クラフト作家・上原かなえさんの、子育ての楽しみ方。今回は子どもが大好きな動くおもちゃのお話です。
デンマークでペーパークラフトを学んだ私は、帰国後、2015年に娘エマを出産しました。動くおもちゃにこんなに反応するなんて!そう驚いたのは、生後3ヵ月程位経った頃。動くものに反応するのはまだ先かな?と妊娠中に作っておいたモビールは、産後しばらく大切にしまっていました。
私の予想をあっさりと裏切って、娘はモビールを目でじっと見つめると、それに向かって小さな手を伸ばしていました。娘はこんなふうに、これからいろんな世界に触れていくんだと私自身、心が動いた瞬間でした。
私が暮らしていた北欧の国デンマークには、別名「動く彫刻」とも呼ばれるモビールを、子どものいる家庭に限らず、季節やインテリアとあわせて素敵に飾る習慣があります。フレンステッド社の花輪がクルクルと回るモビールや、童話作家アンデルセンの切り紙をもとにしたモビールは、娘が生まれる以前から我が家でもインテリアのひとつになっていました。
「家に魔物が通ると、モビールがピタっと動きを止めて知らせてくれる」という古い言い伝えがあるくらい、モビールはデンマークの人々にとってお守りのような存在でもあるようです。
娘が動くものにどんどん反応するようになってからは、おむつを替えるソファーの上にそのモビールを吊るしました。やさしく話かけながら、ふーっと吹くとくるくると花々をたのしそうに目で追いかける娘。おむつ替えを嫌がることなく、あっと言う間に済ませることができるから不思議です。
もうひとつ、動くおもちゃの楽しさを実感したのはマリオネットの兵隊さん。ドイツでみたペーパークラフトの人形をヒントに、作ってみました。だれもが経験する夕方のぐずぐずタイムも、兵隊さんにダンスを踊ってもらうと、どんなに声をかけても直らなかったご機嫌がおさまり、そのおかしな動きに私までニヤリと笑ってしまいます。娘は1才半になり、今では自ら手を伸ばし引っぱることもできて、とっても嬉しそうです。
娘の喜ぶ姿がとてもいい想い出となり、最近では友人の赤ちゃんのお祝いにペーパーモビールを作って贈ることがあります。友人の雰囲気に合う色合いを思い浮かべたり、飾ってくれる場所を想像したり、楽しい手づくりの時間です。
みなさんも、ちいさな日常にひとつ動くおもちゃを取り入れて、その楽しさにどうぞ触れてみてください。
PROFILE
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クラフト作家。紙や布をはじめ、さまざまな素材に耳を傾けながら、暮らしを彩るデザインと手作りのアイデアを提案。北欧デンマークのスカルス手芸学校に留学経験を生かし、北欧に伝わるハンドクラフトの魅力を伝える活動も行なう。著書に『ハニカムペーパー・クラフト』『ごあいさつカードのてづくりレシピ』『北欧のかわいい切り紙』他。 http://salviakobo.tumblr.com
(制作 * エチカ)