妊婦のインフルエンザ予防接種は生まれた赤ちゃんにもメリットがある!?【産婦人科医監修】


妊娠中は「インフルエンザの予防接種を受けたほうがいいのかな」と迷ったり、いざ受けようと思ったものの「ワクチンは赤ちゃんに悪影響はないの?」などと心配になったり、「妊娠何週目に受けたらいいのかな」など疑問がわいてくる妊婦さんは多いのではないでしょうか。 そこで産婦人科医院長の天神先生に妊娠中のインフルエンザ予防接種についてお伺いしました。
インフルエンザのワクチンは妊娠中も接種できる?赤ちゃんに影響は?

ワクチンには代表的なものとして「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があり、インフルエンザは不活化ワクチン。まずはこの2種類について説明します。
・生ワクチン
生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を、症状が出ないが免疫が作れるギリギリまで弱めたワクチン。免疫が作られる流れは自然感染と同じなので、1回の接種で充分な免疫を作ることができます。ただ、自然感染より弱いため、何年かたったら追加摂取が必要なワクチンや、2~3回接種したほうがいいものも。
代表的なものにBCG、風疹、麻疹(はしか)などがあります。
・不活化ワクチン
病原性を無毒化してつくられたワクチンです。1回では十分な免疫ができないものもあり、ワクチンによって決められた回数にわけて接種します。代表的なものにB型肝炎、日本脳炎、そしてインフルエンザなどがあります。
インフルエンザワクチンは胎児に悪影響を及ぼしたという報告はなく、有効性と安全性が認められた妊娠中も接種できるワクチンです。
妊娠中は受けた方がいいの?接種できるのは妊娠何週目?

結論からいうと、厚生労働省は妊婦さんにはインフルエンザの予防接種を受けることを推奨しています。また胎児に影響を及ぼすことはないとされており、医師の判断によりすべての妊娠週数で接種することができます。
妊婦さんに接種が推奨される理由は、妊婦さんがインフルエンザに感染すると重度の合併症を引き起こすリスクが高くなるためです。また、妊娠中は免疫力が低下していて、妊娠前のからだに比べ、感染しやすい状態。これらのことから一般的には妊婦さんにはインフルエンザの予防接種を受けることが推奨されているのです。
なお日本でインフルエンザが流行するのは例年だと12月~4月頃。ワクチンを接種してから予防効果がでるのに2~3週間ぐらいかかり、効果は5ヵ月程度持続するといわれています。 そのため接種する時期は10月~11月中が理想的ですが、難しい場合はできるだけ早めに受けるようにしましょう。
妊娠中にインフルエンザの予防接種を受けるメリットと懸念点
インフルエンザの予防接種に期待できるメリットは、大きく3つあります。
1つ目は、インフルエンザに感染する確率を減らすこと。2つ目は、感染したときの重症化する確率を減らすことです。妊婦さんがインフルエンザにかかると症状が重くなりやすいことが明らかになっているため、ワクチン接種によって重症化を防ぐことも大きなメリットといえます。
3つ目は、胎盤をとおして赤ちゃんにも免疫が移行し、生まれてくる赤ちゃんにも生後6ヵ月頃まで免疫力が備わることです。生後6ヵ月未満の赤ちゃんにはインフルエンザワクチン接種はしたくでもできないので、赤ちゃんにとってもメリットですね。
妊娠中にインフルエンザの予防接種をすることは、母子双方にメリットをもたらす可能性があるのです。
懸念点は、ごくまれにアナフィラキシー様症状などの副作用があることです。基礎疾患やアレルギーがある妊婦さんはかかりつけの医師に相談して判断すると安心ですね。
まとめ
妊婦さんにはインフルエンザの予防接種が推奨されますが、「赤ちゃんに影響があったらどうしよう」など妊婦さんが心配になる気持ちもよく分かります。気になる場合は、いまかかっている産婦人科の医師にも相談して判断すると安心ですね。
なお、ワクチンを接種したとしても感染を完全に防ぐわけではありません。人混みへの外出を避る、手洗いやうがいをする、十分な休息をとるなど、日常生活において感染予防に取り組むよう心がけましょう。

PROFILE
天神尚子このライターの記事一覧
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。