アメリカ・ミシガン州で暮らす人気ブロガー・ジョンソン祥子さん。ママのやさしい目線で綴った、妊娠と出産、そして愛息子・一茶くんの子育てのこと。
「本当の兄弟みたいになったらいいな」と思いながら、一茶を愛犬マルと一緒に育ててきました。
子どもが生まれたら犬と一緒に育てたいとは前々から思っていたけれど、「先住犬であるマルを一茶と同じくらい大切にしなければ」という気持ちも、当時は強かったような気がします。マルは、一茶が生まれる前、血のつながった家族のいないアメリカで、私に寄り添ってくれた大切な家族であり、ともだちだから。
そして実際、「兄弟」にすべく、生まれて間もない頃から一茶とマルを一緒の空間で過ごさせていました。
別々の部屋で寝ていても、一茶の移動式のベッドをマルのそばにそっと持って行ったり、着替えなどの身の周りの世話もなるべくマルのいる空間でしたり。絵本を読むときは、主人公の名前を「マル」に替えて読んだりしていました。
意識して「近くに」という気持ちもあったけれど、それは1日の大半を割かれる一茶のお世話中もマルが寂しくないようにという、私なりの工夫でもありました。
一茶をスリングに入れて、マルの散歩に行くのは、1日の大きなイベント。
雨の日も、風の日も、気温がマイナス10度(!)のときも、いつもの散歩コースを毎日40分くらいかけて歩いていました。
一茶は、赤ちゃんだったけれど、「今日は青空が清々しいよ」とか「マルちゃんが草をクンクンしているよ」なんていう風に、とにかく目に映ったことを言葉にしていました。後で知ったことだけれど、乳児期の赤ちゃんにしゃべりかけるのは、言葉の発達の面からとても大切なことだそう。でも、私はマルとこんな風に過ごす時間を、ただ胸の中にいる一茶とシェアしたいという気持ちで、ずっとおしゃべりをしながら歩いていたんです。
離乳食が始まると、マルが自ら一茶に近寄ってきてくれて、ふたりの距離はぐっと近くなりました。
毎回、一茶の椅子の下にさりげなく寄ってきて、伏せの姿勢で待機するマル。一茶はこんなに小さくても、マルは自分の食べこぼしが好きだと知っていて、食べかすのついた手を振り回してみたり、食べ残しのあるお皿をひっくり返してみたり、なんとかコミュニケーションをとろうとしていました。
赤ちゃんは「わかっている」って言えないだけで、私たち大人が思うよりずっと色々なことを理解しているんだと、ふたりのやりとりから学んだ気がします。
こんな風にふたりを育てる中で気を付けていたのは、あまり神経質にならず、ケガなどの危険さえ及ばなければ、おおらかな気持ちで見守ってあげること。
元々アレルギー体質の場合は注意が必要かもしれませんが、ほんの少しくらいなら顔をペロっとされても健康に害はないし、赤ちゃんというのは現代人である私たちが思うよりもずっと強いものだと思うんです。
現に一茶は大きな病気どころか、この5年間風邪も数えるくらいしかひいたことはありませんし、「乳児期に犬や動物と暮らした子は、その後喘息や病気になりにくい」なんていう研究結果もあるくらいです。ふたりとの暮らしは、「人間も自然の一部なんだ」という現代人の私たちが忘れがちな事実を思い出させてくれる気がします。
初めましてから5年。今でも変わらず仲よしのふたりですが、当時と大きく変わったことが1つあります。 それは、「兄弟みたいに育てよう」と思っていた私の気持ち。
ふたりは、私が想像したよりもっと深い絆で結びついて、「人と犬はこんな関係になれるんだ」と、私たちに新しい世界を見せてくれるのです。
お世話をする以外に、私たち親が一茶に教えられたことはあまり多くないけれど、これからも私たちにできることは、ふたりが互いを尊重しながら一緒に過ごせる環境を整えてあげること。大人が残りの人生をかけても見い出そうとすること、既に知っている子どもと動物。彼らから「学ばせてもらう」という気持ちで、これからもふたりとの暮らしを楽しみたいなぁと思っています。
PROFILE
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写真家、ブロガー。アメリカ人男性との国際結婚を機に渡米。在米12年目。現在は夫と息子の一茶君、柴犬のマルとともに、アメリカ・ミシガン州に暮らす。最新刊『すっきり、楽しく、自由に暮らす』(新潮社)発売中。
ブログ「Maru in Michigan」: http://shibanomaru.blog43.fc2.com/
Twitter: https://twitter.com/shibanomaru
(制作 * エチカ)