札幌で長く続く絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」代表の藤田進さんは、子どもと大人のための月刊新聞の編集長も務めるバイタリティあふれるお父さん。今回は、3人目の出産を振り返りながら、子どもたちの関わりを通して感じた、何気ない日常の気付きのお話です。
我が家の3人の兄妹は毎日にぎやか。それぞれ4才ずつ離れているのですが、喧嘩したりふざけ合ったり、兄妹って不思議な関係です。
次女が生まれて、2年と4ヵ月。最初は長男ひとりだったのが、1人増え、また1人増え、5人家族になった。もう、今となっては、我が家は最初っから5人家族だったのではないかと思うくらい、自然なことのように思ってる。ただ、この5人になってからは、まだ2年と4ヵ月しか経っていないってことだ。
次女を出産した時のことを思い返してみると、産前産後で妻は10日間の入院をした。その間、僕は長男(当時8才)、次女(当時4才)との3人暮らしで、朝、長男を小学校へ送り出し、長女を実家に預けて、仕事へ出かけていたのだが、母親不在の間、どうやりくりしていたのかは、もう、あまり覚えていない。ただ、3人で協力したり助け合ったりして、機嫌よく乗り越えたような気がしてる。それに、おじいちゃん、おばあちゃんの助けがあるのは、本当にありがたい。
長男と長女からしてみると、「新しく家族が加わる」という、これまでの家族の有り様が変わってしまう大きな出来事で、そりゃ戸惑いもあるし、葛藤もあるだろうが、とても大切な存在として受け入れてくれた。
変化っていうのは突然やってきて、そして、少しずつそれが当たり前になっていく。いまとなっては、僕たち家族にとって、新しく加わった妹は、そりゃもう、かけがえのない存在だし、最高なギフトだ。なんというか、とっても可愛いし、愉快な人に育ちつつある。
我が家では、生まれた時から、わらべ唄で遊ぶ。岩手県・遠野の阿部ヤヱさんから教えていただいた伝承のわらべ唄は、動きや遊び、言葉ひとつひとつに意味があって、人を育てる知恵がつまっていて奥深い。乳児期には、育ちに合わせて7つ遊びがあり、僕たちも3人目なので多少の余裕があり、次女とは少し落ち着いてわらべ唄で遊ぶことができた。
目を見て語りかけながら、何度も繰り返して同じ動きをする。まだ見ることも動くこともままならない0才児なのだが、こちらをじっと見て模倣しようとする。真似をしてくれるととても嬉しい。いちいち「おー、すごいすごい、上手だねぇ」と感動する。まだ言葉も話せないけど、心と心が通じ合っているように感じて、この上なく嬉しい。だから、何度もやりたくなって、目が合うたびにわらべ唄を通して、語りかけてしまう。もちろん、兄妹たちも一緒になって、次女にわらべ唄をしてくれる。
真似をするって、生きるための基本的な力。何事も誰かの様子を見て、模倣をしながら、覚えていく。親としては、そんな真面目なことも少し考えつつわらべ唄をするせいか、兄妹同士のほうが自然にのびのびとやっていたりする。それにとても楽しそう。
そんな様子をみながら、「育ち合う」ってこういうことなのだと思わされる。大人と子どもの関わりも大切だけど、子ども同士の関わり合いの中で起こることの方が大切なのかもしれないなぁ、と。なんか、お互いが成長し合うっていう姿が見れるからか、とても感慨深く、そして、親との関わりって、人生の中ではほんの一時期に過ぎないということにも気がついて、すこし寂しく、いまを愛おしくも感じた。
PROFILE
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北海道むかわ町出身。札幌育ち。えほんとおもちゃの専門店「ろばのこ」代表、庭ビルの運営に携わり、子どもと大人のための「庭しんぶん」編集長。女の子と男の子の二児の父、まもなく3人目が家族に仲間入りする予定。
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