料理創作ユニットGomaの中村亮子さんのマタニティ日記。
おなかの中にいのちが宿った。
それは突然のことで、わかった瞬間のあのゾワゾワ感は今もまだ鮮明。でも思い起こせばはっきりと分かる前、なんとなくその人はやってくる、という感覚があったような気がする。だからすごくびっくりはしなかった。
子どもを授かりたい、という気持ちはもちろん昔からあったけれど、自分の年齢(先日40才になりました)のことや仕事のこと、いろんな事を考えるとそこまで前向きに進めていた訳ではなかった。
同年代なら分かるかもしれない、迷いの感覚。でも、来てくれた。ただそれだけで自分の人生をストンと受け入れることができた。すごく、自然に。あとは全身に広がる優しい感覚。「来てくれてありがとう」。
いわゆる高齢出産だから、まずは安定期に入るまでも油断大敵、入ってからも何が起こるかわからない!と身構えていたのだが、幸い初期のつわりもほぼなく、朝こそ少しだるい気分になることはあっても仕事時間になると身体も心もシャキッと通常モードに戻り、妊娠中の仕事はほぼ支障なくすることができた(本当にありがたかった……!)。
理由?わかりません。
新陳代謝がいいから?(とても汗かきなんです)
山登りするから?(アウトドア好きなんです)
よく食べるから?(仕事柄、ね)
友人たちには「さすがの体力!」と言われたけれど、どうしてかは特定できない。ただ、自分だけの力ではない気もするので、いつもおなかに向かって「元気でいさせてくれてありがとう」と感謝を伝えている。
そうしてあれよあれよという間に今臨月を迎え、あともう少しで待ち人に会える、という日々を過ごしています。
幸せなのは予定日の前に春が先にやってきたこと。ちょうどお世話になっている助産院さんまでの駅からの道のりが桜並木なので、美しい桜を眺めながら通い、待ち続けている。
助産院さんでは「1日3時間は歩いてください」と言われている。しかも「手ぶらで歩くこと」が必要条件。歩くのはお産に向けて身体をほぐすためらしいのだが、荷物を持っていると背中の筋肉に力が入り、意味がないらしい。
ある検診日の帰り道、並木道沿いの公園では近所の人が集まって花見が開かれていた。近くの飲食のお店がお花見用におにぎりや食べ物を店先で売っていたので、思わず買ってフラリと公園に入ってみる。
一人花見なんてしたことないなあなんて思いながらおにぎりをほおばった瞬間おなかの中からkickされた。
「ごめんごめん、二人花見だった!」と、すぐにおなかに向かってお詫びする。不思議なおしゃべりだ。でも特別幸せな時間。この感覚を忘れたくなくて、かじりかけのおにぎりの写真を撮っておいた。
うん、これで一生忘れないね。それにしても、いつ出てくるのかなぁ。
PROFILE
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食や子どもをテーマに料理、雑貨デザインなど幅広く活動している料理創作ユニットGomaを従姉妹のアラキミカと主宰(www.gommette.com)。媒体での作品発表他、ものづくりワークショップ開催なども行う。著書に、絵本へんてこパンやさんシリーズのレシピ本『12つきのおはなし&パンレシピ』(フレーベル館刊)、『かんたん☆かわいい♡だいすきクッキング』(あかね書房刊図書館シリーズ)、レシピ付き絵本『へんてこパンやさん』(フレーベル館刊)など子どもに向けてのものも多数。
instagram.com/ryocogoma
(制作 * エチカ)