2人の子どものママでもあるライター・小宮山さくらさんによる等身大の子育てコラム。
はじめまして。小宮山さくらと申します。ライターをしています。5才の女の子と、2才の男の子の母親です。子育ての専門家でもなければ有名人でもないわたしが、みなさまになにか有益な言葉をお届けできるだろうか……とあれこれ悩んだのですが、せっかくいただいたこの場所ですので、喜びと不安の入り交じる日々を送っている妊婦さんや、子育て真っ最中のパパやママさんたちの息抜きになるような、そんな言葉をお届けできればよいなと思います。とてもとても個人的な、半径2mくらいのことしかお伝えできませんが、どうぞよろしくお願い致します。
さて、赤ちゃんとの暮らしは、初めての連続。みなさんもご存知のとおり、大変なことも多いです。妊娠&出産は言わずもがな、生まれたら生まれたで、眠れない、休めない、出かけられない、自分のことはなにもできない、おしゃれどころか、化粧水を塗る時間すらない……。ああ、思い出すだけで頬に涙が……。
でも、でも、でもでもでもでも。
それが、なぜか、楽しいんです。赤ちゃんが、かわいいんです。毎秒毎分毎時間、たくましく育って行く我が子の命のパワーを目の当たりにしていると、心の底から「すごい!」「かわいい!」という猛烈な気持ちが沸き上がって、コントロールできないくらいのプリミティブな幸せに包まれます。
なんなんだろうな、もう。
泣いててもかわいい。寝ててもかわいい。おっぱい飲んででもかわいい。げっぷもかわいい。うんちもかわいい(特に新生児のうんちは甘栗みたいなにおいで、ほんとうに心癒されます)。24時間かわいい。
赤ちゃんが笑うだけで、その場がぱぁっと明るくなります。赤ちゃんの寝顔を見つめるだけで、寝不足の辛さもふっとびます。このかわいさは、尋常じゃない。ヤバい。赤ちゃん、ほんとに、ヤバい生き物です。
というわけで、いまだかつて体験したことのない「かわいい」攻撃を浴びたわたしは、考えました。この気持ちを、次はどこへ届けようかと。もちろん、夫と二人で「かわいいね、かわいいね、かわいいよね?」と言い合っていればそれでよいのですが(実際にしてましたし……)、これだけの強い気持ち、強い愛。私だけでは受け止めきれない! どこか、次の場所へとパスしなければ……。
そこでわたしは、まるで投げられたボールを返すように、この気持ちを本人に伝え返すことにしました。心の中でただ思うのと、言葉にして相手に伝えることの間には、とても大きな距離があると思うから、しっかり、きちんと、はっきりと、声に出して。
おはよう、大好きだよ、大好きだよ、大好きだよ、かわいいね、たのしいね、あなたのことがほんとうに大切だよ、あなたはママの宝物だよ、生まれてきてくれてありがとう、おやすみ、大好きだよ、明日もたくさん笑おうね、たくさんあそぼうね。大好きだよ、大好きだよ。
繰り返し繰り返し、毎朝毎晩、目を見て、伝えます。一般的に子どもの記憶の形成は3才頃からと言いますから、わたしの言葉はどこにも残らないかもしれません。けれど、この気持ちをどうしても声にして伝えたい。
記憶にはっきりとは残らなくても、わたしの何千回もの「大好きだよ」の余韻が、かつて自分が誰かに無条件に肯定されたという経験が、未来のこの子たちを支える糧になりますように。それは、はかりきれない幸せをくれた我が子への、せめてもの恩返しといえるのかもしれません。
先日、5才になった娘にいつものように「大好きだよ」と声をかけると、「うん、知ってるよ」。そんなふうに言葉を返されたのは初めてだったのでちょっと驚いていると、
「だってママは、すーちゃんが赤ちゃんのころから、まいにちまいにち大好きだよって言ってくれるでしょ。だから、知ってるんだよ」 との返事。
「ねえ、すみれ」
「なあに?」
「大好きっていわれたら、どんな気持ち?」
「それはね、それはね。とっても、うれしいきもち。よろこぶきもち!」
PROFILE
小宮山さくらこのライターの記事一覧
ライター。クリエイターへの取材やインタビューを中心に、『カメラ日和』『tocotoco』(第一プログレス)などの雑誌、書籍、広告などで活動。参加書籍に『無名の頃』(パイインターナショナル)、『脇阪克二のデザイン』(PIEBOOKS)、『エジプト塩の本』(美術出版社)、『猪熊弦一郎のおもちゃ箱』(小学館)など。目下、2児の子育て中。
(制作 * エチカ)