先輩パパとママの毎日コラムvol.284

1+1+1+1=∞の日々「抱っこ紐にしか乗ってくれなかった息子」

2019/11/19
1+1+1+1=∞の日々「抱っこ紐にしか乗ってく... 1+1+1+1=∞の日々「抱っこ紐にしか乗ってく...

編集者・岸野恵加さんが綴る、上のお子さんとの抱っこ紐の思い出です。

ベビーグッズを用意していて、「どれを選べばいいのだろう」と多くの人が壁にぶち当たるであろうものの二大巨頭が、抱っこ紐とベビーカーだと思います。

ベビー用品店に行けば、「これは満天の星空かな……?」と思うほどの種類があり、機能や価格もさまざま。出産前に検討してみても、決めきれずに途方にくれ「……よっし!産まれてから考えよう!」と購入を先送りにする人も多いことでしょう。

私ももれなくそのひとりで、ネットで血眼になって情報収集を繰り返し、インサートなしで新生児期から使え、しっくりくるデザインであまり人と被らない(ひねくれ者ゆえの思考)抱っこ紐に出会い、「これだ!」とピンと来てやっと購入したのは、出産の直前のことでした。

初めての装着は、産後数週間里帰りしていた実家から自宅までの電車。1時間弱の道のり。まだまだ儚げな存在の息子が抱っこ紐からずり落ちないか、とてもドキドキしましたが、抱かれた息子はぐっすりと寝続けてくれ、静かに帰宅することができました。今思えばこのときから、彼の抱っこ好きの兆候があったのかもしれません。

自宅に戻り1対1での日中の育児が始まると、私はとにかく緊張しており、泣き止まないときに慌ててしまうことも多く。オムツを替えても授乳をしても何をしても息子の激しい泣きが収まることはなく、あの手この手で対応してみるも、最終的には抱っこ紐に入れて揺れたり歩いたりしていると深く寝てくれる、ということに気づくのに、そう長い時間はかかりませんでした。そう、息子はとにかく抱っこ好きで、抱っこしてもらいたいという欲求が叶わないと泣き止まない子だったのです……(眠りたいときはとりわけそう)!

その法則に気がついてからは、寝かしつけのために近所を歩きまわることが増えました。泣き止まないときはすぐ、とにかく抱っこ紐に息子を入れて歩きました。夜中でも例外ではなく、夫と息子と深夜の街を歩き、何とか寝かしつけるということも何度もありました。

おんぶしたままドラムを叩く/抱っこしておでかけ

息子はさらに、布団に着地させようとすると途端に目を覚ましてしまう、とてつもなく高精度な背中スイッチの持ち主でもありました。着地に失敗してイチから寝かしつけをやることを想像すると心が折れ、2時間ほどの昼寝の間ずっと、抱っこ紐でおんぶをして寝かせたまま家事を片付けるのが日課に。バンドの練習中も、防音イヤーマフを着けておんぶで寝かせ、おんぶしたままドラムを叩くということを3才近くまで続けていました。私の肩と腰、よく耐えてくれたものです。

息子の乳児時代を思い出すと真っ先に、あの頃はとにかくくっついていたなあ、一心同体だったなあ、と感じます。当時は本当に本当に大変で、近所の月齢が近いママたちと遊びに行って、すんなりベビーカーに乗って移動してくれる友人の子どもを羨ましく見つめながら、私は当然のように抱っこ紐に息子を入れ、ベビーカーは荷物運搬用カートと化しているのが常でした。

ベビーカーに乗せると泣く息子

「これは息子の個性だったんだな」というのは、5年後に下の娘を産んで初めてわかったことでした。娘は授乳したまま寝落ちてしまうことも多々あり、なんならタオルと戯れて勝手に寝てしまうことも一度や二度ではなく、「赤ちゃんってこんなに楽な生き物だったっけ……?」と肩透かしを食らい続け、寂しさすら感じてしまうことも。手が掛からないことを寂しいと感じる日が来るなんて、息子を産んだばかりのときは想像もしていなかったです(笑)。娘はベビーカーも全く泣かずにすんなり乗ってくれる子で、逆に抱っこ紐では泣き止まないこともあったため、「えっ!赤ちゃんって抱っこ紐があればなんとかなると思っていたのに……!」と驚いたことも。

ぷにぷにのほっぺ

酷使した息子のときの抱っこ紐は、腰ベルトの生地が広範囲にわたって裂けて中のスポンジがむき出しになり、ヨダレをたっぷり吸収した肩ベルトは見事にマーブル模様に変色。娘の出産準備をしているときに久々に引っ張り出して、想像以上の劣化ぶりに驚きました。娘にお下がりして使える状態では到底なく、新しいものを買うことにしました。夫には「ボロボロだし捨てなよ」と言われたのですが、私にはそれが、自分が初めての育児を必死で頑張った証のように感じられて。いまだにどうしても捨てられず、宝物のように大切にとってあります。

8才になった息子は、抱っこをせがむことはもう当然なくなりました。手を繋いで歩いてくれることはまだありますが、それも数年したら無くなるのかな、と思います。そう思うと、あれだけ肌を合わせていた日々は貴重だったんだなあ、と、大変だった日々もとても愛おしく感じるのです。

岸野恵加(きしのけいか)

PROFILE

岸野恵加(きしのけいか)このライターの記事一覧

2011年生まれ男児と2016年生まれ女児の母。編集者として働くかたわら、インタビューZINE『meine(マイネ)』を発行するなど活動の幅を広げている。ドラマーとしても活動(所属バンド『the mornings』は現在休止中)。
https://www.instagram.com/kemonokeika/
https://www.instagram.com/meine_magazine/

RELATED 関連情報はこちらから

RANKING アクセスが多い記事をランキング形式でご紹介。

妊娠・出産・育児は、
わからないことがいっぱい。
悩み過ぎず、自分のペースで
行える育児のカタチを紹介していきます。
コモドライフとは?