自然豊かな信州でネイチャーガイドをしながら2児の子育てに奮闘中の阿部菜々恵さん。今回は妊娠中だから経験できたこと、おなかの赤ちゃんと共に楽しんだ日々のお話です。
息子の妊娠がわかったのは春の終わりの頃でした。その頃、私はフラを習っていて、なんと半月後には発表会。悩みに悩みましたが、フラの先生とも相談して、出場することにしました。そして、先生から素敵な提案が!フラを踊るときに首にかけるレイをご存知でしょうか?あれは花や葉っぱ、貝殻などを曲の内容に合わせて輪に編んでいくのですが(トップの写真はそのときに作った森の草花と貝殻を使った手作りのレイです。)、妊婦さんは赤ちゃんが苦しくないようにとの願いをこめて、輪ではなく1ヵ所開いた状態のものを首にかけるのです。先生が特別に作ってくださったそのレイを私は首にかけ、爽やかな風と青空のもと、赤ちゃんが私と共にいるんだ、というとても幸せな気持ちで踊ることができました。
フラは、ゆったりした音楽に合わせて、風や花など自然や愛を表す手話と笑顔で踊ることが多いので、私自身いつも踊るときは幸せでした。なので、きっとおなかの赤ちゃんも気持ちいいんじゃないかしら、と体調に無理のない範囲で、その後もレッスンに通いました。気のせいか踊っているときは、おなかの赤ちゃんもくるくるとよく動いていた気がします。フラの音楽は、出産時も病室で聞きながらリラックスしたり、今はレッスンには通えませんが、時々娘を抱きながら(いい運動です!(笑))家で踊ると、娘もにこにこ、とても幸せな気持ちになります。
安定期に入った頃には、赤ちゃんのための食器(漆器)を買いに岩手に旅行に行きました。岩手は漆の産地で、せっかくなので漆をとる山のそばの工房まででかけていきました。赤ちゃんが初めて使う食器は舌触りがよくて、軽くて持ちやすくて、そして長く使えるものがよいな、と思い探しました。夫と相談しながら産まれてくる我が子への初めての贈り物、気に入ったものをみつけられてとても嬉しかったです。家に帰ってからもしばらく並べて出しては、なんだかにまにましていたものです。そしてその器は今でも息子が毎日使っています。
そして妊娠後期に入り、どーん!(笑)とおなかが大きくなってきたので、夫の休みごとにいつものお散歩コースや庭でマタニティフォトの撮影を楽しみました。
友人の林檎畑で撮ったときは、産まれたら食べに来ようね!とおなかに話しかけたり、安産のためによく歩いていた落葉松林の黄葉の前で撮ったときは、歩けるようになったら一緒にお散歩しようね、と言いながら撮ったりしました。産まれる直前には雪が降り、庭が真っ白になったので、雪が降ったよ〜雪で遊ぼうね〜!と、この頃はほんとになんでもおなかの中の赤ちゃんに伝えながら過ごしていました。
妊娠初期の頃や眠れない夜は、時間が経つのをとても長く感じたこともありましたが、こうしてふりかえってみると、妊娠中ってあっという間で、でも幸せだったなぁと思います。おなかの中にもうひとつ命があることの不思議さを、育むことの幸せを、この身体で感じられたことはかけがえのない経験だったと思います。それは赤ちゃんがおなかにいてくれたからこそ経験できた楽しい時間。私は人生の中で2回もそんなときを過ごすことができ、おなかに宿ってくれた子どもたちに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとう。
PROFILE
阿部菜々恵このライターの記事一覧
ネイチャーガイド/保育士/野草ハーバリスト
道草を愛でること、食べることがライフワーク。軽井沢周辺の森のガイド、森のようちえんの講師などを行う。子育てや暮らしの中で美味しく、楽しい自然の楽しみ方を提案。野草茶、野草料理などのワークショップなども行う。下見と味見は2016年生まれの食いしん坊な息子と2021年生まれの娘と共に。
(制作 * エチカ)