イラストレーターのシンザトマリコさん。第一子の誕生からの1年を振り返ります。ハイテンションな産後1〜2ヵ月の頃のお話です。
「あぁ…なんてかわいいのだろう…」
微笑む君。うなる君。泣く一歩手前のへの字口、そして泣き顔。全てがかわいいまんまる赤ちゃんが、家族の中心にいます。お世話の繰り返しでいつも眠くて、夜中の頻回授乳は(かなり)大変。すぐ心配になったり、「どうしよう」と焦ることも多々ありましたが幸せな笑いが溢れる毎日でした。
1ヵ月健診の日を、産前にせっせと制作をしていたミニブックの発売日にしたので、息子が日中眠っている間は、その発送作業をすることもありました。これが育児の息抜きのような楽しい時間。子育ても自分が好きなことも全力でやるぞ!とみなぎるパワー。これを「産後ハイ」と言うのかもしれません。
好きな時間は、肌と肌が触れ合えるお風呂とベビーカーでのお散歩。近所で開かれていたベビーマッサージも楽しい時間でした。「ラララ雑巾〜♪」と歌いながらマッサージをしていました。

ぐんぐん母乳を飲み、息子はどんどん太ってきました。小さくて可愛いのに、こじんまりとした目で睨まれると(睨んではないのだけれど)、ものすごい迫力で「しゃ、社長〜!」というような貫禄があります。クルクルと表情が変わるので見ていて飽きません。


わたしの父親は沖縄出身で非常に濃いフェイスなのですが、沖縄の要素は少なそうでした。遺伝の不思議。
さて、そうこうするうちにマンガの仕事の依頼がやってきました。産後2ヵ月、予想より早い仕事再開です。仕事は嬉しくてやりたくて「ヒャッホウ!」という感じでしたが、いざ取り組むと産前と同じようにはいかず、かなり時間がかかりそう。寝ている間はもちろん、母に見てもらっている間に仕事を進めていきました。
季節は夏、真っ盛り。タオルを頭に巻いて気合を入れ家事育児。ここに仕事が加わって…。産後疲れの中、やっぱり無理をしていたのかもしれません。ついにある日、わかりやすく体調を崩してしまいました。あれっ、なんかおかしいぞ。ハイテンションはどこへやら。
まさか、まっさかさま。
体調が優れないまま仕事を進めていると、さらに発熱。微熱だったこともあり、なんとか乗り切れました。どうしても終わらせたい…!というわたしの意思を見抜いて応援してくれた母や夫のサポートあってこそでした。

その後も神経がたかぶっていたのか、一時期、不眠症状に悩まされました。眠れない夜は、海の藻屑のように暗闇に漂います。全く寝られなかった朝、母が買ってきてくれた某カフェのアイスコーヒーとサンドイッチ。ず〜んとしているわたしを見て、カーテンをシャーーーー!と開けて、「大丈夫よ!寝なくても!いつか眠れるわよ」とカラッと言いました。窓から差し込む朝の光と共に食べた、忘れられない「大丈夫」の味。今でもわたしのパワーフードな気がしてます。
この時期の体調不良で、気付きがありました。それは「頑張り過ぎずに、もっと休みなさい」と言うこと。体はサインを出していてくれたのですね。それからはよく休むようになりました(もちろん、これはわたしの場合。ハイパワーに両立できる人もいると思います)。そしてこの時期には、言語化できないような心細さや敏感さも感じました。母という存在に変化していく成長途中、脱皮しているような状態だったかもしれないと今は思います(そしてだんだん強くなっていく!)。
この経験をふまえた第2子の娘の産後の体調はすこぶる万全でした!とは言っても2才の息子がいたのでカオスでしたが…。経験とは、自分という心と体を知っていく旅路ですね。

一生懸命駆け抜けた、母になって初めての夏が終わり季節は秋へ。わたしはまた1つ年を重ねようとしていました。息子はすくすくと3ヵ月に。これから楽しいこと嬉しいこと、いっぱい待ってるんだろうなぁ。

PROFILE
シンザトマリコこのライターの記事一覧
イラストレーター。カメラマンの夫、小学生の兄妹と4人暮らし。インスタグラムでは子育てにまつわるイラストエッセイを更新。サリー・M・ローズマリーという名前で魔女修行エッセイも綴っている。
https://www.instagram.com/nonohanadesign
(制作 * エチカ)