先輩パパとママに聞きました!vol.105

ママになってもやりたいことは諦めない

2019/9/25
ママになってもやりたいことは諦めない ママになってもやりたいことは諦めない

「子どもが生まれたら、やりたいことができなくなる」、そう思う方も多いかもしれません。けれど、もしかすると、諦める必要はないのかもしれません。子育てしながら仕事も趣味のバンドも続け、『meine(マイネ)』というインタビューZINEを作るなど精力的な活動している岸野恵加さんにお話を伺います。

ーーまず岸野さんのお仕事から伺えますか?

漫画やアニメのニュースを配信するウェブの編集をしています。13人のチームの部署で副編集長として働いています。

ーー編集というと忙しいイメージですが、妊娠したときの心境はいかがでしたか。

実は編集の仕事に憧れて転職して1年足らずでの妊娠でした。予期せぬ出来事だったので「会社になんと言えば……」という戸惑いがありましたが、上司が「めでたい」と喜んでくれて。当時は小さい会社だったので前例がなく、産休育休の第一号でした。仕事を続けられるのかということと同時に頭によぎったのがバンドのことです。学生時代からドラムをやっていて、夫を含めた4人で活動していました。妊娠発覚の2ヵ月後に新譜の全国流通を控え、全国ツアーをまわる予定で……。

ーーそのツアーは結局どうなったのでしょうか。

妊婦なので全国をまわるのはさすがに難しかったのですが、車で関西や四国など6〜7ヵ所ぐらいをまわって妊娠8ヵ月ぐらいまで体調を見つつドラムを叩いていました。妊婦健診の結果はいつも順調だったので、もしかすると適度な運動になっていたのかな……(笑)。

ご自宅のリビングの一角には思い出の写真のともに、音楽を作るスペースが。ご主人はギターを担当していて、休止中のバンドでは一緒に活動していた

ーー産後は仕事・子育て・バンドの三足のわらじだったのですか。

産後4ヵ月くらいの頃にはすでにライブのステージに立っていました。他のメンバーが男性なのでバンドにとって大事な時期なのに自分だけやれないことが悔しくて、我慢したくなかったのもあります。体調第一ではあるものの、探り探りやっていました。息子をスタジオに連れて行って、店員さんに抱っこしてもらったり、息子にイヤーマフをつけておんぶして練習したりすることもありました。恐る恐るでしたが、当時は「そうしなきゃいけない」という気持ちでしたね。職場への復帰は息子が生後8ヵ月で保育園に入ってからでした。

ーーライブのとき、息子さんはどうされていましたか。

実母に見ていてもらうこともありましたが、毎回は難しく、連れて行くこともしばしばありました。子守りをしてくれる友だちがいて、みんな子育て経験がないのにツアーなどへは旅行感覚で付き合ってくれたので感謝しています。

ーーなんと2013年にはアメリカでもライブをされたとか。

息子が1才半の頃です。以前から出てみたかった『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』に応募してみたら選考に受かったので。10日間くらいの長期ですし、子どもにも何かいい刺激があるかもと思い、最初から連れて行くつもりでした。そのときも子守りの友だちを帯同して……。

昼間のライブでは息子さんも会場に。「物販を手伝ったり、できるだけ母の近くにいようとスネアドラムにしがみついてみたり。現地で購入した『TEXAS』Tシャツが父とおそろい風でした」

ーー実家に預けようという考えはなかったのですか?

母は割と近くに住んでいるので子どもが熱を出したときに来てもらうことはありますが、長期間離れるとなると私が不安で。息子は超がつくママっ子だったので、私がいなくなったときのリアクションがすごくて……。ライブの際、出番の30分だけと楽屋で友人に預けても、遠くから泣き声が聞こえてくるんですよ。本人にも友人にも申し訳ないというのもあって、「続けられるのかな」という気持ちは常にありました。

ーー2015年にバンドの活動を休止したのもそういった理由がありましたか?

そうですね。他にもちょうどメンバーが脱退するタイミングでバンド全体のバランスが崩れてきて、良くない雰囲気を家庭にまで引きずったり、ドラムを練習する時間が取れなくて、バンドが向かう音楽の方向性に実力が足りなかったり……。色々と理由はありました。脱退を申し出て、最終的に休止と決まったときは、そうした葛藤から解放されてホッとする気持ちや、子どもと過ごす時間が増えるうれしさもありましたが、正直“諦めた”という感覚は大きかったです。

ーーその悔しさにはどう折り合いをつけましたか?

きっとそれが『meine(マイネ)』に繋がったんだと思います。何かをやりたい気持ちが大きくて。仕事は楽しいけど、仕事以外でも何かを表現をしたいという欲求がきっと常にあるんでしょうね。

2018年11月に1号を発行し、翌年5月に2号を発行。現在は3号の企画を構想中

ーー『meine』はどんな内容ですか?

私は出産が周囲の同年代より少し早かったから、子育ての情報が全然入ってこなかったんです。でもSNSのタグで「生後◯ヵ月」と検索し始めたら、同じ月齢の赤ちゃんの写真がたくさん見られることに気づいて、ものすごく参考になりました。「まだ寝返りしていないけど大丈夫」とか、安心できましたね。それに面白いママがたくさんいることが分かって。でもSNS上だとほんの少ししかプライベートや、奥底にある思いが見えないから、じゃあ自分で気になるママにじっくり話を聞いて紹介するインタビューするZINEを作ってしまえ、と思いたち、『meine』ができあがりました。

ーー気になったママにインタビューしてみてどうですか?

私も子どもを背負いながらバンドをやっていたけど、もっとパワフルな方に出会うことが多くて刺激をたくさんもらいます。デザイナー未経験で子ども服のブランドを始めるなんて、普通はできないと思いがちなことも、みんな“とにかくやってみよう”という感じで、やりたいという思いの強さに突き動かされている様がかっこいいなぁと。

『meine』はドイツ語で「私の」を意味する言葉。「私の思い」をしっかりインタビューすることで、読者にもパワーを伝えたいそう

ーー意外とやりたいことをやっているママがいるということですね。やりたいことをやってはいけないのではないかと思っているママもいると思いますが。

出産をきっかけに仕事をやめちゃう人もいるし、プラスそこに趣味となるとハードルは確かに高いと思います。実は、私もずっと罪悪感がありまくりでした。

ーー今でも罪悪感はありますか?

完全には消えないですが、だいぶ薄れてはきています。息子が大きくなってきて、私たちがやっている音楽に興味を持って、バンドの曲を歌ってくれたりするんです。それがとてもうれしい。漫画も読むようになったので、「お母さん、この声優さん会ったことあるの?」と聞かれて「そうだよ」と応えて「すごいね」と言われると「仕事もバンドもやってきて良かった」と思います。『meine』はまだ読めないから感想は聞けてないですけど(笑)。

ーー自分が思っているより子どもは気にしていないと。

そうかもしれません。保育園のときはお迎えが遅いほうだから、最後ポツンと残っているのを見ると、「ごめんね」と思ったけど、そこまで本人は気にしていないしそれが当たり前で育っているんですね。小学校の学童も他の子どもたちと楽しそうにしているので、“自分に子どもを合わせている”という罪悪感をずっと持ち続けてきてしまったけど、そんな風に思わなくても良かったのかもしれないですね。

取材時は2才最後の日だった娘さん。かわいいものだけじゃなく、お兄ちゃんの影響でかっこいいものも好き

ーー昔の自分にはどう声を掛けますか?

「意外と大丈夫だよ?」と言ってあげたいです(笑)。

ーーやりたいことを諦めているお母さんに対してかける言葉があるとすると何でしょう?

「とりあえずやってみよう」ですかね。やってみてだめだったらまた後で考えてもいいし。実際に『meine』を読んだ方からも「自分も一歩踏み出してみようかなと思いました」という感想をいただくことがとても多くて、うれしく思っています。でもやりたいことがあっても日々のことで手一杯で、今はとてもできないという人ももちろん多いですよね。そういう場合は焦ることはないし、動けると思った時期に踏み出せばいいと思うんです。実際に私は“自分の媒体を作りたい”という思いをぼんやり持ちながらも、数年は動き出せませんでした。あと最近思うのは、自分のやりたいを実現するにはもっと厚かましくてもいいのかもしれない、ということ。まずはできるときに一歩、踏み出すことが大切なのかもしれません。

岸野恵加(きしのけいか)

PROFILE

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2011年生まれ男児と2016年生まれ女児の母。編集者として働くかたわら、インタビューZINE『meine(マイネ)』を発行するなど活動の幅を広げている。ドラマーとしても活動(所属バンド『the mornings』は現在休止中)。
https://www.instagram.com/kemonokeika/
https://www.instagram.com/meine_magazine/

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