先輩パパとママの毎日コラムvol.120

音楽にあふれた毎日を。〜子育て編〜

2018/1/5
音楽にあふれた毎日を。〜子育て編〜 音楽にあふれた毎日を。〜子育て編〜

音楽家として幅広く活躍する良原リエさんは1児のママ。音楽にあふれた赤ちゃんのいる暮らしをお届けします。

息子がまだお腹にいた頃、童謡の歌集を手に入れ、片っ端から歌っていました。歌に反応して動いてくれるのが嬉しかったからです。小さな頃に歌ったはずなのに、いつの間にかあやふやになっていた歌詞も、そのおかげで思い出すことができました。

ところで、生まれて間もない赤ちゃんは、意外と反応がないものなのですね。人間はおぎゃあと生まれた瞬間から、はっきりとした喜怒哀楽があると思い込んでいたので、最初は笑わないという事実に驚愕しました。

それでも反応してほしい、笑ってほしくて、早くから手遊びを始めました。昔ながらの歌に合わせて、手や足をリズムに合わせて動かします。しかしこれらはたいてい短く、あっという間に終わってしまうので、歌集で思い出した歌のあれこれで即興の手遊びをしていました。赤ちゃんと二人きりの1日は、結構長く感じてもいたので、自分にとっても気分転換になりました。

さてもう少し大きくなり、言葉が出始めてからは、歌がさらに楽しくなりました。息子が一緒に歌ってくれるようになったからです。耳で覚えて歌うので、歌詞が間違っているものですが、細かいことは指摘せず、とにかく楽しく歌うようにしています。

もっぱらお散歩中や、幼稚園の行き帰りの道など、手をつないで歩きながら歌っています。なんといっても開放感がありますし、いろんな景色をながめながら歌うのは、とても豊かだなと感じています。

春なら『チューリップ』『春が来た』『ちょうちょ』『ことりのうた』『ぶんぶんぶん』など。雨の季節なら『かたつむり』『かえるのうた』『あめふり』もいいですね。夏なら『たなばたさま』『しゃぼんだま』『うみ』『アイスクリームの歌』。秋なら『どんぐりころころ』『まっかな秋』『大きな栗の木の下で』『たきび』。冬なら『ゆき』『こぎつね』『ペチカ』に加えて、クリスマスの曲の『あわてんぼうのサンタクロース』『赤鼻のトナカイ』『ジングル・ベル』も楽しいです。

夜になったなら『つき』や『きらきら星』。動物の歌なら『森のくまさん』『おうま』『ぞうさん』『あいあい』『やぎさんゆうびん』『山の音楽家』。盛り上がる曲なら『せんろはつづくよどこまでも』『ピクニック』『手のひらを太陽に』『ドレミの歌』など、挙げればきりがありません。

足

ところで、歌についてお伝えしておきたいことがあります。ぜひお母さん、お父さんの歌で、歌を教えてほしいということです。私は音楽を仕事にしていますが、演奏が専門で歌は上手くありません。それでも息子にはたくさん歌うようにしています。

Webの動画共有サービスやCD、DVDなど、歌を楽しむ手段は他にもあります。けれどメディアを使わず、生歌を聞かせてあげてほしいのです。もし歌に自信がないとしてもです。子どもはお母さんやお父さんが歌ってくれたほうが思い出に残り、そしてしっかりと覚えることができるからです。

こんなことがありました。『ドレミの歌』の2番の歌詞が思い出せず、Webの動画共有サービスで聴いてみることにしました。その時の息子の反応が忘れられません。

映像に釘付けになってしまい、微動だにしなくなってしまったのです。普段、私が歌う時には目を合わせ、リズムをとったり、聴いたそばから歌を真似したりと、頭と体をフルに使って歌を覚えようとします。

しかし映像が流れてしまうと、それらの動きがぴたりと止まってしまうのです。忙しく動く映像を視線で追うことで精一杯で、目が動いてる以外、頭と体は反応していませんでした。何より、全く歌っていなかったのです。

これでは意味がないなと思いました。口伝えで歌を教えればすぐ覚えるのに、映像では相当数リピートしないと覚えることができませんでした。

それでも歌は苦手だからとか、間違った音程で覚えてしまうのでは?と思う方もいるかもしれません。けれど子どもにとって、お母さんやお父さんの歌こそ一番なのです。これは断言することができます。

私の母は、自他共に認める音痴でした。けれど私に歌を歌ってあげたいと、下手でごめんねと思いながら、歌の絵本を片手に一生懸命歌ったのだそうです。

私は母の歌を鮮明に覚えています。歌の時間がとても楽しかったからです。布団に二人で寝っ転がって絵本を開き、ひとつひとつ一緒に歌ったことを、昨日のことのように思い出します。特に母が裏声で歌う『月の砂漠』という曲が大好きでした。

3才になった頃、親戚の結婚式でマイクを奪い、私は一人で熱唱したそうです。その姿を見て、母の従兄弟が『歌が好きなんだねえ。でも誰が教えたの?(母が音痴なのは有名で、まさか母じゃないよね?の意味で)』と言われ、『私よ』と母が答えると皆が驚いたそうです。

お母さんやお父さんが音痴かどうかは関係ないのです。一緒に歌うのが楽しい。そんな時間を重ねることで、子どもは歌を音楽を好きになっていくのだと思います。楽しい気持ちは物事の上達へと導くからです。実際に、音痴な母の歌から音楽を好きになり、私は今、音楽の仕事に就いています。だから余計な心配をしないで、堂々と歌ってほしいのです。

母子共通の盛り上がる歌があれば、ぐずった時にも役に立ちます。息子の気持ちをさっと変えるために、私が急に歌を歌い出すことが、今もよくあります。歌い始めてしばらくすると、釣られて息子も歌い始め、元気に歩き出してくれます。

皆さんも歌の力を借りて、お子さんと楽しい時間をお過ごしくださいね。

海
良原リエ

PROFILE

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音楽家。アコーディオンやトイピアノ、トイ楽器を演奏する。映画やCMなどのレコーディング、他アーティストの音源やライブなど、様々なジャンルで演奏している。出産後は暮らしまわりが雑誌などで紹介されるようになり、料理、庭、子育てなどの文筆、スタイリングも手がける。アノニマスタジオwebにて『たのしい手づくり子そだて』を連載中。著書に『音楽家の台所』(コノハナブックス)など。今春公開の映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』の音楽を担当。toi toy toi のメンバーでもありシングル『Chant』が5月24日リリースに。

(制作 * エチカ)

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