現在子どもたち向けに「アートワークショップ」を行っている池田朗子さんは、ママになる前からもご自身もアーティストとしても活躍。子どもと楽しむアートライフをちょっとのぞかせていただきました!
息子に「ちょっと待って」「お口にいれてはダメ」と声をかけてやっとわかるようになった頃、子ども用のクレヨン(※1)をネットで手に入れ、触らせてみることに。最初は、玩具のように並べたり 折ってみようとしたり、まさに未知との遭遇!この瞬間「あ、息子は『描く』ってこと自体、初めてなんだ!」と実感して、とても特別な瞬間をみている感動がありました。
はじめは、家にあるカレンダーやチラシ(※2)の裏に母の私が描いてみせました。イヤイヤ期でもある2才児、無理やり描かせようとするとかえってヘソをまげてしまうことも。大人も子どもになったつもりで「楽しそうな事やってるわ」と、リラックスして手を動かしてみせます。
「ぼくにもつかわせて」とこちらの画材をとりあげてきたら「しめしめ」と任せてしまうと、案外一人でグルグル、グチャグチャと描きはじめました。それが「描く」ということの第一歩!歩き出したときの一歩と同じ新しい体験をしている!と思うと、「描く」の原点を見ているよう。
とはいうものの、子どもが一人で描いているのをずっとみているのもツマラナイ。傍で見てるだけだと、ツイツイ「汚さないで」「もっとこうやって」と余計な声かけをしそうになるし。それで描くのが嫌いになってもらっちゃ困るし……。
ということで、母の私もその絵に参加して、一緒にコラボレーション(共同制作)しちゃうことに。やり方は簡単!
子どもの描いた線の間を今度は母親である私が選んだ色で塗りつぶしていくのです。 好きな花や風景を思い浮かべても良いし、その日はなんだかムシャクシャするって気分だったら黒やグレーなんかで黙々とぬり絵の作業をしちゃうと案外スーっとするものです。
初期の頃の子どもの「描画」は「なぐり描き」とも言われますが、その線を描きながら、「力加減」「運動」「色の強弱」「色の選択」などなど、子どもは色んな実験をくりかえしています。その体験は、はじめて描く時期にしか出来ないのでは?と私は思います。大きくなるにつれ目的をもって描くようになり、なぐり描きの体験を思い出すこともないかもしれない。でも、この色や線との出会いの時間が「たのしかった」「おもしろかった」と頭の何処かで残っていけば良いなぁと、「なぐり描き」と「ぬり絵」の共同作業はしばらくの間、小さな習慣になりました。
小さな子どもの集中力はもっても10分位、その間隣で、大好きな大人が一緒に楽しんでくれた!というのもその記憶に残るかもしれません。
PROFILE
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アーティスト。京都市立芸術大学大学院修了後、ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アート&デザイン修了。国内外での個展・グループ展のほか、こどもからおとなまで、鑑賞者の為のワークショップを美術館他で、おこなう。2008年に作品集『光景―their site/your sight』(青幻舎)を出版。現在は子どもたちに絵や粘土工作の指導を行う。
(制作 * エチカ)