二人の男の子のママであり、写真家として活動する原 未来さんの、子育ての楽しい思い出。今回は「産後」がテーマです。
さぁいよいよ産後の実践編です!
出産という仕事を終えてから、しばらく夢の中にいるような感覚でした。すっかり身体の力が抜けて宙に浮いているような感覚。気を失ったように眠りに落ちました。こんな経験は初めてで、いろいろな例えがありますが、私にとっては日本一周全力で走った後に温泉に浸かって、そのままマッサージを受けた後のような感じです。目覚めてからは身体中がガクガク。これまでも、たぶんこれからもきっと味わうことの無いであろう感覚でした。
出産した産院は産まれてすぐに母子同室を推奨しているところで、必要最低限しか看護師さんが部屋に来てくれないところでした。二人目以降は経験もあるし、その方が家のようにゆっくりできるのでそれはそれでいいのですが、一人目のときは急に赤ちゃんと部屋に二人っきりにされて、おっかなびっくりヒヤヒヤでした。
今なら赤ちゃんとの接し方もよく分かるのですが、当時の私にとって返事の返ってこない相手に話しかけ続けるのはかなり難易度の高いことでした。次男のときは話しかけまくって長男と一緒に笑わせることに必死になって毎日大笑いしていたので、今次男がすごく笑い上戸なのも、もしかしたらそのときのことが関係しているのかなあと思ったりもします。
それ以外に大変だったことは、おっぱい問題です。先輩ママからは出産したら母乳パッドがないと溢れて溢れて大変!と聞いていたのにまったく出ない。
赤ちゃんに飲んでもらってもどうも出てこないみたいで、泣き叫んでいるような状態が続き、仕方なくミルクを使ってしばらくは凌ぎました。看護師さんにマッサージをしてもらったりしてなんとか出るものの、赤ちゃんの吸う力で今度はヒリヒリ痛みが出てきてしまって大変でした。
身体中アチコチ痛くて不安なまま退院して、今度は本格的に赤ちゃんと二人っきりになりました(主人は仕事で朝から晩までいなかったので、実質二人っきりの長い長い日々が始まりました)。
一日中抱っこして母乳をあげる→抱っこのまま寝かす→また目が覚めて泣く→抱っこ→母乳→寝かす→泣くのエンドレス。自分のことは何ひとつできない状態。産後うつだったのか、涙がポロポロ勝手に流れていました。
それまで仕事をしていて、外でいろいろな人に会って、好きなときに好きなことを自由にしていた私は、ひとりとても暗い暗い洞窟に迷い込んだような気持ちでした。
それを救ってくれたのはカメラでした!これまでもずっと身近にあったカメラで、授乳や泣いている姿を撮った写真を改めて見ると、なんだかスーッと気持ちが楽になった気がしました。
他には今まで友人とは仕事の後に外で集まることが多かったのですが、私が出産してからはみんなが仕事帰りに我が家に寄ってくれることが増えました。みんなで夕飯を食べたり、赤ちゃんをベビーバスに入れるのを手伝ってもらったりと有難く心強かったことを思い出します。
昼間はベビーカーに赤ちゃんを乗せ、ひたすら歩いていました。通りすがりのおばあちゃんが話しかけてくれたりして、とても嬉しかったです。赤ちゃんも外に出ると気持ちが良かったのか、家の中にいるときよりもご機嫌な時間が多かったように思います。
不思議なのは二人目のときには長男がいてくれたおかげなのか、産後はハッピーな気持ちでいっぱいだったこと。赤ちゃんと二人のときはゆっくりとした時間が流れ、編み物やクッキー作りをしたり、赤ちゃんが少し泣いていても様子を見る心の余裕がありました。
長男のときにはとても苦労した寝かしつけも、次男のときにはちょっと目を離したすきに眠っているというような状況。やっぱり子どもとママは心の奥底で繋がっているよう。
赤ちゃんはお母さんの心をよく分かっているのか、お母さんが落ち着いていると赤ちゃんも落ち着いていたように思います。子育てもあまり神経質にならず、こちらがゆったりと構えていると、それが子どもにも伝わっていくのかなあと思います。
PROFILE
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写真家。2人の男の子のママ。高校卒業後に渡米し、写真家・ホンマタカシ氏のアシスタントを経て独立。
http://miraihara.wixsite.com/work
(制作 * エチカ)