——息子さんの名前には「森」という字が使われているんですね。友里さんご家族らしい素敵なお名前ですが、どんな想いを込められたのですか？

友里さん
アウトドア好きになってほしいということではないんです。森にはさまざまな生き物たちが生きていて、形や色もそれぞれ。日陰で生きる苔もいれば、ぐんぐん背を伸ばし大きくなる樹もいる——そんなふうに、たくさんの生命が寄り添い、育まれる１つの豊かな森のような心をもってほしいと願い、名付けました。

——現在、息子さんは２才ということですが、子育てをしていて日々感じていることはありますか？

友里さん
泣いていると「今はこの子の中に嵐が来ているな」、ご機嫌にしていると「気持ちのいいそよ風が吹いているな」というように、子どもって山や自然と同じで、私の力ではどうにもならない大きな存在だなといつも思います。おなかにいるときも、生まれてからも、この子の生きる力に任せよう、信じようと思って接していますね。そのおかげで、子育てに行き詰まってしまうという気持ちとも、うまく付き合えているのかもしれません。

——出産時の印象に残っている出来事はありますか？

友里さん
出産のときに、おなかの息子にずっと「明るい方に、明るい方に行ってね」と話しかけていたんです。そうしたら、生まれて胸の上で抱いたとき、不思議そうに右目だけパチっと開けて、まず私の顔を見て、そのあとに天井の光を見つめていたんです。それを見たとき、「ああ、私の言葉が通じていたんだ！」と思いましたね。私は山登りでご来光を見ると、世界の始まりを見たような、まっさらな気持ちになるのですが、この子にとってこの光が世界の始まりの光で、この瞬間こそ本当に人生の始まりなんだなと感動したのを覚えています。こんな神秘的な体験をさせてくれた息子に心から感謝していますね。

——山登りが好きで、山に関する知識をお持ちの友里さんらしいエピソードですね。

友里さん
そういえば、息子が６ヵ月のころにも、同じような光に関するエピソードがありました。カーテンの隙間からベッドシーツに光が差し込んでいて、息子がその光をつかもうとまだ不慣れな寝返りとズリバイで懸命に近づいていったんです。そして光を撫で、「あれ？」と怪訝な顔をして、次は舐めたりもして。赤ちゃんはまだ光に形や感触がないって分からないじゃないですか。目の前にあるものへの純粋な好奇心に導かれ、成長していくんだなと、このときも感動したことを覚えています。最近でも太陽の光に敏感で、明るくなったり雲で遮られたりすると、「ついたね」「消えちゃったね」なんて言っています。

——息子さんが生まれたことで、夫婦の関係は変わりましたか？

友里さん
夫と共通の“推し”ができたことが嬉しいですね、親バカですが（笑）。共通で大好きな人ができたので楽しいです。夫とは協力関係もより強くなったし、チーム感もあります。夫は育児休暇を取ってくれたり、父という役割をどっしりと構えてやってくれていて、こんなに器が大きくて頼りになるんだ！と日々感謝しています。息子の名前の「森」という字にあるように、家族３人が一人一人の木を大切に、これからも豊かな家族の森を築いていきたいと思っています。

〜後編に続く

PROFILE

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2020年生まれの男児の母。サンリオ商品プランナー、着物着付け師を経て、「自然に触れる喜びを多くの女性たちに感じてもらいたい」との想いから表現活動をスタート。現在は講演や執筆、アウトドアウエア・ギアの企画開発、オリジナルブランド「ＭＯＵＮＴＡＩＮ ＤＡＩＳＹ ＰＲＯＤＵＣＴＳ」を手掛ける。「山スカート」を日本に広めた女子登山ブームの火付け役。ニュージーランドにてトレーラーハウスや湖畔で暮らしたのち、現在は鎌倉在住。海外や日本全国の山を旅しながら、土地の食や文化を味わうのがライフワーク。著書に『一歩ずつの山歩き入門』『山登り12 ヵ月』など。
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