのに、いまではおどけ顔で、ばっちりポーズを決める息子。

撮影の前後に立ち寄るケーキ屋さんの喫茶室では、いつの間にかしっかり一人前のアイスクリームを頼めるようになった子どもたち。そこらじゅうべたべたにしながら食べていたのに、もう、わたしの手伝いは必要なく、子どもたちに気を取られている間にホットコーヒーが冷めてしまうこともなくなりました。
たどり着くまでてんやわんやだった電車の道中も、気づけば2人がそれぞれ、絵本を読んだり遊んだりできるようになっています。
家族写真の一日は、ただ写真を撮るだけではない、わたしたち家族の「いま」を教えてくれる定点観測でもあるのです。

アルバムが届くと、みんなで「せーの」で開きます。どんな表情やポーズの一枚が入っているのか、ドキドキする瞬間です。
ひとしきり今年の写真で盛り上がったあとは、わいわいページをめくります。「ちっちゃい〜!!」「あ〜、このワンピース好きだったなぁ」という目に見える変化はもちろんのこと、「帰りにボートに乗ったよね」「このあと買った絵本、いまも読んでるよね」と、わたしたち家族にしか見えない思い出もまた、よみがえってくるからおもしろいものです。
さて、2016年から撮り始めたこのアルバムも6年目。
娘は、毎年必ず連れていたパンダのぬいぐるみをついに手放し、小学生の間で流行っている新入りの小さな人形を抱いて撮りました(親のわたしのほうが寂しくて、何度も「パンダちゃん、ほんとうにいいの?」と聞いてしまった)。息子はというと、なぜか鞄に入っていた駄菓子を離さず、まあそれもおもしろいか、ということでそのまま一緒に写る始末。

そんな一枚が、今年もやってきました。また新たに1ページ、厚みを増したわが家のアルバム。この先もずっと続けていけたらいいなと楽しみにしています。

PROFILE
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編集者、ライター。衣食住や子育てなど暮らしまわりを中心に執筆。主流・傍流にこだわらない視点で丁寧に取材し、分かりやすい言葉を使って伝えることがモットー。2012年、2017年、どちらも夏生まれの2児の母。
https://www.instagram.com/akari_kd/
(制作 * エチカ)