妊娠中だけでなく、妊娠前からも適切な摂取を心掛けたい栄養素「葉酸」とは?
「妊娠中は葉酸を摂ったほうが良い」とよく聞くけれど、葉酸とはどんな栄養素で、なぜ摂る必要があるのかはよくわからないという妊婦さんもいるかと思います。そこで、葉酸について産婦人科医の天神尚子先生に詳しく教えていただきました。葉酸を効果的に摂るコツについても紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
葉酸とは?
葉酸は水溶性ビタミンB群のひとつで、ほうれん草などに含まれる栄養素です。たんぱく質や細胞を作るときに必要な核酸を作る、赤血球の形成、ビタミンB12と共に血液を作るなどの働きがあります。
妊娠中や妊娠前から必要な理由と摂取量
葉酸は、細胞分裂の活発な胎児の成長に大きく関わる栄養素で、葉酸を摂取することによって、神経管閉鎖障害(二分脊椎・無脳症・髄膜瘤など)という先天性の病気が50~70%予防できると言われています。厚生労働省は、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性、そして妊婦さんに対して、葉酸の摂取を呼び掛けています。(※1)
葉酸を摂る時期として最適なのは、妊娠1ヵ月以上前から、妊娠後3ヵ月までの間と推奨されています。これは、胎児の細胞分裂は妊娠初期に盛んにおこなわれ、妊娠初期が神経管の形成期だからです。この時期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害の発症リスクが高まってしまいます。そこで、妊娠前から妊娠初期は特に積極的に葉酸を摂取することが望まれているのです。
参考:※1 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」
厚生労働省は、葉酸の摂取量を次のように推奨しています。
・妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性
食事から1日240μg(マイクログラム)の葉酸を摂るのに加えて、サプリメントなどの栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取する。
・妊娠中期~後期
食事やサプリメント等で480μg摂取する。
なお、サプリメント等による葉酸の1日の耐容上限量は食事からの接種も含め900~1000μgなので、摂り過ぎには注意しましょう。(※2)
参考:※2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)
葉酸の摂取の仕方
まずは、毎日の食事に葉酸を多く含む食品を取り入れるよう意識しましょう。葉酸は、枝豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜やいちごなどに多く含まれています。葉酸は熱に弱く、水溶性でゆでると失われやすいため、炒める、焼くなどの調理法がおすすめです。スムージーやジュースにしてもいいでしょう。
そして、食事でたりない分は、サプリメントで摂取します。ただし、サプリメントは簡単に摂取できる分、過剰にとってしまいがちなので気を付けましょう。妊娠すると、つわりなどの影響でサプリメントのにおいが気になったり、粒が大きいと飲みづらく感じたりすることもありますから、飲みやすいものを選ぶこともポイントです。
まとめ
葉酸は赤ちゃんの健康を守るために大切な栄養素です。妊娠を検討し始めたら、意識して積極的に摂りましょう。葉酸は緑黄色野菜などに豊富に含まれていますが、水溶性であるということもあり、十分に摂取することが難しいと言われています。食事に加え、サプリメントを活用して、過剰摂取に注意しつつ、上手に補うとよいでしょう。もちろん、普段から栄養バランスのよい食事をとることも大切です。
PROFILE
天神尚子このライターの記事一覧
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。