子育てエール!専門家による、ママパパ応援コラムvol.135

妊娠中の食事と栄養は、どのように管理したらいいの?【産婦人科が解説】

2022/6/23
妊娠中の食事と栄養は、どのように管理したらいいの?... 妊娠中の食事と栄養は、どのように管理したらいいの?...

妊娠中は、ママとお腹の赤ちゃんに必要な栄養をバランスよく摂ることが大切です。妊娠中の食事で気を付けること、妊娠中に必要になる栄養素、栄養と体重の管理のコツについて、産婦人科医の天神尚子先生に詳しく教えていただきました。

妊娠中の食事で気を付けること

妊娠中は、ママの健康を維持し、お腹の赤ちゃんの成長のために適切なエネルギー摂取が必要です。1日に必要なエネルギー量は年齢や日常の活動レベル、妊娠時期によって異なります。妊娠が経過するほど必要なエネルギー量は増えます(下表参照・「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より)。自分が今、どのくらいエネルギー量が必要なのか、知っておきましょう。

エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/日)

身体活動レベルⅠ(低い)
生活の大部分が座位で、静的な活動が中心(専業主婦、デスクワークなど)
身体活動レベルⅡ(普通)
立位作業、軽い運動などをおこなう(育児中の主婦、製造業、サービス業など)
身体活動レベルⅢ(高い)
移動や立位が多い、または活発な運動をおこなう(農業、運動習慣がある人など)
18〜29歳未満 1700kcal 2000kcal 2300kcal
30〜49歳未満 1750kcal 2050kcal 2350kcal

身体活動レベルⅠ(低い)
生活の大部分が座位で、静的な活動が中心(専業主婦、デスクワークなど)
身体活動レベルⅡ(普通)
立位作業、軽い運動などをおこなう(育児中の主婦、製造業、サービス業など)
身体活動レベルⅢ(高い)
移動や立位が多い、または活発な運動をおこなう(農業、運動習慣がある人など)

上記の推定エネルギー必要量に加えて妊娠中はエネルギーを付加する必要があります。

・妊娠初期(~妊娠15週) +50kcal
・妊娠中期(妊娠16週~27週) +250kcal
・妊娠末期(妊娠28週~) +450kcal

妊娠中は、ママの健康のためだけでなく、お腹の中の赤ちゃんのために栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。最近では、胎児期や新生児期の栄養状態が、赤ちゃんの将来の健康状態に関連すると考えられ、妊娠中の母親が健康的な食事を摂ることが重要と言われています。

●栄養バランスの良い食事って?

妊娠中における栄養バランスの良い食事とは、ママとお腹の赤ちゃんに必要な栄養素を十分に摂ることができる食事のこと。栄養バランスを考えるときには、「妊産婦のための食事バランスガイド(厚生労働省)」(※)を参考にするといいでしょう。このガイドでは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つに分類して説明しています。妊娠中に何を、どのくらい1日に食べたらいいかが示されていて、この5つのバランスを考えながら食事することで、妊娠中に必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。

※妊娠中と産後の食事について「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年3月)」(厚生労働省)

【妊婦が1日に食べてよい量の目安】

〇主食(エネルギーの供給源)
主なもの:ごはん、食パン、そば、うどん、中華麺、パスタなど。
摂取量:毎食 片手1つ分の量が目安
例:ごはんは茶碗1杯 食パンは6枚切りを2枚 麺類は1玉

〇主菜<メインのおかず>(たんぱく質や脂質、鉄、エネルギーの供給源)
主なもの:肉、魚、卵、大豆製品など。
摂取量:一日当たり 両手1つ分の量が目安。
例:卵1個+魚1切れ+豆腐1/3丁

〇副菜<サブのおかず>(不足しがちなビタミンやミネラル、食物繊維の供給源)
主なもの:緑黄色野菜、淡色野菜、きのこ、海藻など。
摂取量:一日当たり 両手3つ分の量が目安(調理前の状態)
例:緑黄色野菜を両手1つ分+キノコ類を両手1つ分+海藻類を両手1つ分

〇乳製品
主なもの:牛乳、ヨーグルト、チーズなど。
摂取量:一日あたりコップ1杯あるいは1カップ程度が目安。
例:牛乳200cc程度 ヨーグルト1カップ

〇果物
摂取量:一日あたり両手の親指と人差し指で作った輪の中に入る程度が目安。
例:みかん2個 りんご1/2個

●基本は1日3食+間食

基本的には、食事は1日3回が理想です。時間がないから、太りたくないからと食事を抜くと栄養不足になってしまいます。妊娠中は赤ちゃんの発育にも影響を及ぼす恐れがありますので、できるだけ3食しっかり摂るようにしましょう。間食(おやつ)は食べ過ぎには注意が必要。1日200kcalを目安に、不足している栄養を補うつもりで食べるものを選びましょう。果物や小魚、ナッツ類、ヨーグルトなどがおすすめです。

妊娠中に必要になる栄養素

バランスの良い和食の写真

妊娠中、積極的に摂りたい栄養素を紹介します。

葉酸

妊娠1ヵ月以上前から、妊娠後3ヵ月までの間に摂ることによって、胎児の神経管閉鎖障害の発症のリスクを低減することがわかっています。葉酸を多く含む食品としては、ほうれん草やチンゲン菜などの葉もの野菜、ブロッコリー、アルパラガス、かぼちゃなどの緑黄色野菜、枝豆、納豆など。ただし、葉酸は熱に弱く、水溶性のため茹でることで失われやすいという性質があります。吸収率のよいサプリメント等の栄養補助食品で補うといいでしょう。

厚生労働省は、葉酸の摂取量を次のように推奨しています。

・妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性

食事から1日240μg(マイクログラム)の葉酸を摂るのに加えて、サプリメントなどの栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取する。

・妊娠中期~後期

食事やサプリメント等で480μg摂取する。

なお、サプリメント等による葉酸の1日の耐容上限量は食事からの摂取も含め900~1000μgなので、摂り過ぎには注意しましょう。(※1)

参考:※1「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)

鉄分

妊娠するとお腹の赤ちゃんに栄養を送るために血液をたくさん必要とします。特に妊娠中期以降は、母体の循環血液量が増加することに伴い、血液が薄まった状態になり、赤血球を作るために必要な鉄分の量も増すため、生理的に貧血が起こりやすい時期となります。貧血にならないように食生活でも鉄分を補うようにしましょう。鉄分を多く含む食材は、牛の赤身肉、卵、大豆製品、カツオ、キハダ、イワシ、ほうれん草や小松菜などです。

カルシウム

母体だけでなく、お腹の赤ちゃんの骨や歯を作るために大切な栄養素。1日の推奨量は650mgと妊娠前と同じですが、普段から不足しがちな栄養素ですので、積極的に摂るようにしましょう。多く含まれる食品は、乳製品、小魚、大豆製品、海藻類など。おやつに乳製品や小魚を取り入れるなど工夫をしましょう。

DHA

胎児の脳や視神経の発達に必要な栄養素です。特に体や神経ができあがってくる妊娠後期に積極的に摂りましょう。多く含まれる食品は、サバ・さんま・いわし・さけ・あじなどです。魚料理は意識しないとなかなか摂取できないので、外食が多い人は自炊のときは魚にするなどを心がけましょう。

体重管理と、栄養管理をおこなう方法

体重計で体重を図っている様子

妊娠中の栄養バランスと一緒に管理したいのが体重。妊娠中に太りすぎると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。逆に、妊娠前から痩せている人が妊娠中の体重増加が少ないと低出生体重児を出産するリスクがあります。適正な体重増加を目指しましょう。

妊娠中は、お腹の赤ちゃんに栄養を与え、分娩・産後の授乳期に備えるために、体に脂肪がつきやすくなります。その上、食欲が増す傾向も。「減塩、減糖、減油」を基本として、まずは食事の量を減らさずに食事の内容を見てみましょう。

体重管理・栄養管理には、朝・昼・晩、自分が何を食べたのかを自分できちんと把握することが基本です。その日食べたもの、食べた時間を表に書き出しておくと、体重が増えたときに何が原因だったのか一目でわかります。体重は1週間に1回、朝の排尿後一定の時間に測るのがいいと思います。体重管理アプリを使ってもいいですね。栄養については、1週間単位で食材や量を振り返って、必要な栄養素が取れているか確認してみましょう。それでも、なかなか思うようにいかないときは妊婦健診時に医師や栄養士に相談してください。

まとめ

先進国の中で、日本は低出生体重児が増えているのが問題になっています。体型を保とうと、妊娠前からもともと痩せている人、妊娠中の体重増加不良がその原因に考えられています。低出生体重児は成人してからメタボリックシンドロームになりやすいので、お腹の赤ちゃんのために、妊娠中に必要なカロリーはしっかり摂って予防しましょう。

天神尚子

PROFILE

天神尚子このライターの記事一覧

産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

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