先輩パパとママの毎日コラムvol.5

なんとなくおかあさん「つわりのトンネルに入ったら」

2016/4/15
なんとなくおかあさん「つわりのトンネルに入ったら」 なんとなくおかあさん「つわりのトンネルに入ったら」

2人の子どものママでもあるライター・小宮山さくらさんによる等身大の子育てコラム。

つわり。

今日のテーマはつわりです。

うう。つらい。書くだけでつらいです。TSUWARI。って、アルファベットで書いたらちょっとおしゃれかもと思ったけど、やっぱりつらいものはつらいですね。

わたしは専門家ではないので、自分の経験を元にお話することしかできませんが、約10ヵ月の妊婦生活のなかで、つわりはやっぱり相当ハードなできごとでした。

つわりの重さには個人差があります。わたしのまわりでも、「まったく普段と変わらなかった!」「いつもよりお腹がすいたかなぁ、ぐらい」「ただただ眠くて眠くて……」「とにかく気分が落ち込んで常にグロッキーだった」「何も食べられなくなって入院した(これは「妊娠悪阻」というものですね)」「え、出産前日まで吐いてたよ……」などなど。うーん、バリエーション豊富すぎ。本当に、こればっかりは、そのときにならないと分かりません。

わたしのつわりは、体調と精神、両方に来るものでした。食べるのが苦痛、24時間船酔いしてる感じ、嗅覚はやたら敏感に。電車に乗ると、香水の香りやおじさまの整髪剤の香りが、もう、無理。無理無理無理です。突然「レンコンとササミにドレッシングをかけたもの」というやたら具体的なメニュー(そんなの今までいちども作ったことないのに!)が食べたくなり、夫に急いで作ってもらったことも。

ところがいざ目の前にそれが来ると「……やっぱりなんか違う……ごめん」と一口も食べられず終了。そんなことが日常茶飯事でした。精神的にも常に落ち込んでおり、イライラの矛先はいつも夫。妻の豹変ぶりに夫も相当戸惑っていたのではと思いますが、わたしの心の中には「男にはつわりがなくていいよな……なんでわたしばっかり……」と黒い気持ちが渦巻いており、彼の気持ちを慮る余裕はこれっぽっちもありません。わたしの突発的なわがままを黙って聞いてくれた夫に、今では感謝しています。

おなかもまだぺったんこなので、赤ちゃんがいる実感もなく、けれど体調は確実に変化していく。しかもそれがいつが終わりかわからない!本当につらいですよね。専門書には「15週くらいで終わる人が多い」と書いてあるものの、こっちは一秒でもはやくこの辛さから解放されたいですから、「くらい」じゃ困る!誰かがちゃんと「○月○日に終わります」と明言してくれたらどれだけ救われるか……。そんな考えても仕方ないことばかり考えていました。

少しでも楽になりたくて、ネットで「つわり 軽減」「つわり 終わり いつ」などと検索しまくる日々。調べて試せそうなものはすべて試しました。個人的に少し気が紛れたのは、ルイボスティー、ガム、グレープフル―ルのアロマオイル、あとは、ひたすら気を紛らわすために、ドラマのDVDをだらだらと。(ジャンルはなるべく現実逃避できる設定で、テンポの良い、軽やかなテイストのものがオススメ!)振り返れば、「気を紛らわす」というのはなかなか有効でした。つわりの辛さとまっすぐ向かい合ってもいいことはないので、ひたすら逃げる方法を探していました。逃げて、逃げて、逃げてー!って感じ。で、逃げまくって、もう逃げ場がない……って絶望していたある日、突然終わりがやってきました。

ある朝目覚めたら、気分スッキリ、ごはんは美味しく、外を歩けばおひさまぽかぽか、世界はすべて美しい……。いわゆる「安定期」の入り口ですね。こんなに変わる!?って、自分でも驚くほどの、出口でした。

つわりって、言ってみれば、長さの分からないトンネルです。 だけど、絶対に終わります。

絶対に、絶対に、終わる日が来るんです。

そして、いざ終ったら、「しんどかった気はするけど、思い出せない!」という人がとても多いんです。いままさに渦中にある方には信じられないかもしれませんが、本当にそうなんです。

実際にわたし自身、ここに書いたできごとはあくまで記録や記憶であって、実際の「気持ち悪さ」の感覚は、全然思い出せません。これって陣痛のつらさに似てるかも。終れば、本当にもう終わり。決して追体験はできません(したくないけど……)。でも、自分がトンネルの中にいるときは、そんな外からの声を聞いたって、つらいだけですよね。わたしもそうだった。だからいまのわたしに言えるのはただ、「出口のないトンネルはないよ」「やまない雨はないよ」ということだけなのです。ふがいないことです。

あなたがつわりで泣いている間も、赤ちゃんは、あなたのお腹の中ですくすく育っています。

だから、大丈夫。

いまつわりで辛い日々を送る妊婦さんたちに、一日もはやく出口の光が射しますように。

甘えられるものにはすべて甘えて、抜ける手はすべて抜いて。どうぞ、少しでも穏やかに、長さの分からないトンネルとお付き合いできますように。

小宮山さくら

PROFILE

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ライター。クリエイターへの取材やインタビューを中心に、『カメラ日和』『tocotoco』(第一プログレス)などの雑誌、書籍、広告などで活動。参加書籍に『無名の頃』(パイインターナショナル)、『脇阪克二のデザイン』(PIEBOOKS)、『エジプト塩の本』(美術出版社)、『猪熊弦一郎のおもちゃ箱』(小学館)など。目下、2児の子育て中。

(制作 * エチカ)

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