子育てエール!専門家による、ママパパ応援コラムvol.91

出産する産院は何を基準に選べばいい?産婦人科医が考える産院選びで大切なポイントとは

2021/3/13
出産する産院は何を基準に選べばいい?産婦人科医が考... 出産する産院は何を基準に選べばいい?産婦人科医が考...

妊娠がわかったら、早めに出産する産院を決めたいですよね。でも、とくに初めての妊娠だと、「なにを基準に選んでいいか分からない」という方が多いのではないでしょうか。 そこで今回は産婦人科の天神院長に、産院を選ぶときのポイントをお伺いしました。満足のいく出産ができるよう、自分に合った産院を選べるとよいですね。

産院の種類は病院と助産院のほかにもさまざま

出産できる施設は大きくわけると病院・助産院がありますが、病院のなかにも区分があり、それぞれに特徴があります。

●病院

・個人病院、クリニック

産婦人科医が個人で開業している施設です。各施設に個性があり、たとえば出産方法なら分娩台での出産以外に、フリ―スタイル分娩や無痛分娩を取り入れているところなどがあります。

ほかにも、入院中の食事が豪華、母親学級が充実している、産後にエステが受けられる、シャワー・トイレ付きの個室があるなど、サービスも施設によりさまざま。各施設に出産方法や母乳育児について考え方や方針があるので、ゆずれない希望がある場合は施設の方針と合っているか確認しておくとよいですね。

なお、妊婦さんに合併症が見つかったり、赤ちゃんに異常が見つかったときなどは総合病院や大学病院に転院となる場合もあります。万一を考え、提携先の病院がどこなのかも確認しておくと安心です。

・総合病院、大学病院

産婦人科だけでなく内科や外科など主要の診療科がある病院で、医師の人数が多い、設備が整っているなどの特徴があります。病院によっては、NICU(新生児集中治療室)や、MFICU(母体・胎児集中治療管理室)などの高度な医療設備を設けているところもあり、合併症が起きたとき、赤ちゃんに何か問題が生じたときなどにすみやかに処置を受けることができます。

懸念点としては診察の待ち時間が比較的長いこと、大学病院では診療だけでなく、研究や教育の役割も担っているため、診察や分娩に医学生や研修医が立ち会うことがあることです。もし、見られたくない場合はあらかじめ医師に確認しておくとよいかもしれません。

●助産院

助産師が開業している分娩施設です。家庭的でリラックスしやすい雰囲気で、妊婦さんが望むスタイルの出産ができるようサポートしてくれます。パートナーだけでなく子どもが出産に立ち会えるところも。また、助産師は母乳の専門家でもあるので、母乳育児の支援がきめ細かくおこなわれるのも特徴です。

ただし、利用できるのは母子ともに正常な経過である場合のみ。医療行為ができないので、陣痛促進剤、会陰切開、帝王切開などはおこないません。もし妊娠中に問題が生じた場合は対応できる産院に転院することになるので、ご自身の妊娠リスクなどをふまえて検討しましょう。

産婦人科医が考える、産院を選ぶときのポイント

ノートパソコンを開いてペンで紙に何か書いている女性

昨今、各産院の特徴やサービスも多様化してきていて、選べる分、迷ってしまうということもあると思います。そこで、妊婦さんやご家族が重視していることや譲れない条件をリストアップして、優先順位を立ててみましょう。もちろん、優先順位を立てる際には、妊婦さんの年齢や持病など一人一人の状況も考慮する必要があります。

たとえば、よく重視される項目として次のようなことがあります。妊婦さんによって個人差はありますが、ぜひ参考にしてみてください。

【ポイント1】距離、通いやすさ

定期的な妊婦健診に通いやすいか、出産時に遠すぎないか、渋滞の心配はないか、交通費がかかりすぎないかなど、通院のしやすさを確認しましょう。出産が近くなればおなかも大きくなり移動も大変になってくることや予期せぬ体調不良なども考慮して、交通の便がよく通いやすい産院を選んでおくと安心です。

【ポイント2】出産方法

出産のスタイルも多様化していて、無痛分娩、フリ―スタイル分娩、水中出産、立ち会い出産などさまざまな出産方法があります。出産方法にこだわりたい方や、LDR室(陣痛室と分娩室がひとつになっている部屋)で産みたい、好きな音楽やアロマに囲まれていたいなどバースプランの希望がある方は産院が対応しているかチェックしておきましょう。

【ポイント3】大部屋か個室か

産院によって入院する部屋が大部屋か個室で選べたり、完全個室であったり、部屋にトイレとシャワーが完備されていたりとさまざまです。

大部屋はほかの人に気を使うかもしれませんが、近くにおしゃべりできるママがいるのは心強いですね。退院後もママ友として交流ができるかもしれません。また、費用が安くなる点もメリットです。

個室はトイレやシャワーが付いていることが多く、周囲を気にしなくてよいのでリラックスして過ごせるところが魅力です。大部屋に比べ費用が高くなるのと、ママたちと仲良くなる機会が少なくなるので、この点も考慮してどちらがよいか検討しておくとよいですね。

【ポイント4】産後のケア

母乳育児のサポート、母子同室か母子別室か、沐浴指導などの育児支援など、希望されていることがどのように対応されるのかを確認しておきましょう。母乳育児を希望している場合、助産院であれば手厚い指導やサポートが受けられますし、母乳外来があるところであれば退院後も相談しやすいですね。

なお、産後ケア宿泊型サービスや個人クリニックや助産院などでは、アロママッサージや足湯やエステなど、からだの回復をサポートするオプションがあるところもあります。

【ポイント5】分娩費用、入院費用

健康保険組合から出産一時金という形で42万円の助成金が支払われますが、これを超えた差額は自己負担となります。費用は産院によって大きく異なり、出産一時金の範囲内でおさまることもありますが、超えることも多いです。もちろん、豪華な食事や完全個室など、サービスが手厚くなるほど高くなるでしょう。

退院後も育児に費用がかかりますし、出産にどのぐらいお金をかけるのか、予算を決めておくことが大切です。

【ポイント6】妊娠リスク

妊婦さん自身のリスクレベルに適した産院を選ぶこと、これは欠かせない条件のひとつといえます。たとえば、糖尿病や高血圧など持病がある場合は大きい病院が安心です。また、ほかにも出産時の年齢が35歳以上、身長が低い、肥満、喫煙などの妊娠のリスク因子が多いときも注意が必要です。

そこで、ご自身でリスクレベル診断をおこなって、判定結果を産院選びに役立てましょう。リスクレベルを確かめる初期妊娠リスク自己評価表(※)はインターネットでも確認することができますが、妊娠が判明した産院に相談してくださいね。産院によってはHPに掲載しているところもあります。

いかがでしょうか。多くの妊婦さんが重視される項目、また産婦人科医として外せない項目などを挙げてみました。

ほかにも、女性医師がいるかどうか、小児科を併設しているかどうか、妊婦健診時の待ち時間、パートナーの職場からの距離など、ご自身が希望していることがあればそれらもリストアップして、優先順位を立ててみてくださいね。自分に合う産院がどこなのかみえてくるでしょう。

※「厚生労働科学研究費補助金医療技術 評価総合研究事業 産科領域における安全対策に関する研究 主任研究者中林正雄 2004 年」に基づく

まとめ

出産は人生において大きなイベントなので、産院は慎重に選びたいですよね。まずは出産をイメージしてご自身の希望を洗い出して、ゆずれないことはなにか、優先したいことはなにかなどをじっくり考えてみましょう。先輩ママにお話を聞くのもよいと思います。

産院の違いや母子の安全を考慮した上で自分に合った産院を選んでくださいね。

天神尚子

PROFILE

天神尚子このライターの記事一覧

産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

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